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映画 『 殺人に関する短いフィルム 』

邦題: 『殺人に関する短いフィルム』
原題:Krótki film o zabijaniu、英題:A Short Film About Killing
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
音楽:ズビグニエフ・プレイスネル、撮影:スワヴォミール・イジャック
公開:1988年、上映時間:84分

十戒をモチーフとした、クシシュトフ・キェシロフスキのテレビシリーズ『デカローグ』第五話を長編映画として再構成。主題となった戒律は『汝、殺すなかれ』。ワルシャワを舞台にした犯罪映画で、個人の無分別で暴力的殺人と、国家による冷酷で計算された処刑を対比する。テーマは暴力そのもので、それ以外にはないと監督は語る。
(注:残酷描写があるのでご注意ください)

『殺人に関する短いフィルム』 Krótki film o zabijaniu

ネタバレありで詳しいストーリー紹介

ゴキブリの死体。水辺のネズミの死体に、タバコの空箱が流れてくる。公営団地の広場を走る子供達。手すりにぶら下がった猫の死体。

団地のガラス扉が軋んで開く。タクシー運転手ワルデマルが、バケツを両手に持って歩く。すぐ目の前に、雑巾が落ちてくる。

映画館の案内パネルを見るヤツェック。遠くで鐘がなる。

ワルデマルは落ちてきた雑巾をゴミ置き場へ持っていく。作業員は「その雑巾捨てるの? まだ使えるでしょ」「誰かが上から落とした」「当たった?」「いや。見たことない?」 猫が鳴く。「猫は大嫌いだ。人間同様、裏切るからな」とワルデマルは言う。

ヤツェックが、髪を整えている映画館の受付女性に「面白い映画?」と聞く。「恋愛ものだけど、上映は午後からよ。今は中で会議してるわ」と髪を触り続ける。「何してるの?」「白髪抜き」「この辺のタクシー乗場はどこだい?」「王宮広場ね」

ワルデマルはタクシー前にバケツを置き、フロントウィンドウに水をかける。内側に赤いサタンの面がぶら下がる。

ヤツェックは、少女の似顔絵描きをじっと見る。「1枚どう?」「いくら?」「二千ズウォチ」「時間かかるだろ」「偉そうだな。時間は関係ない。あんたが買うのは俺の才能。あんた才能は?」「ない」「靴は作れるか? 木を育てることは?」「木を? できるよ」「救われたな」と言われる。王宮広場はどこか聞くと、まっすぐ行った所だと言われる。

ピョートル・バリツキ(クシシュトフ・グロビシュ)
司法試験に合格したばかりの、正義感に燃える、
死刑廃止論を胸に抱く若手弁護士

ピョートルが面接に呼ばれる。「答え方は分かるのに悩みます。今まで二回出題された質問。入試の面接では簡単に答えましたが、ここで四年働くうち自信がなくなりました。そして今は妥当な質問。なぜ弁護士を目指すのか? 本音ですか建前ですか?」「本心を聞きたい」「最も短い答えは簡単。分かりません。魅力的職業だ。多くの事件を見ました。弁護士という職業は、社会的機能を果たす有益な仕事で、人々に必要な仕事です。最も魅力的な点は、他の職業に就いていたら会えないような人たちと会い、理解できること。それが動機です。でも年月が経つと、その答えも見出せなくなる。自分の行動の意味や考えさえ疑うようになってくる」

路地を歩くヤツェック。二人の男が一人の男を追いかけ、行き止まりで捕まえ、暴力を振るい、建物の影へ連れ込んで行く。彼は立ち止まり、しばらく見ていたが、無関心そうに歩き出す。

ワルデマル・リコフスキ(ヤン・テサシュ)
意地の悪い、自己中心的な中年タクシー運転手

タクシー横にいたトラックを誘導するワルデマル。トラックは少し前方で停まる。「奥さん荷物だよ」「ベアタ、早く下ろして」荷物を下ろす若い女性ベアタ。彼女のミニスカートと足をじっと見るワルデマル。タバコに火をつける。

タバコを吸いながら、人の並ぶタクシー乗場をじっと見るヤツェック。「どきな! 私の鳩が怯えるだろ。行っとくれ!」と鳩に餌をやる老婆に怒鳴られる。彼女の方へ歩き、急に走り出して鳩を全て追い払う。老婆が「ゴロツキ!」と怒る。

口笛を吹きながら、ワックスを塗り広げるワルデマル。カップルが声をかける。「空いてる?」「洗車中だ」「寒くても待つわ」と、風を避け、前方のショップの影に移動する。

高架の上から、下の道路のトラムや自動車を見下ろすヤツェック。腕の隙間から、反対方向のタクシー乗場を見る。手すりに置いてあった拳大の石を手に取り、下の走行中の車へ転がり落とす。ガラスが割れる音、ブレーキ音、クラクションが聞こえる。

「一般的な犯罪抑止策について、君の考えは?」と聞かれ、ピョートルは答える。「一般的にいえば、普通の人に、犯罪を思いとどまらせるだけの刑罰の重さです。詳しく?」「そうだね」「一般的に犯罪の予防策となるのは、受刑者を通じて行う、人々への感化。つまり恐怖を抑止力とする。刑法第50条にも明記されています」「皮肉な言い方は好まんよ。防止策は?」「厳罰を正当化するのは疑わしいもの。不当です」「君の見解を支えるような、裏付けとなる古典的理論を示せるかね?」「カインの昔から刑罰では人は変わらないし、犯罪を抑止する力とはなりません。著者の名を?」面接会場で笑いが起きる。「それは結構だよ」

タクシーの中を掃除するワルデマル。客を追って、タクシーの横へ走ってくるベアタ。「すいません。店長が計算を間違えてました」と客の女性に言う。ついでに靴を直すベアタに、ワルデマルが声を掛ける。「ドライブに行かないか?」だが、彼女は笑って黙ったまま立ち去る。ワルデマルは掃除用具を片付けエンジンをかけ走り出す。「待てよ!」と先ほどのカップルの男が走ってきて叫ぶが、ワルデマルのタクシーは走り出し、行ってしまう。

ワルデマルは、犬がいるのを見つけ、タクシーを停車し笑顔を向ける。「女房のだぞ。欲しいか?」とサンドウィッチを犬へ投げてやる。「もっと食え」

ヤツェックは写真館で足を止め、少女の写真をじっと見て店に入る。受付の女性が「何でしょう」と言う。彼は「これを」とカバンからロープや金属の棒を出す。「内装工事の人?」「違う。この写真を引き延ばせるかな」と少女の写真を手渡す。「折り目は残るけど」「構わない」「待ってて」「ねえ、写真を見れば、写ってる人の生死が分かるって本当?」「それは、くだらない迷信よ」

路肩へ大きく入って停車させるワルデマル。「元気かい?」とくじ売り場の男。「いつも通り」とワルデマル。「最後の番号は決めてくれ」「17」「それはもう選んでる」「じゃ16」「16? 近すぎるな」「なら15」「15か」「いつも綺麗に書き込むね」「俺の流儀だ」「近頃ついてるな。先月いくら儲かった?」「412ズウォチ」「去年の秋は1200か。先週は46。トントンだな」「そうだが、欲ってもんは切りがないからな」「ああ、そのとおりだ」

「ピョートル・バリツキ! 面接に合格したことを喜びを持って伝えよう。四年の修習生活を終え、今日から我々の同僚だ」と言われるピョートル。「おめでとう」「ありがとうございます」と握手する。「残るは宣誓式だけ」

公衆トイレ。ヤツェックが用を足していると、近くへ労務者風の男が来て、用を足す。ヤツェックが顔を向けると、男は笑顔を向ける。ヤツェックは離れる際、男を片手で突き飛ばし、微笑んで、トイレから出ていく。

ミニバイクで嬉しそうに走るピョートル。交差点で停まると、隣の車へ呼びかける。「受かった! 弁護士になった! 合格したんだ!」 横の車は呆れて走り去る。後ろからそれを見ていたワルデマルも首を振る。

トラム停留所から、タクシー乗場をじっと見るヤツェック。女性がタクシーへ乗り込む。ふと、見回りの警官が歩いてくるのが目に入る。

「ピョートル、ふざけないで」バイクで彼女の周りを回る。「ピョートル!」「いいだろ? 乗れよ」後ろへ横座りする彼女。

小型犬二匹を連れた男をじっと見ていたワルデマル。近くに来ると、激しくクラクションを鳴らす。驚いた犬の一匹が走って逃げ去る。「マッジオ!」それを見て笑うワルデマル。

ヤツェックはカフェへ入ろうとし「占いはいかが。安くしとくよ」と付きまとわれ「うるさい!」と怒鳴る。カフェでは、ピョートルと彼女もコーヒーを飲んでいた。「わたしは怖くない。占って欲しい? 当たるのよ」「占うなら、最高の言葉をくれよ」「運命線が長く、強そう。子供は二人」「それはいつかな?」

「注文は?」と聞かれヤツェックは「紅茶」と言う。「ありません」「何がある」「コーヒーとケーキ」「じゃあ両方。それ。違う、それじゃない、そっちだ」

ヤツェック・ワザル(ミロスラフ・バカ)
目的意識を失い、田舎から出てきて、ワルシャワの街をぶらつく孤独な青年

ヤツェックは窓際へ座る。シュークリームを食べ、警官を見る。警察のバンが来て、警官を乗せて行く。カバンからロープを出し、左手にゆっくり巻きつけていく。しかし、店の外の少女二人を目にし、巻くのを止め、ロープはカバンへしまう。スプーンでクリームをガラスへ飛ばし、少女たちの気を引く。少女たちと笑い合うが、すぐに少女たちは行ってしまう。

ピョートルと彼女。「人生には、なんでも可能だと感じられる時がある。高校卒業の時とか。二度と味わえない時。それが今」「大切な時を置き忘れてきた感じ? 取り戻すのはあなた次第よ。あなたは皆に愛される人。私も愛してる」

タクシー乗場に停車しているワルデマルだったが、向こうから泥酔者とそのツレが近づくと、車を走らせ、乗車拒否して行ってしまう。

ロープを左手に巻くヤツェック。洗い場にあった瓶の水の残りを飲み、ケーキのついたナイフを拭く。ナイフでロープを切ると残りのロープはカバンへ入れ、店を出る。コーヒーはほぼ飲んでいない。

タクシー乗場へ来るヤツェック。後から二人男が来て「失礼! モコトゥフですか?」「いや、ヴォラだ」「急用なんだ」と言われるが、無視してタクシーへ乗り込むヤツェック。「モコトゥフへ」。後ろの車がパッシングしている。運転手のワルデマルは「すぐ出すよ。せっかち野郎め」とタクシーは走り出す。

「どうしたの?」と聞く彼女に、ピョートルは「別に。そんなに順調に行くかなと思って …」と答える。

タクシーが停まる。前方にいる、道路計測の作業員と目が合うヤツェック。作業員は軽く首を振ったように見えた。

道路の計測をしている名前のない作業員(アルテュル・バルシス)
デカローグに毎回登場(七話と十話を除く)する、超自然的存在。
鍵となる瞬間、主人公を観察し、手出しせず、自由に行動させる。

「窓を閉めてくれる? 寒いよ」 少し窓を閉めるワルデマル。左手に巻いたロープをじっと見るヤツェック。ブレーキ音。横断歩道、子供の一団を引率する女性に、笑顔で通るようジェスチャーするワルデマル。また走り出すタクシー。「この先を左」「直進の方が早いよ」「曲がってくれ」「了解」 右手へもロープを巻き出すヤツェック。「そこで停めてくれ」「先へは入れない。行く気もないね」 急にロープでワルデマルの首を狙うヤツェック。

タクシーがゆっくり停まる。土手の上、自転車がゆっくり走り去る。苦しむワルデマルは手を伸ばし、クラクションを鳴らす。ヘッドレストにヒモをくくって、ドアから出るヤツェック。クラクションが鳴っている。カバンをルーフに置き、助手席に入り棒で、ワルデマルの手を殴り、クラクションを止めさせる。汽笛を鳴らした汽車が通り過ぎる。ヘッドレストを抜こうとするワルデマル。棒で殴るヤツェック。入れ歯が外れ落ちる。血まみれのワルデマルの顔を見て「ひでえ」と言い、車の後方から毛布を取ってきて、彼の顔に巻きつけ、助手席に移動させる。河辺の道。助手席のドアが開いたまま、しばらく車を走らせて停める。ワルデマルを引き摺り下ろし、そのまま引きずって土手を降り、河岸へ。まだ息のあるワルデマルは「カミサン … カネ … ワタシテ … タノム」 と言う。大きな石を持って来たヤツェック。振り上げるが「タノム」と聞き一瞬手を止める。が、やはり手を下ろす。何度も石で打ちつけるヤツェック。

タクシー表示のついたフレームを、思い切り河へとへ投げ込み、ダッシュボードから何かをポケットへ入れ、そこにあったサンドウィッチを食べる。サタンの面を揺らして、微笑むヤツェック。ラジオをつけると歌が流れる。「勇敢な金色のライオンのお話し 彼は日ごとに強くなる 大きなライオンはいつも彼に話す ライオンの心を持つんだぞと 僕も勇敢になりたい 僕が震えていたら抱きしめて」 ヤツェックは急にラジオを引き抜き、外へ投げ捨てる。

ヤツェックは走らせて来た車を停める。ベアタの部屋のドアを開ける。「もう店じまいか?」「ヤツェック! 入って」「寝るのかい? ベアタ」「軽く食事したらね。もう遅いわ」「出てこいよ。いい物を見せる」と外の車を見せる。「乗れよ。車が夢だったろ。どこでも行ける。山好きの女性がいると言ってたな」「ご主人がね」「亭主か。俺たちも行こう。座席を倒して、毛布で寝る。寒くないさ」「この車どうしたのよ?」

ヤツェックの裁判で国選弁護人を任されたのは、これが初めての大きな仕事となる新米弁護士ピョートル。「これにて閉廷」「これで終わりですか、先生?」とヤツェックが聞く。「そうだよ」と答えるピョートル。

妻に電話をかけるピョートル。「僕だ。負けた。完敗だ。少し歩くよ。いや。来なくていい。君はどう? 眠れた? 良かった。それじゃ後で」

階下のヤツェックへ呼びかけるピョートル。「ちょっと! ヤツェック」と手を振るが、すぐに移動用トラックへ刑務官と乗り込んでしまう。

「裁判長殿。無作法を承知で伺いました」「確かに。そうだ」「全て終わったので、お聞きしたい。もし弁護士が私でなく、ベテランで大物だったら、どうなったでしょう」「変わらんよ」「つまり言いたいのは、口頭弁論が … 」「いや、死刑に対する君の弁論は、最近耳にした中では、出色の出来栄えだった。誰がやっても、あの判決だ。法律家としても、人間としても、間違ってない。こんな形での出会いだが、君と知り合えて、嬉しいよ」「どうも」「もっと優秀な判事が裁くべきだったろう。全ては私の責任だと考えれば、気も楽になるだろ」「そんな、でも、彼が話していたあのカフェ。彼が手にロープを巻き付けていた場所。クラコフ郊外大通りにある、あのカフェに私もいた。1年前弁護士の試験に受かった日。何かできたはずだ」「繊細すぎると、この職には向かんかもしれんぞ」「でも今更」「今日の事で、君も少しは年をとったな。頑張りたまえ」

少しためらうが、被告の家族のいる、喫煙所に立ち寄る。無言で煙草を勧められ、受け取るピョートル。

刑務所。「所長がお会いします」と言われ、少し待つピョートル。奥で、工事作業員が、ハシゴを担ぎ、左の監房から右の監房へ横切る。

死刑執行室に来て、準備する執行官。別の執行官が来て挨拶する。カーテンが動かないと指示する執行官。「掃除しとけ」と機械的に言う。

準備完了だと検事の部屋へ報告に来る執行官。

刑務官がピョートルを先導する。途中、「先生」と、すれ違う検事と握手する。「これから彼に会います。話があるそうで」「お辛いですな」「全くです。検事さん。初めてで」「最後だと良いですな」と去りかけ振り返る。「こんな時になんですが、お目にかかるのも少ないので。ご子息がお生まれだとか」「ええ、先日です。どうも」と階下へと進む。ハシゴを担いだ作業員がピョートルを見ながら別の方向へ進むが、やがて立ち止まる。

10号監房を覗き、ドアを開ける刑務官。ピョートルが入っていき、二人は握手する。「母に会いました?」「ああ」「泣いてました?」「泣いていた。座ろうか」「できれば、もう一度、母に会ってもらえますか。この後」「分かった。もちろん会おう」「考えてたんです。裁判所で車に乗る前、先生がヤツェックと呼んでくれた」「そうだ。あれは … なぜ呼んだんだろう」「もうすぐ21です。でも先生に呼ばれて、涙が出そうになった」「法廷でも … 呼びかけたよ」「聞いてなかった。あの時までは … 裁判所でも、ここでも皆が敵意を持ってる」「君のした事に対してだ」「同じ事です」「お母さんに会って欲しいんだね」「そう。父の墓に埋めるよう言ってください。三人用。本当は、母のために空けておいた場所なんです。母が先に入るはずでしたが、僕に譲ってくれるよう伝えてください」

執行官はゆっくり煙草を吸う。「はい、分かりました、所長」と電話で指示される刑務官。「所長がまだですかと」とピョートルへ伝える。「まだだ … 続きを」「何の話でした?」「墓には三つ場所があると … 」「そう。三つ。父とマリシャが入ってて一つ空いている。五年前マリシャを埋めた。妹は五年前、トラクターにひかれました。うちの村で。6年になったばかりで、死んだ時は12歳、6年生。運転してた奴は僕の友達で、事故の前二人で飲んでました。ワインやウォッカ。それで彼が運転し妹をはねた。森のはずれで、近くに牧草地がありました。ここで … ずっと考えてました。妹が生きていたら、こうはならなかった。僕も村に残っていただろうと。僕の妹だった。男兄弟は四人ですが、妹はたった一人。僕を慕ってくれ …  僕も可愛がりました。歯車が狂ったんです。その後、僕は村を出て、町の工場で働くことになった。村にいたかった。そうすれば … 」「起こらなかったと言うんだね」「たぶん … 僕もここにはいなかったはずです」

刑務官が「所長と検事殿が、まだかとお尋ねです」「私からはやめないと伝えてくれ」「この接見をですか?」「そうだ」

「そこのお墓を買ったのは、妹が木が好きだったからです。妹は緑が大好きでした。森へ行く途中ひかれたんです」

検事の部屋。検事が椅子から立ち上がる。「判決文を」と検事。「そろってます」「行こうか」

10号監房へ検事らが来る。「囚人を出せ」と刑務官へ言う。「はい」と、他の刑務官を呼び、7〜8人が待機する。ドアを開ける。「検事殿の命令で終了です」 ピョートルは立ち上がる。ヤツェックは「私物の中に写真屋の預り証が入ってます。引き伸ばしを頼んだけど、取りに行けなかった。受け取って母に渡してください」「何の写真だね」「妹の聖体拝領の … 母から盗んで身につけてました。かなり傷んでます」「出るんだ」ヤツェックは「死にたくない」と言い、連れて行かれる。

外に出ると、「抑えるんだ!」大勢の刑務官達がヤツェックを取り押さえて、連れ去る。檻のドアが次々と開き、執行室へピョートルを引っ張って行く一団。

執行室では、死亡証明書にサインするドクター。一団が入ってくる。聖職者がヤツェックの額を触ると、ヤツェックは聖職者の手を取りキスする。検事が確認する。「姓名を」「ワザル・ヤツェック」「生年月日は?」「1967年3月17日」「両親の名前は?」「ヤンとウーツィヤ」「判決文。1987年4月27日ポーランド人民共和国はここに判決を言い渡す。1987年3月16日、ワルデマル・リコフスキへの強盗殺害容疑で、ヤツェック・ワザルを審理した結果、ワルシャワ地方裁判所は当該容疑で、被告を有罪と認め、刑法第148条第1項および44条第2項に基づき、被告人を死刑に処し、公民権を剥奪する旨、宣告した。最高裁は被告の上告を却下、国家評議会は恩赦の請願を却下した。よって刑を執行するものとする」

執行官がタバコをヤツェックに勧める。「タバコだ、吸うか?」「両切りのやつを」 別の執行官がタバコに火をつけヤツェックに咥えさせる。皆が見つめる中、震えながらタバコを吸うヤツェック。灰皿が持ってこられ、タバコを消すヤツェックだが、急に暴れ出す。

すぐに取り押さえられ、大人数の執行官に担がれる。「手を縛れ!」「執行」目隠しをされ、部屋の奥へ連れていかれ、首に縄をかけられるヤツェック。「押さえろ!」「巻き上げろ!」急いで紐を巻き上げる執行官。騒然とした雰囲気が「離れろ」の声でいったん静かになる。

「もっとだ、もっと巻け」 と静かに執行官が言う。「よし」次の瞬間床が開く。ヤツェックは空中にぶらさがり、少し痙攣し静かになる。ドクターが死亡確認する。下を向くピョートル。

林の方に浮かぶ光。車。開いたドアを掴み、ただ涙を流すピョートル。

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