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映画 『ふたりのベロニカ』 La Double Vie de Véronique 🌟 二重の命

邦題:『ふたりのベロニカ』
フランス語:La Double Vie de Véronique
ポーランド語: Podwójne życie Weroniki
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ
公開:1991年、上映時間:98分

フランス・ポーランド・ノルウェー合作映画。

ふたりのベロニカ  La Double Vie de Véronique

別々の国に生まれた「ふたりのベロニカ」の数奇な運命の物語。

ネタバレありのストーリー解説

1970年代後半、ポーランドとフランスでそれぞれ生まれ育った2人の少女。ふたりは顔も年齢も同じで、しかし互いの存在を知ることはなかった。

〈ポーランド〉

少女ヴェロニカと母親が夜空の星を見上げている。「ほら、あれがクリスマス・イヴの星よ。見える? 薄い雲のような物も見えるでしょ。でも雲じゃないの。数百万の星が集まってるのよ。分かる?」

〈フランス〉

別の少女ヴェロニクと母親が最初の若葉を見ている。「若葉よ。春になって、葉っぱが出てきたのよ。見て。葉脈やうぶ毛もよく見えるでしょ?」

〈ポーランド〉

ヴェロニカは音楽と歌を心から愛していた。合唱からソロ。美しい歌声のヴェロニカ。顔に雨がかかりだし、激しい雨になる。

彼と会うヴェロニカ。「歌ってきたかい?」「ええ」とキスする。「着替えないと」「来て」

ベッドで裸の2人。彼が彼女の左手の指の傷を触る。「恥ずかしい」「指にケガしたの?」「友達の父親が私の指をドアに挟んだの。ピアノ試験に合格した日よ。失神したわ」

水溜まりも気にせず走るヴェロニカ。

ベッドで起きる。音楽を聴きながら手を触る。絵を描いている父に呼びかける。「パパ、ラジオ?」「レコードだよ」「クラクフの叔母さんの家にお見舞いに行くって、私の恋人に伝えておいて」「ずっとか?」「ええ、私変なの。もう一人いるみたい」「誰が?」「私がもう一人いるの」「お前は一人だ」「どうかしら」父が心配して、顔を触りにくる。「私って誰なの?」「お前はお前だよ」

列車の窓に透明のスーパーボールをかざして見るヴェロニカ。風景が逆さに映り、中の星が回る。

カードで叔母と遊ぶヴェロニカ。「金髪の男の子?」「そう」「寝たの?」「そう、この間すごい夕立になったの。びしょ濡れのデートになって、そのまま寝ちゃった」来客のベルが鳴る。「お客さん?」「弁護士に来てもらったの。ウチの一族は突然ポックリと死ぬ事が多いから。あなたの母親もそうだった。遺言書作りよ」。叔母が玄関へ向かい、小人の男がドアの前を通る。「弁護士が来たから失礼」とドアを閉める叔母。

電話に口笛を吹くヴェロニカ。「ヴェロニカね。来てるの?クラクフに?」「1週間よ」「早く会いたいわ。2時に学校に来て」

学校。「とても厳しい先生なの」と、ピアノ担当の友人マルタが言う。先生がコーラスの指導をしている。「今の所をもう一度。最初から」コーラス。ヴェロニカも一緒に歌う。「今日はここまで」と先生。

「マルタもっと力強く弾いて」とマルタに言い、先生がヴェロニカの所へ来て「歌ってたわね。上手だわ。珍しい声ね。今度ゆっくり聴かせて」と言う。

デモ運動で人が集まる広場。歩くヴェロニカ。走ってきた男とぶつかり、持っていた楽譜が散乱し、拾う。走ってくる人。騒然としてくる広場。逃げるようにバスへ引き上げる観光客。ヴェロニカはバスの中に自分とそっくりな女性を見つける。彼女はバスに乗ってもカメラで周りを撮影し、ヴェロニカと一瞬目が合う。

歌の先生の前で歌うヴェロニカ。音楽院の指導者も聞いていて、先生に頷く。

夕暮れ時、歩いていて、道端で急に苦しくなるヴェロニカ。ベンチへ座ると胸を押さえ動けなくなる。中年男性が歩いて来て、そのコートを広げ性器を見せ、閉じて去っていく。ヴェロニカは少し落ち着き、唇へリップを塗る。

合唱団のソリストオーディションを受けるヴェロニカ。舞台の椅子に座る彼女に、音楽院の指導者が言う「君は今までに舞台で歌った経験が一度もない。ピアノ科だな。反対意見もあるが、見事に合格だ。おめでとう!」

叔母に報告するヴェロニカ。「合格よ。夢みたいで怖いくらい」

トラムの座席で、楽譜を見てヘッドホンで音楽を聴くヴェロニカ。追ってくるバイクの彼に気がつき、トラムを降りる。「ずっと追っていた」「電話をくれたのね。元気だって父から聞いたわ」「会いたかった。クリスマスプレゼントだ」「電話しなくてごめん」「いいんだ。僕はまだ愛してるよ」と去っていく。ヴェロニカは走って追いかけ、バイクに追いつく。「アンテク。私も一緒にのせて」

「きっと電話するわ」と彼と別れる。

下着姿のまま、窓辺から、外の老婆へ声をかける「私が持つわ!」。叔母が「なにか着たら」と言う。鏡の前で、下まつ毛の下を指輪で擦るヴェロニカ。

舞台で歌うヴェロニカ。

おお そこに佇む者たちよ
小さな舟に乗る者たちよ
私の歌が聴きたくて ついて来た者たちよ
お前たちは 私の舟をひたすら追う
歌いながら進む 私の舟の後を

決して沖に出てはならない
私を見失い 途方に暮れるだろう
私が乗り出す海は
誰も進んだ事のない 果てしない大海原
ミネルヴァが風を吹き込み
アポロンが私を導く
9人のミューズが大熊座を指し示す

突然倒れるヴェロニカ。
皆駆け寄るが、すでに彼女は亡くなっていた。

埋葬されるヴェロニカ。

〈フランス〉

フランス人女性ヴェロニクは、恋人と愛し合っている最中、突然深い悲しみに襲われる。「どうしたの?悲しいの?」「いいえ。なぜか急に涙がこみあげてきて」「誰かのため?」「分からない」「大丈夫?泊まろうか?」「いいの」と彼氏には帰ってもらう。

音楽の先生を訪ねるヴェロニク。「来る日を間違えたね。私が間違えたかな」「いいえ、来たのは … もう音楽はやめます」「理由は?」「分かりません。とにかく決めました」「才能が惜しい。契約だってある。訴えられても文句は言えんぞ」「分かってます」「ヴェロニク、また会えるんだろう?」首を振ってドアを閉めるヴェロニク。

ウィンドチャイムを手に持って登校するヴェロニク。講堂で何か準備している人形劇の男。「あの。わたしの教室よ」「使ってる」「失礼」

ヴェロニクの後ろから彼氏が追ってくる。「香りも顔も良いな。音も良い。よく眠れた?送ろうか?今日は早く帰れるし」「なぜ?」「人形劇があるんだよ」

講堂での人形劇。生徒と共にヴェロニクも観ている。赤いクリスマスボックスが開き、人形の少女が出てくる。人形遣いは男一人。少女はゆっくりバレエを踊り、やがて倒れ、死んでいく。別の女性が出て来て、シーツを被せる。舞台横の鏡に映る人形遣いの顔をじっと見るヴェロニク。シーツを被った少女がゆっくり起き上がり、シーツが落ちると復活し背中には大きな蝶の羽が広がる。鏡越しに人形遣いと目が合うヴェロニク。

音楽の授業。人形劇で流れたヴァン・デン・ブーデンマイヤー(架空の18世紀オランダの作曲家)の旋律を生徒たちに教えようとする。その曲は、ポーランドのヴェロニカが死んだ時に歌っていた曲でもあった。「私の大好きな曲。最近発見された2世紀前のオランダ人作曲家の作品なのよ」生徒が演奏する。ヴェロニクは窓から人形劇のトラックを見る。人形遣いの男がこちらを見ていた。

帰り道。並木道の木にもたれる。胸に痛みを覚えたヴェロニクは心臓病科を受診する。車を運転し帰るヴェロニク。信号で止まり、煙草に火を着けると、隣からクラクション。そちらを見ると、人形劇のトラックだった。無言で挨拶する二人。

夜、電話が鳴り、眠りから目覚めたヴェロニク。受話器を取る。「誰なの。返事して…切るわよ」「ノー」音楽が流れてくる。ヴァン・デン・ブーデンマイヤーの曲だった。ポーランドのヴェロニカが歌うイメージ。「黙ってるなら、そっちが先に切って。寝てたの」切れる電話。煙草に火を点けるヴェロニク。


ヴェロニクは、父の家へ行く。「金属穴開け機だ。1分間に2万7千回転」「パパ、恋をしたの。本当の恋よ」「相手は?」「さあ…知らない人」「どういう事だ?話してくれ」「もう少し待って。最近妙な経験をしたの。急に独りになった感じ。なぜか感じるの」「喪失感か?」「だと思う。パパはこんな経験ある?」「ママが死んで生活が一変した。それにお前も小さかったしな。手が離せなかった」「そうだったわね」

「裁判のために弁護士と相談したけど、状況は不利だわ」「断るわ。考えてみたけど無理よ」「そうね」「ごめんなさい」「いいのよ」聞いていたヴェロニクが「私が証言する」「あなたが法廷に出て、彼と13回寝たと証言してくれるのね」「まあね。でも、彼の事を何も知らないの。あなたのご主人について、もう少し知らないと…」

帰宅すると、届いた封筒に靴紐が入っていて、ゴミ箱へ捨てる。

ソファーで寝ていたヴェロニク。窓からの光で起きる。近所の建物から子供が鏡で光を送っていた。子供は窓へ引っ込んだが、まだ光を感じた。不思議な気配。捨てた靴紐を拾いに行き、洗って乾かす。病院でもらった心電図に紐を当ててみる。

友人の家。「楽にして」「長居できないの。昨日の人形劇だけど、やってた人の事覚えてる?」「人形師?気になるの?」「名前を覚えてる?」「トラックに書いてあったわ。頭文字はA。よく思い出せない」「劇は覚えてる?」「踊り子の話」「バレリーナ。足を折って踊れなくなって、蝶に変身するの」「待って、その話、知ってるような気がする。そう、ウチの娘ナタリーの絵本。待ってて」と、絵本を持ってくる。「やっぱりこの絵本だわ。アレキサンドレ・ファブリ。紐の話も出てくるわ。ごめんなさいね」「何が?」「裁判よ。彼と話したわ」

ヴェロニクは本屋へ行き、児童文学作家アレキサンドレ・ファブリの本を見て、何冊か購入し、読んでみる。小包が届く。「多分バージニア葉巻の空箱よ」と郵便屋に言う。その場で開けると中身はその通りだった。「直感?送り主の名が無い。パリからだ」「ありがとう」

階段に座る男。「ジャン・ピエールさん?」「なぜだ?本当に証言する気か?答えてくれ。なんとか言えよ。厄介なことになるぞ」「大丈夫?」「お手上げだ」「ごめんなさい」

父の家。風呂上がりの父がコロンの瓶を持つ。「この香り、前の方が良かったわ」「これは“晩秋”、前のは“初秋”。人気が出るかどうか分からんが。恋人は分かったのか?小包が来てるよ」届いたのはカセットテープだった。「夢を見たの。平凡な風景画があった。坂道のある村、両側に家、奥に教会。赤煉瓦の細い教会よ」

音楽の授業、演奏する生徒。窓の外、杖をつく老婆。

ヴェロニクはカセットテープをかけて聴く。紙を丸める音、足音、ドアの軋み、車の音、生活音、ヴァン・デン・ブーデンマイヤーの音楽、駅の音…アナウンス 「呼び出しです。エカール様。案内窓口までお越しください」、足音、「失礼します」「お知らせします。シェルブール発3316合列車が18番ホームに到着します」、そして最後に事故音、サイレンの音。「誰なの?」ヴェロニクは気配を感じるが、誰も居ない。カセットと虫眼鏡を持ち、考える。封筒の消印にはサン・ラザール駅とあった。

サン・ラザール駅付近で、構内放送の聞こえるカフェを探すヴェロニク。向かいに事故車両、赤壁のカフェに人形遣いの男を見つける。男は席を外していて、ヴェロニクはその席に着く。カセットテープで聞いたのと同じ「失礼します」の声の店員。席には封筒、カセットレコーダーなどが置いてあった。やがて、手洗いから男が帰ってくる。人形遣いのアレクサンドルだった。「何か飲む?」「コーヒーを」

「ストップ」とレコーダーを止めるアレクサンドル。窓の外の事故車両がクレーンで吊られていた。「ずっと待っていたの?」「48時間か、それ以上かな。良かった。来ないと思った」「いないと思ったわ」「いるさ。あと2〜3日は待つつもりだった。女性心理の可能性を確かめたかった」「女性心理のどんな可能性?」「ぼくは童話作家だ。今度は大人向けの本を書いてみたい。ある女性が見知らぬ男に呼び出され、女性心理がどう動くか。本当に来るかどうか知りたかった。もし来れば… 無口だね」「どうして私を選んだの?」「それは…分からない」怒ったヴェロニクは「ご馳走様」と店を飛び出す。街を急いで歩き、建物に逃げ込む。アレクサンドルが追って来ていた。

アレクサンドルは彼女を見失い、ガードレールに立って辺りを探している。それを見て、笑うヴェロニク。目の前にタクシーが止まり、降りた客と替わるように乗り込むヴェロニク。アレクサンドルがそれを見つけ、追う。

ホテルのフロント。「中庭側の部屋で。ねむりたいの」「287号室。起こしますか?」「いいえ」

エレベーターの前で、追って来たアレクサンドルと合う。「悪かった。謝るよ」「なぜ?」首を振るアレクサンドル。

ホテルの部屋。アレクサンドルはベッドに寝てしまっていた。

ヴェロニクもベッドへ横になり、下まつ毛の下を指輪で擦る。

アレクサンドルが起きて、ヴェロニクに近づくと彼女も目を覚ます。「寝込んでしまったわ」「愛してる」「私もよ」キスする二人。

「なにを知りたい?」「全てだ」とアレクサンドルは笑う。ヴェロニクはカバンを持って来て、ベッドの上に荷物を広げる。「これは何?」「リップよ」眼鏡、透明の星の入ったスーパーボール。「なぜ君を選んだか分かった。本とは関係ない」「知ってた。分かってたの。夜中の電話の時も。その前も」「知ってた?」「そう。私は霊感があるの。いつも別の場所にいるような気がしてた。感じるの。なんとなく先のことが分かるのよ」彼が写真を取り上げて聞く「こればどこの写真?」「チェコとハンガリーとポーランドの旅行。クラクフよ」「よく撮れてる。これは君だね」「違う」「君だよ」「服が違う」写真をくしゃっと丸めて突然泣き出す。アレクサンドルは慰めてキスをする。そのまま、愛を確かめ合う二人。

アレクサンドルの家。ヴェロニクが目覚めて起きる。作業部屋でアレクサンドルはヴェロニクにそっくりな新しい人形を作っていた。「コレが私?」「そうだよ」机の上に、もう一体同じ人形があった。「なぜ2体なの?」「酷使するからさ。壊れやすい」「ほら」と人形を動かして見せるアレクサンドル。片方は生きているように見え、片方は死んだように横たわる。

「書けた。1966年の11月23日は2人の記念日。その日の午前3時に、2人の女の子が別々の場所で生まれた。2人とも黒い髪と茶緑色の瞳。2歳になった時、1人がオーブンで火傷した。数日後、もう1人はオーブンに触りかけてやめた。なぜか霊感を感じて救われた。どう? 題名は … 2人の … 名前はどうする?」

父の家へ近づく車。車の窓から木に触れるヴェロニク。音楽が聞こえる。作業する父が気配を感じる。木を触り続けるヴェロニク。

ヴェロニカ(イレーヌ・ジャコブ):ポーランドに住む若きソプラノ歌手。澄んだ声と強い感受性を持ち、芸術への深い愛と情熱を抱えている。人生を直感で生きており、音楽を通じて世界と深く結びついている。一方、自分の中に言い表せない違和感や「もうひとりの自分がどこかにいる」という確信を抱いている。心臓に持病を抱え、合唱団の舞台上で突然命を落とす。

ヴェロニク(イレーヌ・ジャコブ):フランス・クレルモン=フェランに暮らす音楽教師。ヴェロニカと瓜二つの外見。より内省的で慎重な性格。人生において「何かを避けること」によって生き延びてきた女性。かつては歌手を目指していたが、説明できない恐れや感覚に突き動かされ、その道を断念している。

アレクサンドル・ファブリ(フィリップ・ヴォルテール):児童文学作家で、マリオネット作家・操り人形師でもある。繊細で知的な雰囲気を漂わせ、ヴェロニクの心を揺さぶる存在となる。最初、彼女にさまざまな「謎かけ」のようなアプローチをし、奇妙な距離感を保ちながら接近する。彼の人形劇は、まるでヴェロニカとヴェロニクの人生を象徴するかのような構成で、観客にもその寓意を暗示する。

ヴェロニクの父(クロード・ダネットン):母を亡くした後も彼女を支え続けてきた。彼とのやり取りから、ヴェロニクがいかに愛情に包まれて育ったかがわかる。

キャサリン(サンドリーヌ・デュマ):ヴェロニカの友人

『ふたりのベロニカ』は、ポーランドの巨匠クシシュトフ・キェシロフスキにとって、初めて国外制作の長編映画。撮影は主にポーランドのクラクフ、フランスのクレルモン=フェラン、そしてパリ。撮影監督を務めたのはスワヴォミール・イジャック。過去『デカローグ』などでも監督と組んでいた信頼の厚いスタッフ。

音楽は重要な存在で、ヴェロニカとヴェロニクの内面世界、さらに彼女たちを結びつける目に見えない糸として機能する。初期段階から、音楽を中心的モチーフとして構想し、そのため長年の協力者である作曲家ズビグニェフ・プレイスネルに楽曲制作を依頼した。作風は、シンプルな旋律に内的緊張感と哀感を織り交ぜ、映像に対し過度に感情を押しつけることなく余韻を残す響きが特徴。クラシック音楽と現代音楽の境界を意図的に曖昧にしながら、時に宗教音楽的な荘厳さを持ちつつ、夢のような浮遊感を漂わせる音世界を創出した。本作の楽曲の多くは、「ヴァン・デン・ブーデンマイヤー」という架空のオランダ人作曲家の作品という設定。これはプレイスネルとキェシロフスキが創り出した架空の人物で、『愛に関する短いフィルム』でもこの設定が使用された。ヴァン・デン・ブーデンマイヤーの存在は、実在と虚構、記憶と幻想の交差という本作の主題にも深く関わっている。

劇中の「離婚裁判の話」や「タバコの木箱の話」など、中途半端な形で終わっているエピソードがいくつか見受けられる。もともと異なる編集の複数のディレクターズカットを用意し、すべてを見れば、つながるという、監督の特殊な構想が原因だという。本来、ヴェロニカとヴェロニクの繋がりは、もっと鮮明に描かれていたという可能性もある。けれど、監督も亡くなり、我々は残された映像で味わうしかない。まぁそのおかげで、より詩的な映像となったと、見ることもできる。豊かな想像力を誘う、瑞々しい映画だと、今は満足しよう。

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