映画 『 愛に関する短いフィルム 』

邦題: 『愛に関する短いフィルム』
原題:Krótki film o miłości、英題:A Short Film About Love
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピエシェヴィチ
音楽:ズビグニェフ・プレイスネル、撮影:ヴィトルド・アダメク
公開:1988年、上映時間:87分
十戒をモチーフとした、クシシュトフ・キェシロフスキ監督のテレビシリーズ『デカローグ』第六話を長編映画として再構成。主題となった戒律は『姦淫してはならない』。ワルシャワの公営団地を舞台に、隣の建物に住む年上の女性に深く恋する若い郵便局員を描くラブロマンス。「真のテーマは孤独。二人の想いが成就するしないは大した問題ではない。重要なのは二人の成長だ」と監督は語る。

孤児院で育ったトメクは友達が少なく、郵便局員として働いている
ネタバレありの詳しいストーリー紹介
トメクが寝ている。左手には包帯。左手へ手を伸ばそうとする手を、別の手が制止する。
マグダはトランプ占いをし、筆を持って、何か考えている様子。
夜。広く暗い室内。ガラスが割れる音、粉々の破片が落ちる。飛び降りるトメク。ドアから別の部屋、廊下を歩き、倉庫らしき場所に来る。懐中電灯で調べる。三脚、パソコン、ビデオデッキ。彼は棚から望遠鏡を手に取る。
望遠鏡のダイヤル調節するトメク。双眼鏡を固定台座から外す。

郵便局窓口で働くトメク。マグダが入ってくると彼女をじっと見る。「年金手帳番号は?」と老婆に聞く「耳が遠くて」「年金手帳番号は?」と大きな声で言う。自分の番になり「為替よ」と言うマグダ。窓口で処理するトメクは「ありません」と言う。「通知が来てた」「ありません。ご自分で確認ください」「遅れてるのかしら」トメクは頷き「また通知します」と言う。「待って。通知書です」と通知書を彼女に渡す。「バカにしてるわ!」と怒って去るマグダ。彼女をじっと見るトメク。
「私は行く。あなたは行く。彼は行く」語学勉強するトメクに代母が呼びかける「美人コンテストよ。一緒に見ない?」トメクはテレビを見に行く。8時40分前の時計を見るトメク。「目の保養だね」と言う。部屋の時計が鳴り、彼は止めに戻離、望遠鏡を覗き込む。向かいの部屋のマグダが帰宅する。彼女はヒールと郵便物をテーブルへ置き、ベッドルームの壁の作品を見る。リビングへ行きコートを掛け、再びベッドルームへ来て、服を脱ぐ。彼女の様子をじっと見るトメク。
トメクは部屋から出て、バスルームでマグカップへ水を入れる。代母は心配そうに彼を見るが、やがてまたテレビを観る。
トメクはマグカップに電熱棒を入れて湯を沸かし、インスタントコーヒーを作る。パンにクリームを塗るとそれを持ち、また望遠鏡を覗く。

マグダは冷蔵庫から牛乳瓶をとり出し、テーブルへ置く。パンの上で、振子のダウジングをし、それをかじり、ボトルの牛乳を一口飲む。壁にかけた作品に手を入れる。彼女と同じタイミングでトメクはパンをかじ離、電話をかける。呼び出し音。彼女が電話を取る。「ハロー」 声を聞くトメク。「悪ふざけはいい加減にして。息遣いが聞こえる」と切れる音。トメクは再びダイヤルする。呼び出し音。マグダが電話を取る。「悪かった」と言って切れる。ドアチャイム。あわててベッドを整え、玄関へ行く。スーツの男を迎え、抱き合い身体を触り出す。トメクは見るのをやめる。
スーパー。マグダを偶然見かけるトメク。彼女はレジの女性に「牛乳の配達は? 一日おきにしか届かないけど」と言っている。「取りに来てください」「暇がないの」「店も配達人不足なので」

「あなたによろしくって。COUOと書いてる。何かしら」「暗号さ」「息子は異国の地。一緒に行けず残念ね」「行きたかったよ」 トメクの頭を撫でキスする代母。「マーチンからのキスよ」 代母の手にキスするトメク。「戻っても仲良くしてあげて。あなたも悔いのない人生を送って。マーチンは放浪タイプ。戻ってもまた旅立つ。あなたはずっといてくれるわね?」
夜。マグダの部屋を望遠鏡で覗く。彼女は絵のファイルを男と見る。作品前で髪を触られ、男とキスし、腰へ手を回す。目を離し、電話するトメク。「ガス漏れ110番です」「ガスが漏れてる。レンジから。ピラトー通り4番地376号室」タバコに火をつけるトメク。
マグカップに水を入れるトメク。代母が来る「マーチンがアラブの娘に出会ったそうよ」「トメク、恋人はいるの?」「いえ」「老人のタワ言だと思って聞いて。女の子は、気ままに遊んでいるように見えるけど、本当は優しい男が好きなの。もし好きな娘がいたら、遠慮なく連れてらっしゃい。」「恋人はいませんよ」

青い点滅灯をつけた車が来て、男二人がマグダの部屋へ向かう。床に寝ていた二人だったが、仕方なく応対する。レンジを調べるガス会社の男達。異常なく帰っていくが、二人はやる気をなくしたようだ。それを見て笑うトメク。だが、彼は急に壁を叩いた。
トメクは、スーパーの女性に「近所の者です。牛乳配達の人手が足りないと聞いた」と言う。「配達したいの? 年齢は?」「19。郵便局員で、家は近いです」「朝五時起きのキツい仕事よ」「早起きなんです」
朝、目覚ましで起きるトメク。リアカーに牛乳を積んで、階段を降りる。
マグダの部屋の前。空の瓶を隠し、新しい牛乳瓶を持ち、ドアチャイムを押す。「牛乳屋です。空瓶が無いので… 」「待って」と言い、空瓶を持って来て、ドア横に置くとドアを閉め、鍵をするマグダ。
夜。急ブレーキの音。トメクは目覚め、窓の外を見る。白い車からマグダが降りる。男に怒っている。「クソ女」と男の声。ボンネットを叩き、マグダは車から去り、走って帰る。車は帰っていく。
トメクは望遠鏡を覗く。マグダは牛乳をテーブルへ置くが、倒して牛乳がこぼれる。こぼれた牛乳をマグダは指で撫でる。頭を抱え肩を震わせて泣くマグダ。泣き続ける彼女をじっと見続けるトメク。代母が別室から「トメク」と呼びかける。「トメク起きてたの? 座って」 トメクは代母のベッドへ座る。「悩み事?」 彼は首を振る。「なぜ人は泣くのかな」「分からない? 泣いたことはないの?」「昔一度泣いたよ」「施設に入った時ね。人間は様々な理由で泣く。誰かが死んだり、寂しくなった時。何かに耐えきれなくなった時」「何に?」「人生よ。苦悩ばかりね」「救う方法はあるのかな」「昔マーチンが歯痛になったわ。あの子ったら、熱いアイロンを肩に当てたの。歯痛を忘れるために」

トメクは、赤い布の上で、ハサミを指の間に動かす動作。早く動かし、目を閉じる。手を止めると、指から血が流れ、指を舐める。

朝。リアカーに積んだ大量の牛乳。団地の入口で、「おはよう」と、サイクリング自転車を押す男とすれ違うトメク。中へ入ると376のポストに紙を入れる。
郵便局の窓口。マグダがトメクに言う。「前の人ね」「ええ」「新しい通知よ」「ありません」「これで二回目」「そう言われても」「最悪ね。話の分かる人を呼んで」「誰を?」「担当責任者よ」

女性の上司が来る。「為替の通知が二度も来ました。でも来てみると為替が見当たらない」「為替を見せて。送り主は?」「知りませんよ。2万4千」「じゃなぜ取りに?」「二回も通知が来たからよ」「為替はありません」「バカな」「ワセックさん!これを見て。あなたの配達区よ」「心当たりはない。配達しとらん」「届いたんです」「郵便配達人が届けてないと言ってるわ」「郵便受けに入ってたし、消印もついてる」「文句があるなら、郵便局じゃなく警察へ行って」「そうするわよ。返して」「返すもんですか。偽造通知だわ」とその場で破り捨てる上司。帰っていくマグダ。「騙されないわよ!」と女性上司。振り返り、一度にらみつけて出ていくマグダ。

マグダの後を走って追いかけるトメク。「何の用?」「初めから、為替はなかったんです」「でも通知が」「僕が送った」「なぜ? どういうこと?」「会いたくて」「ふざけないで」と行ってしまうマグダ。「昨日君は泣いてた!」と呼びかけるトメク。戻ってくるマグダ。「なぜ知ってる?」「覗き見したんだ」「本当に?」「窓から見てた」「消えて。消えてよ!」と、トメクを突き飛ばすマグダ。トメクは力なくトボトボと帰っていく。
夜。8時40分のベル。マグダの部屋の灯りがつく。トメクが望遠鏡を見る。マグダは窓からこちらを見る。ベッドを向こうへ押しやり、こちらに向かって電話の受話器をあげるジャスチャー。
トメクは電話のダイヤルを回す。「ハロー」「見てる?」「ああ」「ベッドをよく見えるように動かしたわ」「見える」「ゆっくり見物して」と電話を切る。向こうの部屋へ行き男を連れてくる。ベッド前でキスして、男の服をぬがし、ベッドへ倒れ込む。男が灯りを消すが、すぐ彼女は灯りをつける。マグダは窓の方を指差す。男はベッドから急に離れ、服を持って、隣の部屋へ行く。マグダは笑って、残りの服を隣の部屋へ投げる。
やがて、男が外へ出て、こちらへ近づいてくる。「おい! 変態野郎。出てこい。顔を見せろ。どうした。腰抜け!」 代母も起きてくる。
トメクは表へ出ていく。「お前か? 構えろよ」トメクは腕を上げるが、男に一発で殴り倒される。「二度とやるな。スケベなガキめ!」

唇を切り、右目にアザができたトメクはベッドに横たわり、横に代母が座る「眠れる?」 頷くトメク。
目にアザを作り、マグダの部屋に牛乳を届けるトメク。急にドアが開き、トメクは後ろに倒れる。「やっぱりあなたね。今一人よ。入る?」 首を振るトメク。喧嘩が下手ね」 トメクは廊下の奥に行く。赤ブロックに囲まれた窓。

追いかけるマグダ。「なぜ? なぜ私をつけ回すの?」「愛してるから。本気だ」「 何が望み?」「わからない」「キス?」「違う」「私と寝たいの?」「いや」「じゃ私と湖やブタペストに旅行したい?」「いや」「何が欲しいの?」「何も」「何も?」「そう」とトメクは走って、上の方へ階段を上がって行く。


屋上。薄い氷を頭へ当てるトメク。氷を口にして、少しかじる。
マグダのドアをノックするトメク。「今度、アイスクリームを食べに行きませんか?」と言う。

嬉しそうに、走ってリアカーを引き回すトメク。大きなカーキ色のスーツケースと白い大きな買い物袋を持つ白いコートの名前のない男(アルテュル・バルシス/超自然的存在。鍵となる瞬間主人公を観察し、手出しせず、自由に行動させる)とすれ違う。「ごめんよ」とトメクに言われ、男は少し笑う。
カフェ。「どれくらい監視してたの?」と聞くマグダ。「一年」「あれは久しぶりに聞く言葉だった。あの今朝の言葉」「愛してます」「愛なんかない」「ある」とトメクが言う。首を振るマグダは「幻想よ。愛はさておき、郵便局の仕事の他に何をしてるの?」と聞く。「語学勉強」「何語?」「ブルガリア語」「ブルガリア語? 何のため?」「施設にブルガリア人が二人いたから。あと英仏伊語も話せる。ポルトガル語も勉強中」「ユニークね」「記憶力がいいんだ。何でも憶えてるよ」「生まれた時のことは?」「何となく」「両親のことは?」「憶えてない」「去年の秋、私が付き合ってた男は憶えてる? スリムな男よ」「憶えてる。よくパンと牛乳を持って来た」「姿を消して二度と戻らなかった」「僕は好きだった」「私も好きだった。でもオーストリアに行って、その後オーストラリアへ行った」「オーストラリアか」トメクはジャケットからいくつか封筒を出す。「あなたに届いた手紙を盗んだ。郵便局で抜き取った」マグダが手紙を見る。「まるでスパイね。下心で牛乳を運び、ガス屋を呼び、大事な手紙まで盗む! もう、どうでもいいけど」
「友人はいるの?」「一人いるけど、今は国連軍でシリア駐屯。僕は、彼の母親の家に住んでる」「私の真向かいのね」「友人も覗いてた」「それであなたも?」「彼は発つ前、望遠鏡で窓を見ろよと言った」「他に何と?」「COUO」「何の意味?」「キュート、男好きの、熟れた、オシリ」「当たりね」
「手をだして」とトメクの手のひらで振り子のダウジングをするマグダ。「撫でて」とトメクの右手を両手で包み、彼の左手を上に置かせる。トメクは少し震える左手を上に重ねる。彼女は「見て」と、店の奥のカップルを示す。手を撫でながら会話するカップル。「ああやって恋をささやくのよ」

外を歩く二人。「私たちのバス。もし間に合ったら部屋に招待するわ。乗り遅れたらナシ。走るのよ!」バスへ走る二人。バスは走り出すが、二人が近づくと止まる。
マグダの部屋。椅子へ上着を掛けるトメク。スノーボールを手に取る。シャワーから出てくるマグダ。「思い出を紡ぐ水晶球」と言う トメクの前で、頭を振る。「私の癖」「どうかな」「そう? いつも見てるでしょ。これは?」「土産にもらって、大事にしてた。プレゼントするよ」「私は悪い女。もらう資格はないわ。どんな女か知ってるでしょ」「構わない。愛してるんだ」
向かいから、ずっとマグダの部屋を望遠鏡で見ている代母。

「他に何を見たの? 男が来た時、私がどうしたか言ってみて」「あなたは男と寝た。いつも望遠鏡で見てた」「あれは愛じゃない。私がどうしたか言って」「服を脱ぎ、男の着てる服をはぎ取り、ベッドや床の上に横たわる」「他には?」「キッチンでも。目を閉じ、男の頭を両手で引き寄せる」「どうやるの? やって見せて」ソファーに座り、頭を抱えるよう手を上げるトメク。彼に近づくマグダ。
それを望遠鏡で覗く代母。

「セックスの体験は?」首を振るトメク。「私のもだえる姿を見て、自分でやるの?」「前はそうだったけど、今はやってない」マグダはトメクの顔を撫で「覗きは罪よ」と言う。「分かってる」マグダはトメクの髪を撫でる。「でも、あなたに夢中なんだ」「ブラウスの下は裸よ。女が男の体を欲しくなると濡れてくる。私、いま濡れてるわ。綺麗な手」トメクの手を両手で包む。「怖がらないで」と自分の太ももから下腹部を触らせる。トメクは「ハァ」と呻き声を出し下を向く。「イッたの? これが世間で言う愛の正体よ。浴室で汗を拭いてきたらどう?」と言われ、突然彼女を突き飛ばし、そのまま走って出て行ってしまう。マグダは立ち上がり、窓の外を見る。
外を歩いて行くトメク。スーツケースと買物カバンを持った白コートの男とすれ違う。お互いを見る二人。トメクは自分の部屋へ戻って行く。マグダは棚から黒い箱を下ろし、中から双眼鏡を取り出し、トメクの部屋を見る。部屋の灯りが消える。電話の受話器を上げるジェスチャーを繰り返すが、反応はなかった。
トメクはバスルームでタライに水を入れ、T字カミソリの刃を取り出す。
マグダは大きな紙に「悪かったわ」とメッセージを書き、窓に紙を当て、外を見る。
トメクは水を張ったタライへ両手を入れている。血が広がって、ゆっくり頭を横にし、洗面台へ顔を置き、目を閉じる。やがて、頭が下へ落ちる。
マグダは双眼鏡を置き、トメクのコートのポケットから伝票2枚を手に取る。ドアチャイムが鳴り、玄関の方へ行き外を覗く。いつもの相手の男が見え「帰って」と言う。窓から向かいを見る。代母が救急車を送り出し、帰っていくところだ。マグダはコートを着て外へ出る。トメクの部屋を訪ねる。
部屋の位置を確かめドアチャイムを押す。「すみません。お休みでしたか?」「いえ」「こちらは彼の…」「そうよ」「上着を忘れて」「お入りください」トメクの部屋へ通し「上着はそこへ置いて」と言う代母。「彼は?」「病院よ」「なぜ」「大丈夫。数日で退院して戻るそうよ」「お見舞いに行かせてください。さっきまでウチにいたんです」「知ってるわ」「もしかして私のせいで傷つけたのかも…」「病院へは行かないで。いずれ戻って来ます」「何があったんです」「笑うでしょうね。恋の病よ。その望遠鏡。彼は目覚まし時計を8時40分にセットしてた。帰宅時間かしら?」「私の戻る時間だわ」「彼も女運がない」「そうね」「私は年老いてる。独りぼっちになるのが怖いのよ」「失礼します。こちらに電話してもいいかしら?」「電話はないわ」とドアを閉める。マグダはノックする。「すみません。彼の名前は?」「トメク」とまたドアを閉める。「トメク …」
寝ていたマグダが起きる。テーブルにはトランプ占いの後。朝だった。代母が牛乳配達のリアカーを引いている。

郵便局のトメクの窓口を見に来るマグダ。「窓口休止中」と表示されている。「解約できない」「解約請求が必要よ」とあの女上司がこちらを見て、マグダは引き返す。
自分の郵便受けの近くで待つマグダ。郵便配達の男に聞く「私には?」「部屋は?」「376」「一通もない」「郵便局の若い男性職員はどうしたのですか?」「恋に苦しんで手首を切ったのさ」「彼の名前は?」「知らない。郵便局の責任者に聞いてくれ」 ドアの前に行き、しゃがみ込むマグダ。
夜。電話の呼び出し音。マグダが起きる。「ハロー。トメク? 何とか言って」 トメクの部屋を見るが、灯りはついてない。「捜したのよ。病院をいくつも回った。どうしても伝えたくて。あなたは正しい。聞いてる? あなたの言う通りよ。どうすれば分かってくれるの? 教えて」と電話を切る。電話が鳴る。「ハロー」「マグダ?」「そう」「ウォイテクだ」「今電話した?」「かけたが不通だった」「会話は?」「聞こえなかった。これから…」電話を切るマグダ。ベッドで塞ぎ込む。
激しい雨の中、タクシーから降りる二人。
朝、トメクの代母が牛乳を配達に来た。マグダはドアを開けて彼女に聞く。「彼は戻った?」「まだよ」
それから、昼や夜、幾度も双眼鏡でトメクの部屋を見るマグダ。
ある夜、部屋の灯りに二人のシルエットを見て、喜ぶマグダ。

トメクの部屋を訪ねるマグダ。「いますか?」「いますよ」と中へ通される。ベッドで眠るトメク。近づこうとするが、代母が前に立つ。「どうか… 二人きりに」 包帯を巻いた手に触れようとするが、代母がその手を制止する。マグダは望遠鏡を覗いてみる。

牛乳をこぼして泣いた、あの夜を回想するマグダ。彼はここからどういう思いで見ていたのか。泣いているマグダの肩に、手を置くトメクの手を想像して、彼女は目を閉じるのだった。
終

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