私たちには耳が二つ、口が一つある。それは話す量の二倍聞くためである。
こんばんは。
やぁ。今日もありがとう。
夜の帳が下りて、街の明かりがひとつ、またひとつと優しくまばたきを始める。一日の終わりに、ようやく自分だけの時間が戻ってきた。ベッドサイドのランプを少しだけ暗くして、今日という重たい荷物をそっと床に下ろす。そんな静かな夜だね。
古代の哲学者エピクテトスは、「私たちには耳が二つ、口が一つある。それは話す量の二倍聞くためである」と語った。
誰かが話している間、湯気の立つマグカップを両手で包みながら、ただ相手の言葉を受け止めていた時間。あのとき、自分のなかに不思議と穏やかな静けさが広がっていたことを思い出す。うまく話せたかどうかより、誰かの声にそっと耳を傾けていた記憶のほうが、なぜか温かく胸に残っているものだ。
夜風がカーテンをかすかに揺らす。心の中のあれこれも、それにつられるようにほどけていく。夜風にほどかれていくのを眺めているだけで、十分な夜もある。うまく話せなかったことも、少し急ぎすぎた時間も、すべて夜の闇がそっと包み込んでくれるから。
あたたかな布団に身を沈めるころには、肩の力も少しだけほどけているのかもしれない。
遠くで響く夜の音を聞きながら、心も体も、深く眠りへと落ちていく。
静けさの中で、あなたの耳は今夜、どんな自分の声や、やさしい音を聴いているだろう。
おやすみなさい。
今日を少し良くする知恵を、また一つ。
