なぜ今、「かえし」なのか— 木桶醤油の若き蔵元たちと商品化した理由


大阪・阪神百貨店で開催される
「木桶による発酵文化サミット」。
今年、私は、
3人の若き木桶醤油蔵の後継者たちと共に、
3種類の“かえし”を紹介します。
・岐阜県 山川醸造(たまり醤油)かなこさん
・島根県 森田醤油店(濃口醤油)浩平さん
・愛知県 日東醸造(しろたまり)泰輔さん
かえしのワークショップでは、
私は“かえし”の作り方を伝え、
彼らは、
それぞれの醤油の個性を活かした一品料理を紹介してくれます。
そして今回、
実際に「かえし」の食べ比べも行います。

実は私は、
ずっと前から
「かえしを商品化したい」
と思っていました。
最初、
付き合いの長い木桶醤油屋さんにお願いしたのですが、
返ってきたのは、
少し冷たい反応でした。
「めんつゆやポン酢なら分かるけど……」
「かえしはねぇ……」
つまり、
“商品として成立するもの”
と思われていなかったのです。
でも私は、
ずっと思っていました。
かえしは、
江戸時代から続く、
日本の万能調味料。
そして、
日本初の“時短調味料”
なのではないか、と。
和食は、
面倒な料理ではなかった。
忙しい江戸の町の中で、
効率よく、
おいしく料理をするために生まれた知恵。
それが、
「かえし」だったのだと思うのです。
一昨年、
小豆島で行われた木桶サミットで、
私は会場で“かえし”を紹介しました。
すると、
驚いたことに、
「えっ?醤油屋さんなのに、かえし知らないの?」
そんな場面が、実際にあったのです。
もちろん、
プロの料理人たちは、
かえしの便利さを知っています。
でも、醤油を作る側では、
意外なほど、
その存在が忘れられていた。
さらに、
あまりに作り方が簡単すぎて、
逆に関心を持たれなかった。
「かえしなんて、いらんやろ?」
そんな空気もありました。
でも私は、むしろそこに、
大きな可能性を感じました。
料理をする人が減っている今だからこそ、
“簡単においしく作れる”
ということは、
とても大切なことではないか、と。

そんな中、
最初に関心を持ってくれたのが、
奥出雲の森田醤油店でした。
木桶で素晴らしい醤油を作る、
若き後継者、
森田浩平さん親子です。
実際にかえしを使い、
その便利さを体感してくれた。
そして、
商品化が実現しました。
それから私は、教室で、細々と、
でも確実に、
3年間「かえし」を売ってきました。
派手ではありません。
でも、
料理をする人たちが、
「あ、これ便利」
「和食がラクになる」
そう感じながら、
少しずつ広がっていったのです。

そして今回、
職人醤油の万太郎さんのおかげで、
阪神百貨店で、
3種類の“かえし”が、
再デビューできることになりました。
濃口。
たまり。
しろたまり。
同じ“かえし”でも、
醤油が違うと、
味も、
香りも、
料理の使い方も、
まったく変わる。
それを、
実際に食べながら、
体験していただきます。

私は今、
強く思っています。
どれだけ良い木桶醤油があっても、
料理をする人がいなければ、
文化は残らない。

だから私は、
「料理をする人を増やしたい」
と思っています。
かえしは、
その入口になるかもしれません。
江戸の知恵は、
古いものではなく、
むしろ、
忙しい現代にこそ必要なのかもしれない。
私は今、
そう感じています。

そして今回、
ワークショップ参加者へのお土産として、
“持ち運び用マイ醤油”の提案もしています。
めっちゃ可愛い、
醤油ストラップ。
アメリカで流行している
「ミニミニ調味料ストラップ」の、
木桶醤油版です。
外食でも、
お弁当でも、
旅先でも。
お気に入りの醤油を、
持ち歩く文化。
そんな小さな遊び心からも、
木桶醤油を、
もっと日常へ戻していけたらと思っています。

阪神百貨店での
「木桶による発酵文化サミット」はこちら。

執筆 タカコナカムラ

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