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『四畳半タイムマシンブルース』は、SF好きもSF食わず嫌いも爆笑の1冊

「そもそもタイムマシンってどういうことなのよ」
相島氏が言った。「どうしてそんなものがここにあるの?」
「俺たちが知るわけないでしょう」と私は言った。
「知るわけない? 知るわけないだって?」と相島氏は頓狂な声を上げた。
それなのに君たちは平気で乗り回しているのか?

『四畳半タイムマシンブルース』より


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▼SF作品は、意外と身近にあふれている

冒頭で紹介したのは、森見登美彦著『四畳半タイムマシンブルース』である。小汚い学生アパートに突然現れたタイムマシンを、ふてぶてしい大学生らが取り合いへし合いしている狂乱のひとコマだ。

SFがあまり好きじゃない人から、「世界観が複雑で面倒くさい」「とっつきにくい」とよく言われる。確かに、サイバーパンクバイオ系ガチガチハードSF宇宙ロボット戦隊ものなどマニアックな作品は数知れず。

だが、SF作品はもっともっと枠が広いということをお伝えしたい。

『ドラえもん』正真正銘のSFだし、星新一作品のようにちょっと不思議な世界みたいな物語はたくさんある。『時をかける少女』『君の名は。』にも感動しなかった?

ここでご紹介する『四畳半タイムマシンブルース』も同様。タイトルからしてせせこましく胡散臭く、笑いの予感がプンプンするではないか。

文庫本の裏表紙に書かれたストーリーはこんな感じ。

8月12日、クーラーのリモコンが壊れて絶望していた「私」の目の前にタイムマシンが現れた。後輩の明石さんたちと涼しさを取り戻す計画を立て、悪友どもを昨日へ送り出したところでふと気づく。過去を改変したら、この世は消滅してしまうのでは……!? 辻褄合わせに奔走する彼らは宇宙を救えるのか。そして「私」のひそかな恋の行方とは。

『四畳半タイムマシンブルース』より



▼SFを意識せずに読める、痛快ドタバタ劇

タイムマシンの周りに集まった腐れくさ大学生たちは、新しいバイクを順番に乗り回すような勢いでこの機械を操作したがる。じゃんけんで順番を決め、時間旅行するのは「昨日」に決まった。未来でもなく、遥か昔の時代でもなく。

壊れる前のクーラーのリモコンを奪取するため、そして銭湯で盗られたシャンプーの犯人を見つけるため、彼らは「昨日」へ戻るのだ。

なんて規模の小さい……と思うことなかれ。戻るのが「昨日」だからややこしくて仕方ない

しかもタイムトラベラーとしての危機意識に疎い連中の時間旅行だ。

主人公の「私」は、愛すべきアホどもの歴史を乱す暴挙を食い止めようと奔走する「昨日」と「今日」の時空を騒々しく行き来して──。

 現在この男湯には樋口氏も小津も私も、それぞれ二人ずつ存在している。しかも全員全裸である。この醜悪なトリプルペアの存在を隠し通さねば我らの宇宙に未来はない。  〜中略〜
 おそるべきことに、やがて湯船から出てきた(昨日の)樋口氏が、(今日の)樋口氏の左隣に腰を下ろし、身体を洗い始めた。
 さらに彼らは中身のない世間話を始めたのである。

『四畳半タイムマシンブルース』より


▼タイムトラベルで発生した、過去改変の結末とは

タイムトラベルの物語につきものなのは、“出会ってはいけない二人の悲しき結末”である。未来人と恋に落ちても、所詮しょせん、時空の違う者同士だ。二人の恋は成就せず、涙と切なさを誘う。

『四畳半タイムマシンブルース』には、こんな悲恋はみじんもない。だが「昨日」へ戻ってドタバタしているうちに、昨日の自分と今日の自分がふれ合う「時空を超えたひとり相撲」的ハプニングが起きるのだ。

タイムマシン騒動がひとしきり終わった後、可愛い後輩の明石さんが「時間」についてとても興味深いことを言っている。

「時間は一冊の本みたいなものだと考えてみたんです」

この物語で明石さんの未来に馳せる思いを読み、言葉の意味を味わっていただきたい。
理にかなっている上、文学的な解釈がとてもロマンチックである。


▼まるで青春小説の読後感。そして爆笑の余韻

ドタバタながらも読後感はとても爽やか。すぐさま読み返し、「昨日」に介入した彼らの行動をおさらいしたくなるような物語である。

実はこの『四畳半タイムマシーンブルース』、前作に当たる『四畳半神話体系』から読み始めると登場人物達の世界観、関係性がよりわかって楽しめる。

『四畳半神話体系』並行世界(パラレルワールド)ものではあるが、SF食わず嫌いでも面白く読める内容だ。感覚的には、藤子不二雄先生が描くSFショートストーリー漫画に近い。

そう、不思議な世界の扉を開けてしまったような物語なのである。


▲漫画2冊は厚さ5センチもある読み応え! どの短編も楽しくて夢中に。



『四畳半タイムマシンブルース』は、9月30日より全国ロードショー予定である。アニメでどう描かれるかも今から楽しみだ。



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