知らない徳利
とある市場。
顔見知りの会主から呼び止められた。
ほらこれ面白いものがあるよ。手に取ると確かに面白い。口に古い傷はあるが下段を従えスッと伸びる首は明らかに日本の民窯なれどどこの何とも思えない面白さがある。
富山だよ。
小杉焼ですか?間髪入れずこたえる。
よく知ってるね。面白いよねぇ。頷くだけ。
なんなのそれ?形は面白いけどよいもの?
売り主の声に、ええ、面白いものですね、と高台をなぞりながら返す。
旧知の二人は、40年もやっててこれも分からないのかよ。なんてやってる。
私なりの見立てはある、相場は無い。おおよその入札金額を持って競りに臨む。
なんのことなくただ落ちる。会主の視線を感じた。
持ち帰り、改めて眺める。やはり小杉には見えない。見当していた相馬でもない。図録や資料をひく。一勝地焼。
今日の誰にもわからなかった。ただものはある。それだけで競りは進む。
