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windowおじさんは、質問に答えない

展示会のブースで、windowおじさんは光ファイバーのケーブルを指さしていた。

黒い被覆に包まれた、指ほどの太さの線。
見た目は、ただのケーブルだ。

「この中に、光が通っています」

windowおじさんは、そう言って少し笑った。

目の前に立っていたのは、営業の方だった。
パンフレットを片手に、慎重に質問する。

「これは、ユーザにとってどういう価値があるんですか?」

とてもまっとうな質問だった。

速くなるのか。
遠くまで届くのか。
何が変わるのか。

windowおじさんは、うなずいた。

そしてケーブルの断面図を指さした。

「ここがコアで、ここがクラッドです」

ペンで細い円を描く。

「光は、この境界で反射しながら進みます」

円の中に、小さなジグザグの線を描いた。

説明は続く。

反射。
減衰。
損失。

「従来のケーブルだと、距離が伸びるほど信号が弱くなるんです」

windowおじさんは、断面図の横に小さく波線を描いた。

「LANケーブルも、だいたい100メートルくらいが限界なんですよ」

営業の方は、うなずきながら聞いている。
しかし、最初の質問の答えにはまだ届いていない。

windowおじさんは、楽しそうだった。

速さの話ではなく、
なぜ光が届くのかを説明している。

なぜ減衰するのか。
なぜ反射するのか。
なぜ、この構造が必要なのか。

たぶんwindowおじさんにとって、
速いことは結果でしかない。

本当に大事なのは、
光が迷わず進み続ける理由のほうなのだ。

「つまりですね」

windowおじさんは、ケーブルをそっと持ち上げた。

「光だと、ほとんど減衰しないんです」

営業の方は言った。

「なるほど。遠距離でも速い通信ができるんですね」

windowおじさんは、小さくうなずいた。

「そうなんです」

その表情は、少し安心したように見えた。

価値ではなく、
仕組みが伝わったことに安心している顔だった。

光は、目に見えない。

それでも、確かに進んでいる。

windowおじさんは今日も、
速さではなく、光が進み続ける理由を説明していた。


ゆるっと診断士視点

組織でも、同じ場面をよく見る。

顧客が知りたいのは「何が良くなるのか」だが、
専門家は「なぜそうなっているのか」を説明する。

価値は外から見える。
理由は内側にいる人にしか見えない。

長く関わってきた人ほど、
結果よりも、仕組みを守ろうとする。

一方で、価値を伝える役割も必要になる。

仕組みを語る人と、
価値に翻訳する人。

その両方がいて、
はじめて技術は誰かの役に立つ。

光ファイバーの中を進む光のように、
見えない部分が、全体を支えている。

windowおじさんは今日も、
目に見えないものを、丁寧に説明している。

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