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優秀なエンジニアは、ときどき自由すぎる

真面目で、技術も一級品。

それなのに、
なぜか現場は少しだけ振り回される。

そんなエンジニアが、時々いる。

理屈は完璧。
判断も速い。
仕事もできる。

ただし、
ときどき世界のルールを少しだけ無視する。

そしてだいたい、本人にその自覚はない。


原因がわかりました

先日、ベンダーと新サービスのネットワーク検証をしていた。

通信がうまくいかず、
原因の切り分けをしていたときのことだ。

不具合が出てから、まだ一時間も経っていない。

そんなタイミングで、ベンダーから連絡が来た。

「原因がわかりました」

仕事が早いな、と思った。

そして、続けてこう言った。

「原因は三つあります」

――三つ。

そんな短時間で、三つも出てくるものなのか。

もしそれが分かるなら、
なぜ最初から潰しておかなかったのか。

そんなことが頭をよぎったが、
言い方はとても正直だった。

むしろ、清々しいほど正直だった。

時間もないため、方針を変えた。
ネットワーク構成を変更する。

設計も変わるため、
ベンダーとも意識を合わせた。

これで通信できるはずだった。

しかし、通信できない。

ログを見る。
設定を見る。
ケーブルを見る。

そして原因がわかった。

ベンダーが、
先ほど意識を合わせた設計にしていなかったのだ。

理由はシンプルだった。

「こちらのほうが効率的なので」

なるほど。

理屈としては、たしかにその通りだった。

ただ、少なくとも、今ではなかった。


泣きそうだったのは

それでも何とか調整し、
ギリギリで通信ができるようになった。

遠方のデータセンターだったため、
あと数十分遅れていたら飛行機に間に合わない時間だった。

作業が終わった瞬間、
ベンダーが言った。

「いやあ、泣きそうになりましたよ」

その言葉を聞いた瞬間、
その場にいた全員が少しだけ笑いそうになった。

なぜ、その言葉を言えるのか。


そしてプレスリリース

後日、ベンダーから連絡があった。

今回の検証について、
プレスリリースを出したいという話だった。

先進性もあるし、
ぜひ一緒に発信したい、と。

こちらとしてもありがたく、
推薦コメントを提供した。

そして当日、公開されたリリースを確認した。

私は目を疑った。

我々のサービス名が、間違っていたのだ。

何度も口にしていたはずなのに、
なぜか本番で間違えていた。

技術的な説明は完璧だった。

構成も、ロジックも、すべて正しい。

たぶん彼の中では、
チェックすべき優先順位がはっきりしているのだろう。


少し困る。でも、いないともっと困る

振り返ると、現場ではいろいろなことが起きる。

想定外の判断。
突然の方針変更。
説明のない最適化。

少し困ることもある。

でも、その人がいなければ、
新しいことはだいたい進まない。

優秀な人は、ときどき自由すぎる。

そして組織は、
だいたいそういう人に少しだけ振り回されながら、
前に進んでいく。

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