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パイプファンと炭鉱のカナリア

現在の家作りに求められる「快適・省エネ」についての技術的ポイントを
工務店側の視点でご紹介。


室内負圧について。
「室内負圧?」
つまり、住宅の高気密化に伴い、レンジフードファンを稼働させた際に色々と不具合がでる、という問題だ。
で、1年半ぐらい前に人気者・乾太くんとの関連で室内負圧について記事にしている。
以下がそれ。

性懲りもなく、同じネタをこするわけだが、当時と比べて住宅の高気密化は進んでいるものの、この問題についてはあまり認知が広がっていないように思うので改めて書きたい。

さて、高気密住宅とは隙間が小さいことを意味する。
どれぐらい隙間がある(ない)かは気密測定を行って確認する。
私も日々、気密測定を行っている。

減圧法による気密測定

気密測定は「目視」で隙間を探すわけではない。
画像にあるようなバズーカ型のファンを開口に据え付けて、室内から室外に排気する。そうすると、パックの牛乳をストローで吸っている状態となり、パックがへこむ。つまりパック内が減圧される。
この時、パックにストローの穴と別の穴があると、パックはへこまない。
その別の穴から空気が侵入するからだ。
それでもパックをへこませようと顔を赤くしてストローを吸うとどこかの時点でパックはへこむ。
住宅も一緒で、隙間が小さいと少ないファン風量で規定(50Pa)の減圧状態となる。
例えば高気密原理主義によって、巷にはC値0.2cm2/m2の住宅があふれているが、そんな住宅だとおおよそ以下の負圧(室内減圧された)状態となる。

C値0.2cm2/m2
αA(総相当隙間面積)22cm2
30Pa時通気量=90m3/h
50Pa時通気量=150m3/h

※実質延べ床面積120m2、n=1.00とする

「わ、C=0.2cm/m2ですよ。おめでとうございます。パチパチ」
ということになるのだろうが、「ちょっと待て」、と言いたい。

たった、150m3/hの風量を室内から室外に排気しただけで50Paの負圧となるのだ。
50Paと言えば、(後述するが)色々厄介ごとが起きる。

150m3/hで「色々厄介ごと」が起きるような高気密住宅で
レンジフードファンを動かすと大変なことになる。
例えば、下記P-Q線図のレンジフードファン。

パナソニックレンジフードFY-6HGC5

このレンジフードは<弱・中・強>設定が可能。
で、パイプ抵抗曲線(つまり、このレンジフードにつなぐダクトや屋外フードによって発生する排気に対する抵抗=圧力損失)が10mだったとする。
そうすると、右肩下がりの<強>とパイプ抵抗曲線の交点で風量が決まるので(実は決まらないが、決まるとする)、480m3/h程度の風量がありそうだとわかる。

ここで歩みを止めて考える。
この住宅はC値0.2。
150m3/hで50Paの負圧状態になる。
と、すると480m3/h排気するとどうなるのか?
そうなのだ。大変なのだ。

レンジフードファンを動かすとき、それだけが排気しているわけではない。24時間換気も動かしている。

このC値0.2の住宅は24時間換気風量が140m3/hだったとする。
(つまり、これだけで50Paの負圧になるポテンシャルのある風量)
で、三種換気だったとする。
三種は強制排気なので室内は負圧状態となる。
しかし、自然給気口がある。
きっとφ100の自然給気口が5か所ほどあるはず。
「そう、自然給気口があるから、24時間換気+480m3/hの風量もうまくやりすごせるはず。」
いえ、そうはならない。
φ100の自然給気口が5個ぐらいでは全く足らない。
過去の経験ではこの状態でレンジフードファンを<強>運転すると100Paぐらいの負圧状態になる、。
気密の教科書には「100Paの圧力差になると気密層が破れる恐れがあるのでやめてね。」となっている。
気密層が破れる・・まるで、シャツを破るハルクホーガン。

一種換気ではどうか?
一種の場合、強制的に140m3/h入れて、同じく強制的に140m3/h排気する。
そうすると、24時間換気による負圧は発生しないが、自然給気口がないので、480m3/hの排気による負圧を一身に浴びることになり、やはり100Pa以上の負圧状態になる。ハルクホーガン。

どうしたらよいか。
同時給排がある!
レンジフードファンに強制排気の近くで自然給気させて、負圧状態を軽減させる。
しかし、C値0.2ぐらいの原理主義的高気密住宅となると、同時給排ではおいつかない。残念。やはり50Pa以上の負圧状態に陥る。

※C値0.3~0.4より優位な性能だと、同時給排では足りない。
なので、それだけの性能なのに飄々と「うちは同時給排なので対策してます。」と言っている工務店はC値しか見ていない。バランスが悪い。トートロジーだがC値原理主義なのだ。

さて、タイトルのパイプファン。
トイレや洗面所で壁付けファンとしてよく使われている。
これは軸流ファンという種類で、風を押し出す力が弱い(静圧が低い)。
例えば下のパイプファン。
24時間換気でよく見かける能力だ。

パナソニックパイプファンFY-08PFL9SD

先ほどと同じくP-Q線図をみる。
そうすると、風量(横軸)が0m3/hになるのは30Paぐらいであることがわかる。これはつまり、このファンは空気を押しだす力は30Paぐらいまでの圧力差です、ということだ。

このP-Q線図が想定している圧力は室内壁から外壁に延びるダクト(パイプファンの場合短い)であったり、屋外フードぐらいだ。しかし、C値0.2の原理主義的性能だと、住宅そのものが大きなダクトのような役割となり、排気する際の圧力損失をうむ。C値0.2の住宅の例で言うと、隙間面積(αA)は22cm2ほどしかない。これはφ100の自然給気口1.5個ぐらいでしかない。よって、元々排気する力が低いパイプファンにとって、排気するための空気の入り口が22cm2しかなく、その穴をレンジフードファンという「化け物」と共有しなくてはいけない、となるのだ。
と、どうなるか。
前述の通り、レンジフードを動かすと室内負圧が30Pa以上となり、パイプファンが逆転する。
パイプファンが逆転すると、外から逆に虫が侵入し、白い便座カバーの上で骸となる。また、トイレの臭いが室内側に流れてきて、若い娘は恥ずかしい思いをする。

室内負圧の弊害は色々ある。例えばこんな感じ。
・パイプファンの逆転
・換気扇の異音
・ユニットバスの浴室換気乾燥機の逆転
・玄関ドアが開きにくい
・引き違い窓から異音
・乾太くんの給気不足(これは以前説明)

この中で最初に現れる現象が「パイプファンの逆転」なのだ。
たった30Paの負圧で発生する。
なので、負圧問題における炭鉱のカナリアとしての立ち位置が揺るぎないのである。(何故か自信ありげに宣言する)

そんなこんな。
例によって、疲れてきた。かつとりとめがなくなってきた。

最後にどれぐらいのC値性能だった時、30Pa以下、つまりカナリアが死なずに済むのかを紹介して終わる。

C値1.0cm2/m2
αA(総相当隙間面積)120cm2
30Pa時通気量=520m3/h
50Pa時通気量=870m3/h
※実質延べ床面積120m2、n=1.0

こんな感じ。
C値1.0程度だと500m3/hを排気しても30Paになるかならないかなのだ。
C値0.2の時の隙間面積が22cm2だった。
で、C値1.0の時が120cm2なのでおよそ100cm2の隙間が足らなかったことになる。

以上。







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