2013年夏、ニューヨーク(その1) ファストファッションが広がる全米で勝ち残る業態を見て歩く③
西海岸から東海岸へ移動、飛行機とは言え、時差も3時間あり、別の国に来るような移動です(笑)
ニューヨークではH&Mらとの競合を避け、アパレル事業に見切りをつけたリミテッドブランズ社のビクトリアズシークレット、当時、アマゾンに対抗してオムニチャネルリテイリングへのシフトを掲げる百貨店メイシーズ、
そしてマンハッタンのファッションチェーンの競合状況を視察するのが目的でした。
H&M米1号店、アメリカのファストファッションブームの震源地
ニューヨークは学生時代に一人旅で初めて訪れて以来、僕にとっては世界で最もエキサイティングな街のひとつ。

商社勤務時代は商談のため、小売チェーン勤務時代はマーケットリサーチに、何度も訪れては魅了された都市です。
まずは、2000年に訪れて、度肝を抜かれたH&Mアメリカ1号店の5番街の店から始めます。

ここに来るのは10年ぶりですが、当時同様、たくさんの来店客で賑わっていました。
多くの女性が意気揚々と入店し、何点も試着をし、買って帰る姿にスポットライトが浴びせられ、吹き抜け式店舗の最上階からしばらく眺めていると、
来店客がファッションショーのランウェイを歩くファッションモデルのように演出されているように思えてきます。

海外に来るといつも思うのですが、海外のファッションストアって、空間を実に贅沢に、上手に使って、内装だけでなく、来店客を巻き込み、店内風景、店内演出のひとつに取り込んでしまい、それぞれの来店客が発するインスピレーション、購買衝動買い的オーラが上手に伝播するように利用するのが上手いと思います。
アパレルからドメインチェンジが成功したリミテッドブランズ
次に訪れたのは、Victoria's Secret(ヴィクトリアシークレット)ヘラルドスクエア店

ヴィクトリアシークレットを運営する、リミテッドブランズ社(現Lブランズ社)はGAPよりも早く、THE LIMITED STOREでSPA(アパレル製造小売業)を始めていた、SPAの元祖と言ってもよい会社でした。しばらく、店頭での実験販売と空輸を駆使したサプライチェーンの強みで、GAPと共に、世界のアパレルチェーンのツートップの座にいました。
しかし、2000年、H&Mがアメリカに上陸して以来、アパレル事業は低迷。2007年に創業ブランドであるリミテッド・ストア事業とエクスプレス事業の株の大半をファンドに売却し、ランジェリー&ホームウエアのヴィクトリアズシークレット事業とヘルス&ビューティのバス&ボディワークス事業に集中する事業転換(ドメインチェンジ)を行いました。
その結果、2013年当時では、ビクトリアズシークレットは、GAPグループのOLD NAVYやGAPを上回る全米一の売上高のファッションストアとなり、企業、リミテッドブランズ社としても、一旦、売上は下がりましたが、全米2位、世界4位、営業利益率が15%を超える、高収益企業として生まれ変わったのでした。
つまり、ファストファッションが登場、普及すると、もう、外に着て行くファッションの商品開発上の流通革新、価格競争は最終戦争から終焉。感度の高い消費者は、外衣であるファッションよりも内面の美、インナーウエアやスキンケアなど内に向かうと見極めた経営者の判断が正しかったということです。
しかも、創業者で経営者のレス・ウエクスナー氏はファッショントレンドとサプライチェーンのプロ、その後も、インナーウエアとスキンケアにそのノウハウを生かして行きます。
ビクトリアズシークレットは日本のピーチ・ジョンなどにも影響を与えたブランド。日本では通販と一部の商品が空港で購入可能です。
※ その後、2017年くらいから、派手な下着のイメージのビクトリアズ・シークレットは時代の変化に対応しきれず低迷します。現在の同社(Lブランズ社)の利益を支えているのは、ヘルス&ビューティ部門のバス&ボディワークスです。
Amazonとオムニチャネルリテイリング
通販大手のアマゾンが全米の百貨店最大手のシアーズの売上を上回り、世界小売業売上高トップ10入りした時に登場したバズワードがオムニチャネルリテイリングという言葉でした。オムニチャネルとは、全ての販路を意味しますが、オムニチャネルリテイリングとは小売業が、店頭だけでなく、オンライン通販、カタログ通販などあらゆる販路を用いて顧客最適に商品を届ける状態になる状態のことで、2011年の全米小売業大会というイベントで、百貨店のメイシーズが通販のアマゾンに対抗するために、実店舗を持つメリットを活かしながらオンライン活用をする小売業に生まれ変わる戦略として使ったことで、世界中に広まった言葉です。
日本では、2014年以降、オムニチャネル、O2O、OMOなどの言葉が類義語として使われるようになりました。
そんな言葉を生み出したメイシーズがどんな取り組みをしているのかを見たくて、ヘラルドスクエア店の店内の様子を視察しました。

それらしきものは、この端末くらい。要は、店頭にない商品が近隣店舗だったらどこにあるのか?が検索できたり、通販で購入できるという端末です。店頭にある商品の値札についているバーコードをスキャンすれば、通販で購入した顧客のレビューも観ることができます。


視察時、この端末で検索する顧客はひとりもいませんでした。まだ、アメリカのオムニチャネル施策も言葉が先行するだけで、黎明期、ウォルマートがオンライン注文、店頭ピックアップの施策を始めるのも、この翌年の2014年になります。
Billy Joel(ビリー・ジョエル)の歌が似合う街
1987年、大学時代に始めて一人旅でアメリカに来た時、街角を歩きながら、心の中で流れていたのが、大好きだったBilly Joel(ビリー・ジョエル)の歌の数々でした。
それ以来、横断歩道を渡るたび、永遠に続く通りを見ているとBilly Joel(ビリー・ジョエル)の歌が聞こえてくるような気がします。ビジネスマンのいない、土日の朝が最高に合いますね。

次回はニューヨークレポート(その2)です。
