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なぜ、社労士は「顧問」が増えても、楽にならないのか

― 安定のはずが、不安を生む理由


― 安定のはずが、不安を生む理由

顧問契約は、社労士にとって「安定」の象徴のように語られます。
毎月決まって入ってくる顧問料。継続的な関係性。売上の見通しが立つ安心感。

独立した社労士であれば、
「まずは顧問を増やそう」
そう考えるのは、ごく自然な判断です。

実際、多くの社労士が、単発業務だけに頼る不安定さを避けるため、顧問契約を軸に事務所をつくっていきます。
顧問先が増えるほど、経営は安定し、精神的にも落ち着く。
少なくとも、そう信じて疑わなかったはずです。

ところが、現実はどうでしょうか。

顧問が増えても、なぜか楽にならない。
売上は伸びているのに、時間に余裕は生まれない。
むしろ、顧問が増えるほど、見えない不安が増していく。

この違和感を、はっきりと言語化できないまま、
「まあ、こんなものか」
「独立とは、こういうものだ」
と、自分に言い聞かせている社労士は少なくありません。


顧問契約=安定、とは限らない

顧問契約がもたらすのは、収入の安定であって、
時間や心の安定とは必ずしも一致しません。

顧問先が増えると、仕事は自然にこう変化していきます。

・対応すべき範囲が広がる
・相談の種類が増える
・判断の回数が増える
・責任の重さが増す

一つひとつは、社労士として当然の仕事です。
しかし、それらが積み重なることで、

「何かあったら、自分が対応しなければならない」
という前提が、静かに、しかし確実に増えていきます。

数字上は安定している。
通帳を見れば、以前よりも確実に売上は増えている。

それでも、感覚としては落ち着かない。
常に「何か起きるかもしれない」という意識が頭の片隅に残り、完全に気が休まる時間が減っていく。

このズレこそが、顧問契約が持つもう一つの顔です。


顧問と言いながら、実態は「作業代行」になっていないか

ここで、一度立ち止まって考えてみてください。

あなたの顧問業務の時間は、
何に使われているでしょうか。

・相談を受けている時間
・状況を整理し、判断している時間
・将来を見据えた提案をしている時間

それとも、

・給与計算を処理している時間
・手続きを進めている時間
・問い合わせに即時対応している時間
・資料を埋め、確認し、修正している時間

後者の比重が、思った以上に大きくなっていないでしょうか。

顧問契約のはずなのに、
実態は「毎月発生する作業の請負」に近づいている。

この状態に陥っても、多くの社労士はすぐには気づきません。

なぜなら、

「顧問先の役に立っている」
「感謝されている」
「契約は続いている」

という事実が、確かに存在するからです。

ですが、ここで一つ、避けて通れない問いがあります。

その仕事は、本当に“顧問”でしょうか。
それとも、「断らずに引き受け続けた結果、そうなってしまった役割」でしょうか。


「自分が止まったら終わる」感覚の正体

顧問が増えていく中で、多くの社労士が、ある感覚を持ち始めます。

・自分が休んだら回らない
・自分が止まったら仕事が滞る
・代わりがいない
・任せられない

この感覚の正体は、強い責任感です。
顧問先を守りたい。迷惑をかけたくない。信頼を失いたくない。

その姿勢自体は、社労士として非常に健全です。

しかし、この感覚が強くなりすぎると、
次第に、こんな状態へと変わっていきます。

・仕事を減らせない
・依頼を断れない
・顧問契約を整理できない

顧問は増えているのに、
将来に対する安心感は、なぜか増えない。

それどころか、

「この働き方を、あと何年続けられるのだろうか」
「年齢を重ねても、同じように対応し続けられるのか」

そんな不安が、言葉にならないまま積み重なっていく。

これが、「自分が止まったら終わる」という感覚の正体です。


顧問過多が生む、静かなプレッシャー

顧問契約は、一つひとつを見ると、小さな負担に見えます。
ですが、それが積み重なると、確実にプレッシャーになります。

・期限を守り続けなければならない
・ミスは許されない
・相談には答え続けなければならない

しかも、このプレッシャーは、外からはほとんど見えません。

怒られているわけではない。
クレームが来ているわけでもない。
売上が落ちているわけでもない。

それでも、

「常に何かを気にしている」
「頭が休まらない」
「先の予定を入れにくい」

そんな状態が、日常になっていきます。

これが、顧問過多が生む静かなプレッシャーです。
音もなく、しかし確実に、仕事の質と人生の余白を削っていきます。


問題は「顧問の数」ではない

ここまで読んで、

「顧問を減らすしかないのか」
そう感じた方もいるかもしれません。

ですが、この章でお伝えしたいのは、
顧問の数を減らすべきだ、という話ではありません。

問題は、

・顧問契約の中身がどう設計されているか
・時間と価値の関係がどうなっているか
・自分の役割が、どこに置かれているか

です。

顧問が増えても楽にならないのは、
あなたの努力不足でも、能力不足でもありません。

顧問という仕組みを、「時間の視点」で設計し直していないだけなのです。


次の章で扱うこと

次の章では、

「顧問先の社員より、時間単価が低くなっている」

という、見過ごされがちな事実に向き合います。

顧問として関わっているはずなのに、
実態は“便利屋ゾーン”に入ってしまっていないか。

そして、

・顧問契約を壊さずに
・関係性を崩さずに
・時間単価を上げていくには、どう考えるべきか

を、具体的に整理していきます。

ここから先は、
「気づき」を「行動」に変えるフェーズです。

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