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パナソニック28年・85プロジェクトを振り返って見えた「AI時代の決断力」


最近、パナソニック時代に関わったプロジェクトを棚卸ししてみました。
数えてみると、28年間で85件。

品質改善、原価管理、事業立上げ、事業撤退、SAP導入、グローバル改革、組織改革、人材育成、ワークライフバランス推進…。

一覧表にすると壮観でした。
正直、自分でも驚きました。

当時はただ目の前の仕事を必死にやっていただけです。
その一つひとつが、40年以上経った今、「AI時代の決断力」というテーマにつながるとは思ってもいませんでした。

私は長い間、自分は時間を研究してきたと思っていました。

しかし85のプロジェクトを振り返ってみると、
実際に研究していたのは時間ではなく、「決断」だったのかもしれません。


第1期 現場改善・見える化の時代

1987年〜1994年

入社して最初に学んだのは、問題解決ではありませんでした。

問題を見つけることでした。

品質月報。

品質週報。

固定資産管理。

原価管理。

各種業務改善。

当時の私は経理部門に所属していました。
数字を集め、分析し、報告する。
一見すると地味な仕事です。

しかし、この時代に私は非常に重要なことを学びました。

それは、
「見えないものは改善できない」
ということです。

多くの人は問題解決に目が向きます。
しかし実際には、問題が見えていないケースの方が圧倒的に多いのです。

売上が伸びない。
利益が出ない。
忙しいのに成果が出ない。

こうした現象の裏には必ず原因があります。
しかし、その原因が見えていない。
だから解決できない。

今振り返ると、この時代に学んだことは「問いを立てる力」の原点だったように思います。

何が起きているのか。
本当の問題は何なのか。
まず現実を見る。

その姿勢は今も変わっていません。

「経理は経営の羅針盤」



松下電器(現パナソニック)の経理部門は、松下幸之助の直轄部隊です。
お金の流れを通して、経営を見る。
経営者(事業部長)の番頭役として、意思決定をサポートする。

「赤字は罪悪」
「経理は経営の羅針盤」
「経理の乱れは経営の乱れ」
20代から、経営の現場で厳しい鍛錬を受けてきました。

普通の会社のような、事務屋の経理では務まらない真剣勝負の場を踏んできました。


第2期 事業戦略・撤退判断の時代

1995年〜2000年

この頃になると、仕事のテーマが大きく変わります。

新組立パッケージ事業立上げ。

製品別収益管理。

管理連結。

為替管理。

そしてDRAM事業撤退。

ここで初めて、経営の意思決定の現場を目の当たりにしました。

私は今でも思います。

経営で最も難しいのは「やめる決断」だと。

新しいことを始めるのは比較的簡単です。

夢があります。

期待があります。

未来があります。

しかし撤退には痛みがあります。

関係者もいます。

プライドもあります。

過去の投資もあります。

だから多くの企業は撤退が遅れます。

しかし遅れれば遅れるほど傷は深くなる。

DRAM事業撤退の経験は、私に大きな学びを与えてくれました。

何を守るのか。

何を捨てるのか。

どこで見切るのか。

決断とは勇気の問題ではありません。

責任の問題なのです。


第3期 経営改革・制度設計の時代

2001年〜2005年

この時期は私のキャリアにおける転換点でした。

事業ドメイン制。

バランスト・スコアカード(BSC)。

SAP導入。

経営品質向上活動。

マトリクス組織。

会社の仕組みそのものを変える仕事が増えていきました。

特に印象的だったのがBSCです。

KPIを決める。

評価指標を決める。

何を重要とするのかを決める。

一見すると管理会計の話です。

しかし本質は違います。

これは「問い」の設計です。

何を測るのか。

何を評価するのか。

何を成果と呼ぶのか。

問いが変われば行動が変わります。

行動が変われば結果が変わります。

私はこの時代に、

「経営とは問いを設計すること」

だと学びました。


第4期 グローバル最適化の時代

2005年〜2008年

次に訪れたのがグローバル化の波でした。

グローバル調達。

VMI。

貿易コンプライアンス。

全社MRO。

海外拠点との連携。

この頃になると、自部門だけを見ていても成果が出ません。

全体を見なければならない。

日本だけを見ていてもダメ。

世界全体を見なければならない。

部分最適から全体最適へ。

視座を上げることが求められました。

これは現在、私が経営者の方々にお伝えしている時間工学にも通じています。

目の前の予定だけ見ていても、本質は見えません。

一週間を見る。

一ヶ月を見る。

一年を見る。

さらに人生全体を見る。

視点が変われば判断も変わります。


第5期 人と組織の時代

2008年〜2010年

そして最後に行き着いたのが人でした。

ワークライフバランス。

組織活性化。

人材育成。

ワークショップ運営。

制度や仕組みをいくら整えても、人が動かなければ意味がありません。

戦略が正しくても実行されなければ成果は出ません。

結局、最後は人なのです。

人はなぜ動くのか。

なぜ動けないのか。

なぜ決められないのか。

ここに関心が移っていきました。

独立後に時間工学へとつながった原点も、この時代にあったように思います。


85のプロジェクトが教えてくれたこと

こうして振り返ると、私は会計を学んだのでも、ITを学んだのでも、SCMを学んだのでもありませんでした。

私が学んできたのは、

決断です。

何を見るのか。

何を始めるのか。

何をやめるのか。

何を残すのか。

何を優先するのか。

どの情報を信じるのか。

誰に任せるのか。

すべて決断です。

経営とは決断の連続です。

人生も決断の連続です。


AIが進化するほど決断力が重要になる

現在、多くの人がAIを使っています。

AIは本当に優秀です。

情報を集めてくれる。
分析してくれる。
文章も書いてくれる。
資料も作ってくれる。

しかし、決断はしてくれません。

どちらを選ぶのか。
何を捨てるのか。
何に賭けるのか。
その責任を負うのは誰なのか。

これは人間にしかできない仕事です。

だから私は最近、
「AI時代の決断力」
というテーマに取り組んでいます。

これは新しいテーマではありません。
パナソニック28年。
85のプロジェクト。
そして独立後900名を超える経営者や士業との対話。

その延長線上にあるテーマです。


成功する組織は正しい答えを持っていたのではない

85のプロジェクトを振り返って最後に気づいたことがあります。

成功する組織は正しい答えを持っていたのではありません。
正しい問いを持っていました。

何を目指すのか。

何を大切にするのか。

何を捨てるのか。

何を測るのか。

問いが変われば答えが変わります。

そして問いを作るのがリーダーの仕事です。

AIが答えを出す時代。

だからこそ、人間には問いを立てる力と決断する力が必要になる。

私はこれからも、そのことを伝えていきたいと思っています。

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