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#118 生成AIを使う学校は8割。でも、半数以上の先生が使う学校は17.2% ー学校全体の日常になるまでに、何が必要なのかー

1 はじめに

 最近、さまざまな学校や地域で、生成AIに関する研修を担当させていただく機会が増えています。研修では、生成AIの基本的な仕組みや注意点だけでなく、校務や授業準備でどのように使えるのかを、実際に操作しながら紹介しています。

 実際に使っていただくと、「思っていたより簡単に使える」「文書作成に使ってみたい」「授業準備にも活用できそう」といった声をいただきます。その一方で、「個人情報はどこまで大丈夫なのか」「学校で使ってよいサービスが分からない」「便利そうだけれど、何から始めればよいのか分からない」といった声も少なくありません。

 研修を重ねる中で感じるのは、生成AIへの関心は確実に高まっているものの、その活用状況にはかなり大きな差があるということです。日常的に校務や授業準備で使っている先生がいる一方で、研修の場で初めて生成AIを操作する先生もいます。同じ学校の中でも、積極的に使っている先生と、ほとんど触れたことがない先生がいます。

 そんな学校現場の様子を考える上で、とても気になる数字があります。生成AIを何らかの形で校務に活用している学校は、すでに8割を超えています。しかし、半数以上の教職員が生成AIを活用している学校は17.2%です。

 「学校で使われている」ことと、「学校全体の日常になっている」ことには、まだ大きな違いがあります。今回は、この17.2%という数字を手がかりに、生成AIが学校全体へ広がるためには何が必要なのかを考えてみたいと思います。


2 生成AIを使っている学校は、すでに8割を超えている

 文部科学省の「GIGAスクール構想の下での校務DXチェックリスト」の令和7年度確定値を見ると、校務で生成AIを「全く活用していない」学校は16.3%でした。

 内訳は、次のようになっています。

  • 全く活用していない:16.3%

  • 一部の教職員が活用している(半分未満):66.6%

  • 一部の教職員が活用している(半分以上):14.5%

  • ほぼ全員の教職員が活用している:2.6%

 つまり、「全く活用していない」16.3%を除けば、少なくとも一部の教職員が生成AIを校務で活用している学校は83.7%になります。生成AIを使っている先生がいる学校という意味では、すでに8割を超えています。

【参考:文部科学省「学校教育におけるAI活用に関するこれまでの取組」】https://www.mext.go.jp/content/20260430-kyoikushokuin-000049466_1-1.pdf

 ここだけを見ると、生成AIはかなり学校現場へ広がっているように感じます。しかし、最も多いのは「一部の教職員が活用しているものの、半分未満」という学校で、その割合は66.6%です。

 さらに、令和8年3月31日に改定された「学校教育情報化推進計画」では、「半分以上の教職員が生成AIを校務で活用する学校」の2025年度値は17.2%とされています。

【参考:文部科学省「学校教育情報化推進計画」】https://www.mext.go.jp/content/20260729-mxt_shuukyo01-000027313_002.pdf

 8割を超える学校で生成AIが使われている。一方で、半数以上の先生が使っている学校は17.2%。この二つの数字を並べると、学校現場の現在地が少し違って見えてきます。

 生成AIは、学校には入ってきました。しかし、まだ多くの先生が日常的に使うところまでは広がっていません。今は、「使う先生がいる学校」が増えた段階から、「学校全体へどう広げていくか」を考える段階へ移りつつあるのではないでしょうか。


3 教員一人一人で見ると、さらに違った姿が見える

 OECDの国際教員指導環境調査「TALIS 2024」でも、学校現場のAI活用について興味深い結果が示されています。日本の中学校教員のうち、仕事でAIを使用したと回答した割合は17%でした。OECD平均は36%です。

 なお、この調査で尋ねられているのは生成AIだけではなく、AI全般です。また、中学校教員を対象とした調査であり、先ほどの文部科学省による学校単位の調査とは対象も質問方法も異なります。そのため、「学校の83.7%」と「教員の17%」をそのまま比較することはできません。

 さらに、過去12か月に授業でAIを使用していない教員に理由を尋ねたところ、日本では88%が「AIを使って教えるための知識や技能がない」、65%が「学校にはAIを使用するための環境がない」と回答しています。OECD平均は、それぞれ75%、37%です。

【参考:OECD「Results from TALIS 2024 - Country notes: Japan」】https://www.oecd.org/en/publications/results-from-talis-2024-country-notes_e127f9e2-en/japan_b48b1dd7-en.html

 この結果を見ると、「使わない先生がいる」ということだけを見るのでは不十分だと思います。使い方が分からない。安心して使える環境がない。そもそも使い方を学ぶ機会がない。そうした状況も、生成AIが広がりにくい理由の一つとして考える必要があります。

 「使わない」のではなく、「使い始めるところまでたどり着けていない」。そう考えると、学校全体へ広げるために必要なのは、「もっと使いましょう」という呼びかけだけではなさそうです。


4 文部科学省は、生成AIをどう捉えているのか

 文部科学省が現在公開している最新版の「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン」はVer.2.0で、令和6年12月26日に公表されています。そこでは、生成AIを有用な道具になり得るものと捉える一方で、出力には誤りが含まれる可能性があることなどを踏まえ、最後は人間が判断し、責任を持つことが重要だとされています。

 校務での活用についても、効率化や質の向上、働き方改革につなげることが期待されています。また、教職員自身が生成AIに慣れ、その利便性や懸念点を知ることも重要だとされています。一方で、教育委員会が生成AIの利用を一律に禁止したり、逆に義務付けたりするような硬直的な運用は望ましくないとも示されています。

【参考:文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン Ver.2.0」】https://www.mext.go.jp/content/20241226-mxt_shuukyo02-000030823_001.pdf

 つまり、「危ないから使わない」でも、「便利だから何でも使う」でもありません。生成AIの特性やリスクを理解した上で、目的に応じて適切に使うことが求められています。

 そのためにも、教員自身がまず安全な範囲で使ってみることには意味があると思います。実際に使ってみることで、便利なところだけでなく、思ったような回答が返ってこないことや、人が確認しなければならないところも見えてきます。


5 学校全体に広がるために、まず必要なのは「安心して使えること」

 生成AIを使おうと思ったとき、学校現場ではさまざまな疑問が出てきます。

  • 自治体として、どの生成AIサービスを使ってよいのか

  • 個人のアカウントで使ってよいのか

  • どのような情報なら入力してよいのか

  • 個人情報や成績情報はどこまで扱えるのか

  • 生成された内容は、どのように確認すればよいのか

  • 児童生徒に使わせる場合には、何に注意すればよいのか

 こうしたことが分からない状態で、「生成AIは便利なので使ってみてください」と言われても、使うことをためらうのは当然だと思います。まして学校現場は多忙です。新しいサービスが登場するたびに、一人一人の教員が利用規約や情報管理の仕組みを調べ、安全性を確認し、操作方法まで覚えるのは簡単ではありません。

 だからこそ、学校全体へ広げるためには、まず「安心して使える状態」をつくることが必要です。使ってよいサービスが分かること。入力してよい情報と、入力してはいけない情報が分かること。困ったときに確認できる場所や人がいること。こうした環境があるだけでも、最初の一歩はかなり踏み出しやすくなるはずです。

 先生一人一人の判断に任せるのではなく、自治体や学校として一定の共通理解をつくることが、学校全体への広がりには欠かせないのではないでしょうか。


6 「何に使えばよいのか」が分かることも大切

 安心して使える環境が整っていても、「何に使えばよいのか」が分からなければ、なかなか日常的な活用にはつながりません。

 生成AIは、できることがとても多い道具です。文章作成、要約、アイデア出し、資料整理、授業づくりなど、さまざまな場面で使えます。しかし、できることが多いからこそ、初めて使う人にとっては入口が見つけにくいところがあります。

 「生成AIが使えます。自由に使ってください」と言われても、普段使っていない先生にとっては、「では、何に使えばよいのだろう」となってしまいます。

 だからこそ、「この生成AIには、こんな機能があります」と説明するだけではなく、「普段行っているこの仕事を、生成AIにこう支えてもらえます」と伝えることが大切だと思います。

 例えば、保護者向け文書の表現を整える。会議資料の構成を整理する。アンケート項目の案を出してもらう。授業の導入を複数考えてもらう。難しい文章を子供向けに言い換える。こうした身近な仕事と結び付くことで、生成AIは初めて「自分にも使えるかもしれない」と感じられる道具になるのではないでしょうか。


7 使っている学校では、効果も感じられている

 もう一つ注目したい数字があります。文部科学省の令和7年度確定値では、教職員の半数以上が生成AIを活用している学校のうち、98%が、校務DXに取り組んだことで教職員の働き方の改善に効果があったと回答しています。

【参考:文部科学省「学校教育におけるAI活用に関するこれまでの取組」】https://www.mext.go.jp/content/20260430-kyoikushokuin-000049466_1-1.pdf

 この数字は、とても興味深いと思います。生成AIを比較的広く活用している学校では、働き方の改善を感じている学校も非常に多いということです。

 生成AIのよさは、説明を聞くだけではなかなか実感できません。実際に自分の仕事で使ってみて、「この下書きがあるだけで楽になった」「考える時間を短くできた」と感じたときに、初めて「これは使える」と思えるのではないでしょうか。

 逆に、生成AIをほとんど使ったことがない状態では、その便利さも分かりにくいと思います。まずは、普段の仕事の中で一つ使ってみる。そして、「これは助かった」と感じられる経験をつくることが大切です。

 学校全体へ生成AIを広げるためには、一人一人の先生が「自分の仕事でも役に立った」と実感できることが大切なのではないでしょうか。

 その小さな実感が次の活用につながり、周囲の先生にも広がっていく。そうした積み重ねが、生成AIを学校全体の日常にしていくための一歩になるのだと思います。

この方が、98%という数字を中心に据えつつ、言い訳っぽい補足を入れずに次の考察へ進めます。


8 大きな研修だけでなく、小さな共有を

 生成AIについて体系的に学ぶ研修は必要です。仕組みや個人情報、著作権、誤った回答が出る可能性など、安全に使うために知っておかなければならないことがあります。

 ただ、研修を行う中では、年に一度の大きな研修だけではなく、その後の小さな共有も大切だと感じています。研修では「便利だ」と思っても、職員室に戻ったときに「何に使えばよかったのだろう」「この情報は入力してよいのだろう」と迷えば、そのまま使わなくなってしまうこともあります。

 例えば、職員室でこんな話ができるだけでも違うと思います。

  • 「この文書をAIで整えたら早かったですよ」

  • 「この聞き方だとうまくいきませんでした」

  • 「授業の導入を三つ考えてもらったら、こんな案が出ました」

  • 「ここはAIの答えが間違っていたので、確認が必要でした」

 便利だったことだけではなく、うまくいかなかったことも共有する。誰かが使った方法を、別の先生も試してみる。そこでまた新しい気付きが生まれる。そうした小さな積み重ねによって、生成AIが「詳しい先生だけが使うもの」ではなく、職員室の中で少しずつ共有される道具になっていくのではないでしょうか。


9 17.2%から、2027年度には50%へ

 令和8年3月31日に改定された「学校教育情報化推進計画」では、「半分以上の教職員が生成AIを校務で活用する学校の割合」を、2025年度の17.2%から、2027年度には50%にするという目標が掲げられています。

【参考:文部科学省「学校教育情報化推進計画」】https://www.mext.go.jp/content/20260729-mxt_shuukyo01-000027313_002.pdf

 17.2%から50%です。この数字を見ると、これから求められるのは、一部の詳しい先生がさらに高度な使い方をすることだけではありません。これまで生成AIをほとんど使ったことがない先生も含めて、より多くの先生が「自分の仕事のどこで使えるのか」を考えられるようになることが必要です。

 ただし、「50%が目標だから使いましょう」だけでは、なかなか広がらないでしょう。安心して使える環境があること。基本的なルールが分かること。身近な活用例を知ること。そして、使ってみて困ったときに相談できること。そうした条件があって、初めて「使ってみよう」と思えるのだと思います。

 17.2%という数字は、単に「まだ低い」というだけではありません。これから学校全体へ広げていくために、どこに課題があるのかを考えるための数字でもあるのではないでしょうか。


10 その先には、次期学習指導要領がある

 次期学習指導要領に向けた議論も進んでいます。令和8年7月30日の文部科学省「情報・技術WG取りまとめ(案)」では、小学校の総合的な学習の時間に「情報の領域(仮称)」を設けることや、中学校に「情報・技術科(仮称)」を創設することを前提に、具体的な学習内容や条件整備について検討が進められています。また、重点的な学習内容として、メディアリテラシー、AI、プログラミング的思考なども示されています。

【参考:文部科学省「情報・技術WG取りまとめ(案)について」】https://www.mext.go.jp/content/20260730-mxt_kyoiku01-000050649-3.pdf

 ただし、これは現時点では審議・検討中の内容であり、現在の学習指導要領として決定したものではありません。

 また、令和8年8月4日に示された最新のスケジュールイメージでは、小学校は2030年度から、中学校は2031年度から全面実施する想定となっています。高等学校は2032年度入学生から順次実施し、2034年度から全面実施する想定です。資料には、今後変更される可能性があることも明記されています。

【参考:文部科学省「学習指導要領等の改訂に関するスケジュール(イメージ)」】https://www.mext.go.jp/content/20260804-mxt_kyoiku01-000051425-27.pdf

 まだ数年あるようにも見えます。しかし、次期学習指導要領が始まってから初めてAIについて考えるのではなく、その前から教員自身が少しずつ理解を深めていく必要があるのではないでしょうか。

 子供たちにAIとの適切な向き合い方を教えるのであれば、教員自身にもAIを使った経験があった方がよいと思います。実際に使えば、便利なところだけではなく、もっともらしい間違いをすること、思ったような回答が返ってこないこと、人が判断しなければならないことも分かります。

 こうした感覚は、資料を読むだけではなかなか身に付きません。だからこそ、今のうちから教員自身が安全な範囲で小さく使い、学校として経験を積み重ねていくことが大切なのだと思います。


11 利用率を上げることが目的ではない

 ただし、17.2%を50%にすること自体が、学校教育の目的ではありません。これは、国が学校教育の情報化を進めるために設定した一つの指標です。

 学校には、生成AIを使わない方がよい場面もあると思います。子供がまず自分で考える場面、友達と対話しながら考えを深める場面、教師が目の前の子供の表情や言葉から支援を考える場面、時間をかけて悩みながら自分なりの表現をつくる場面などです。

 何でも生成AIに任せればよいわけではありません。大切なのは、「AIを使ったかどうか」ではなく、「なぜ、ここでAIを使うのか」を考えられることだと思います。

 使うことで仕事や学びがどうよくなるのか。人が考え、判断すべきところはどこなのか。逆に、この場面では使わない方がよいのではないか。生成AIを使わないという判断も、目的を考えた上での選択であれば、適切な向き合い方の一つです。

 だからこそ、まずは実際に使ってみて、その便利さと限界の両方を知ることが大切なのだと思います。


12 おわりに

 生成AIは、すでに多くの学校に入ってきています。しかし、それが学校全体の日常になるまでには、まだ時間がかかりそうです。

 大切なのは、使っていない先生に「もっと使いましょう」と求めることではなく、「これなら自分にも使えそう」と思える入口をつくることだと思います。安全に使えること、身近な仕事と結び付くこと、困ったときに相談できること。そうした小さな安心が、最初の一歩につながります。

 そして、使ってみる中で、「これは便利だった」「ここは人が確認した方がよい」「この場面では使わない方がよい」と、自分なりの感覚を持つことが大切です。生成AIを使うこと自体ではなく、どこで、何のために使うのかを考えられることが、これからの学校現場には必要なのだと思います。

 だからこそ、私自身もこれから、先生方に向けて生成AIについて発信していきたいと思っています。新しい機能を追いかけるだけではなく、校務や授業準備のどこで使えるのか、何に気を付ければよいのか、実際に使ってみてどうだったのか。できるだけ学校現場に近い形で伝えていきたいと思います。

 「これなら、自分にもできそう。」

 そう思える先生が一人でも増えるように。

 私自身も学び、試しながら、これからも学校現場で役立つ生成AIの活用について発信していきたいと思います。

 今後も授業改善や働き方改革に向けて、効果的な活用方法を模索していきたいと思います。

 子供たちの深い学びの実現、教員の働き方改革の推進に向けて、ともに頑張りましょう。

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