ダゲレオタイプ:銀板にとどめる風景
写真誕生200周年の2025年もあっという間に過ぎてしまい、気づけは201年目に入ってすでに4カ月あまり。個人的な事情で更新できていませんでしたが、今回は「ダゲレオタイプ」を取り上げたいと思います
■世界初の「実用的な写真技術」
ダゲレオタイプは、1939年にフランスのルイ・ジャック・マンデ・ダゲールによって発明された世界で最も古い「実用的な」写真技術です。前回取り上げた、ニエプスの「ヘリオグラフィ」は数時間にも及ぶ非常に長い露光時間が課題でしたが、ダゲレオタイプはそれを数十分から最終的に1~2分までに縮めることに成功し、ポートレートを中心に商業的にも大きな成功を収めました。(それには明るいレンズの開発も一躍買っています)
ダゲレオタイプは、銀板をヨウ素に反応させて感光材料とし、カメラに装填して撮影します。撮影後は水銀を用いて「現像」し、完成です。銀板に色が反転していないポジティブ画像が現れます。現代の写真フィルムで言えば、リバーサルフィルムのようなものですね。
■複製なしの「唯一無二」
ダゲレオタイプが目を引くのは、なんと言ってもその美しさでしょう。銀板に直接現れる画像は非常に高精細で、現代のデジタル写真にも引けを取りません。また、プリントして完成する写真フィルムとは違い、銀板そのものが写真であるため、唯一無二という点も特徴でしょう。
ただ、デメリット(?)もありました。1つは、複製が難しいこと。そしてもう1つは、画像が左右反転してしまうこと。
そのせいでしょうか。ダゲレオタイプの風景写真は、ポートレートに比べてあまり多く残っていません。ポートレートは左右反転しても、あまり気にする人がいなかったのでしょうね。鏡の中の自分を見ているのと同じですし、現代でも、自撮り写真を左右反対のまま撮影する人もいますしね。
■写真用カメラの発売
ダゲレオタイプが商業的に成功したことで、写真用のカメラも販売されるようになりました。世界で初めて市販のカメラを発売したのは、フランス・パリの高級家具メーカー「アルフォンス・ジルー商会(Alphonse Giroux & Cie)」です。ジルー商会はダゲールからライセンスを受け、1839年にダゲレオタイプ用のカメラ(通称、ジルー・ダゲレオタイプ)を発売しました。

ジルー・ダゲレオタイプはテイルボードタイプと呼ばれる木製カメラです。スライド式の焦点調整機構を持ち、後部に銀板を装填されたホルダーを取り付ける部分があります。露光時間が長いため、シャッターはありません。当時は、レンズキャップの開閉をシャッター代わりにしていました。
また、同時期にはドイツの光学機器メーカー・フォクトレンダー(Voigtländer)も高性能なダゲレオタイプ用カメラを発売しています。こちらは金属の筒のような形をしており、明るいペッツバールレンズが取り付けられていました。
ダゲレオタイプの成功はすなわち、カメラ市場の誕生につながったわけです。
