ヤクルトスワローズ得点期待値最大化のための打順シミュレーション
2026年のプロ野球が開幕して対戦カードが一回りしました。私が応援しているヤクルトスワローズは野球評論家の最下位予想を覆し、ここまで10勝4敗と良い戦いぶりを見せています。池山監督は日替わりで打順を組み、投手を8番に入れるなど、独特な発想で打順を組んでおり、それがここまでぴったりハマって、いい順位に着けています。そこで、これまでの今季打撃成績のデータを使って、データ分析に基づいてどのような打順を組めば、得点を最大化できるのかシミュレーションをやってみたいと思います。
〇前提
・使用するデータはNPBの公式サイトに掲載されている今シーズンのデータ(4/10時点)を使います。(https://npb.jp/bis/2026/stats/idb1_s.html)
・今回は分析をシンプル化するために、打撃成績だけを使って分析します。守備位置、守備指標や走塁面の成績は考慮しません。
・分析の流れは、まずStep1として打撃指標に基づいてスタメン野手8人+投手1人を選びます。次にStep2として、その9人の打順を入れ替えた打線、全部で9!通り(362,880通り)を試して、それぞれの打線で50試合をシミュレーションして、平均得点が最も高い打順を決めます。
・分析にあたってはpythonでプログラムを書いて計算を行います。
〇Step1:スタメン野手8人の選定
まずは得点期待値を最大化するためのスタメン野手8人を選びます。
選び方は打者が1打席あたりにどれだけチームの得点増加に貢献したかを総合的に評価するセイバーメトリクスの打撃指標wOBAを用いて、wOBAが高い8人を選定します。
wOBAの詳しい説明については以下URLを参照してください。
(https://1point02.jp/op/gnav/glossary/gls_explanation.aspx?eid=20040)
今シーズンの成績をもとにwOBAを計算するとトップ8は以下のようになりました。wOBAは0.330が平均的な打者で、0.370を超えてくると好打者となります。赤羽選手、増田選手、伊藤選手の数値が高く、得点に貢献していると言えます。
赤羽 0.432
増田 0.419
伊藤 0.367
サンタナ 0.315
長岡 0.308
オスナ 0.300
鈴木 0.273
武岡 0.268
スタメン出場の多い岩田選手や古賀選手が入っていませんが、彼らは守備での貢献・走塁・状況に応じたバッティングなどwOBAには反映されない部分での貢献が評価されてスタメンに入っている感じでしょうか。今回は攻撃特化型の打線ということで、上記8人+投手で打線を組んでいきます。
〇Step2:打順シミュレーション方法
・9人の打順を入れ替えた打線、全部で9!通り(362,880通り)の打順をモンテカルロシミュレーションという手法で分析します。
・打者が順番に打席に立ち、1イニングで3アウトになるまで攻撃します。攻撃は1試合9イニング。それを50試合分行って、その打順での1試合当たりの平均得点を算出します。
・投手は毎日違うので、シミュレーションでは打率1割で、10打席に1回単打を打つ選手という設定でいきます。
・それぞれの選手の実際の成績(四死球率、単打率、二塁打率、三塁打率、本塁打率)に基づいて、各打席でイベントが発生することとします。シミュレーションでは進塁打、盗塁、犠打/犠飛、エラーは起こりません。
・四死球の場合は「押し出し」のルールを忠実に再現しています。単打の場合は走者を1つずつ進塁、二塁打は走者を2つずつ進塁させる野球盤のようなルールで、ホームに帰ってきた走者の数を得点とします。(実際のプロ野球では、走者二塁の場面で単打を打つと得点するケースが多いですが、ここのルールでは走者二塁での単打は走者一・三塁になります)
〇打順シミュレーション結果
私のパソコンが18時間かけて、シミュレーションをしてくれました。シミュレーションの結果、以下の打順が最も得点期待値が高いという結果が出ました。得点期待値は5.12点です。守備位置についてはこのメンバーならこんな感じだろうなと私が振りました。
1番 赤羽(中)
2番 長岡(遊)
3番 武岡(三)
4番 伊藤(二)
5番 鈴木(捕)
6番 サンタナ(左)
7番 オスナ(一)
8番 増田(右)
9番 投手
平均得点 5.12点
〇考察
1. 「赤羽・長岡・武岡」による超・速攻シナリオ
最も注目すべきは、wOBA1位の赤羽選手が1番に座り、その後に長岡選手・武岡選手と「左の好打者」が続く点です。
・理由: 赤羽選手はwOBA(.432)が非常に高く、出塁率・長打率ともにチームトップです。彼が1番にいることで、試合開始直後にいきなり長打でチャンスを作る、あるいはホームランで1点先制する確率が最大化されています。
・点の取り方: 赤羽選手が出塁し、ミート力の高い長岡・武岡選手が高い確率で安打で繋ぐ。結果として、初回から相手投手に「クリーンアップ(伊藤・鈴木)をランナーを背負った状態で迎える」という重圧をかけ続けます。
2. 「期待の若手」と「実績の助っ人」による波状攻撃
4番の伊藤琉偉選手から、サンタナ・オスナ選手を6・7番に置くという、一見贅沢すぎる配置がこの打順のキモです。
・理由: wOBAで上位だった伊藤選手を4番に据えることで、上位で作ったチャンスを高い確率で得点に変えます。特筆すべきは、サンタナ選手とオスナ選手が下位(6・7番)に控えていることです。
・点の取り方: もし上位が倒れても、6番サンタナ、7番オスナという「相手からすればクリーンアップ級」の打者が現れます。これにより、「どこからでも点が取れる」「下位打線がチャンスを作って、8番の増田選手や1番の赤羽選手へ戻す」という、切れ目のないループ構造が完成しています。
3. 投手を9番に置く「伝統と合理性のハイブリッド」
投手を9番に置く結果が出たのは、8番の増田珠選手(wOBA .419)の存在が大きいです。
・理由: 増田選手はwOBA2位の超優良打者です。彼を8番に置くことで、「9番投手でアウトが1つ増えても、その前後に最強クラス(増田・赤羽)が配置されている」ため、打線が分断されにくくなっています。
・点の取り方: 相手投手が下位打線(6・7番)を警戒して四球を出した後に、勝負強い増田選手が長打を放つ。投手はバントや粘りで繋ぎ、再び最強の1番・赤羽選手へとバトンを渡す。この「8番最強説」に近い形が、平均得点を押し上げている要因です。
〇最後に
・今シーズンはまだ始まったばかりなので、打席のサンプル数が少なく、もっとデータが増えてこれば、またシミュレーションをやってみようと思います。(まだ出場機会が限られている田中選手や北村選手にも期待しています)
・今回は守備/走塁/打席での粘りでの貢献度が高い古賀選手や岩田選手がスタメンから漏れてしまいましたが、守備、走塁も含めた総合指標で分析できるといいなと思いました。
