北海道に行くことになったのでゴールデンカムイ舞台めぐりの旅
ひょんなことから北海道に行くことになったので、ゴールデンカムイを読み始めた。結果、すっかり夢中になってしまった。わたしは一度ハマるとしつこい。

通常は、マンガやアニメにはまる → 推しができる → 聖地・北海道で舞台めぐりをする。そんな感じなのだと思う。わたしの場合はまったく逆で、北海道に行くことになったので、ゴールデンカムイを読み始めた。
そんな「にわか」ゴールデンカムイ ファンのわたしが舞台めぐりをした。行ったのは、「硫黄山(アトサヌプリ)」「屈斜路湖」「阿寒湖」そして「網走監獄」
※この記事はそんな「にわか」ファンのわたしが辿ったゴールデンカムイの舞台の旅エッセイです。なるべく話の本筋には触れないように書いていますが、多少のネタバレを含むと思われます。それぞれの目次に目安の巻数を書いているので、見たいところだけをご覧ください。
北海道に行くことになったので
いきさつは、JALどこかにマイルの行き先がたまたま北海道になったから。
北海道の旅行プランを立てているときに、ちょいちょい目に入ってくるようになったのが「ゴールデンカムイ 」の存在。
ゴールデンカムイざっくりあらすじ
ゴールデンカムイのあらすじをざっくりいうと、明治時代、日露戦争後の北海道を舞台にしたマンガで、網走監獄に収容されているナゾの人物がどこかに隠した金塊をめぐる、元軍人の男(杉元佐一)とアイヌの少女(アシㇼパ)の宝探しの旅、というもの。
ただ、その「宝探し」の暗号が、網走監獄に収監されていた元囚人(脱獄犯)たちの肌に刺青で記されているっていうからややこしい。だって刺青が宝の地図になってるってことは、脱獄した元囚人に刺青を写させてもらうか、相手を倒してその皮を集めないといけないわけだから…。クセがすごすぎてヤバい囚人たちがすんなり刺青を写させてくれるわけはなく、そうこうしていたら宝を狙ういろんな男どもが入り乱れて金塊争奪戦の旅になる。って感じ。
う〜ん、ぜったいこわい展開になってそうだし、どうしようかな? と思って読むのを少し迷ってもいた。
出発直前までゴールデンカムイを読む
迷いながらも、でもやっぱり読んでおこう、と思って「ゴールデンカムイ」をちゃんと読み始めたのが旅に出る2日前くらいのこと。すっかり夢中になったけど、何かとバタバタしていてちゃんと読めず、出発当日の朝ギリギリまで読んでいた。(がんばったけど全部読めず途中まで)
明け方、深夜バイト明けの息子がひとり朝4時半に起きてゴールデンカムイを読んでいるわたしを見て驚いていた。
「まさかあんな出発ギリギリまで読んでるとは思わんかったわ」
いやこっちからしたら、出発ギリギリまで深夜バイト入れてるアナタにびっくりなんだけど。ま、どっちもどっちか。
聖地・北海道へ

さて、到着したのは女満別空港。レンタカーを借りて網走方面へ。途中、ご飯を食べた食堂で出されたホッケの塩焼きのトレイに網走刑務所と印字してあった。それを見て「網走に来たんだ!」と実感する。

こういうのを見てしまうと、いやがおうでも網走監獄への期待が高まるが、そこへは旅の3日目に行く予定にしていた。ゴールデンカムイでも「網走監獄」は前半の旅の「目的地」だった。旅の最終日のお楽しみだ。
インカラマッのハマナス(12巻)
ご飯を食べたら、オホーツク海に沿ってドライブ。はじめてみたオホーツク海。なんかしみじみ。

途中、とってもフォトジェニックな駅があったので立ち寄って写真を撮った。旅情にあふれてていい感じ。



植物の感じも少し違う。近くに、ハマナスが自生していた。

アイヌの女占い師インカラマッが海辺で摂っていた「ハマナス」の実。インカラマッがいうには、真っ赤に熟したものはそのまま食べれるのだそう。

アイヌでは夏の時期をマゥタチュプ「ハマナスを摂る月」というくらい重要なものらしい。とっても栄養があるので乾燥させて冬の間の保存食にするのだそうだ。
そしてこのあと、漁師にラッコをもらうインカラマッ。
ラッコ…!
そしてラッコはこのあと屈強な男どもの相撲シーンへとつながる。
硫黄山(アトゥサヌプリ)(12巻)
アイヌの言葉で裸の山という意味のアトゥサヌプリ・硫黄山。

元囚人の白石(シライシ)がいうには、アトゥサヌプリはかつては全道一の産出量だった硫黄鉱山で、硫黄は火薬などの原料として採掘される重要な資源だったそうだ。

しかし、絶えず吹き出すこの亜硫酸ガスが採掘者の健康に被害を及ぼし、明治29年には囚人の採掘が中止された。(シライシ談)

たしかに、すごい匂いが漂っていた。
硫黄が噴き出しているところは、「これも自然の色なんだ」とびっくりするくらいの鮮やかな黄色だった。ちょっとアイスランドの光景を思い出した。ビョークが歌っていそう。
ゴールデンカムイでは、この周辺に出没する盗賊たちの親玉が網走脱獄囚のひとりだったという設定。
硫黄が吹き出す場所があるってことは近くに温泉があるんだけど、ゴールデンカムイでも屈強な男どもがこの近くの温泉に入るシーンがある。そしてやたらとムキムキな男どもの入浴シーンが多い。ちょっとそのシーン、いる? っていうくらいに。温泉や、蒸し風呂など。そしてそのまま(裸のまま)戦闘シーンに突入したりする。
ゴールデンカムイのファンに女性のファンが多いのは、みんなむっちむちに屈強な男どもの姿を見たいのだろうか? 二次元で。
ところで先日、京都の「ゴールデンカムイ展」に行ったのだけど、来館者のほとんどが女性だった。そして、みんなむっちむちな男どもの入浴シーンパネルをきゃっきゃ言いながら撮影していた。(ま、そこはわたしもしっかり撮影したけどね)

「ゴールデンカムイ展」、尾形百之助の色紙配布の日に行ったからよけいかな、会場は女の子たちでいっぱいだった。
尾形百之助は、「NARUTO」に例えると「サスケ」みたいな冷血な抜け忍キャラ。兄弟の愛憎が絡んでいるところとかも。マンガのキャラをマンガで例えてすまない。
屈斜路湖(12巻〜13巻)
主人公の杉元とアシㇼパ一行は、屈斜路湖畔へ。そして我が家一行も。
屈斜路カルデラは、約13〜10万年前に怒った大噴火のより、カルデラの原型がデカがったとみられています。その中に位置する我が国最大級のカルデラ湖である屈斜路湖(面積約80㎢)、美幌峠や藻琴山(標高1000m)などが連なる雄大な外輪山、山麓にはイソツツジの大群落を擁する硫黄山(アトサヌプリ、標高580m)など見所も多く、また、川湯温泉をはじめ、二伏砂湯・池の湯・和琴などの温泉群を有しています。

美幌峠から眺めた屈斜路の素晴らしい光景。湖の中央に「中島」と呼ばれる島が見える。この光景の描写は、ゴールデンカムイ12巻にそっくりそのまま登場する。美幌峠には「ぐるっとパノラマ美幌峠」という道の駅もあって、美しい景色を眺めながら休憩ができるのがうれしい。
さて、物語では杉元一行が屈斜路湖畔の温泉へ。12巻では5人の屈強な男どものお決まりの入浴シーンがみひらきでしっかり描かれていた。なぜいつも裸? そしてなぜ全員がカメラ目線…?
さて、この屈斜路湖でインカラマッは「運命は変えられる」ことに気づく。わたしの大好きな場面。

阿寒湖(18巻)
阿寒湖。マンガでは、強運(凶運?)の持ち主・門倉(網走監獄元看守部長)や、牛山、土方歳三などの「いい味出してるキャラ」たちが活躍する場面が描かれる。門倉のちょっとしょぼくれたあの感じ、好きだなあ。
ちなみにわたしの友人は土方歳三推しだそうだ。土方歳三は渋好みの女子や新撰組ファンに大人気なんだとか。ほかにもゴールデンカムイは出てくるキャラクターがものすごく魅力的。

阿寒湖のホテルで飲んだビールには、主人公杉元とシライシ。わたしはお酒が好きだけどふだんはあえてお酒を飲まない「自称ソバーキュリアス」なんだけど、旅のときだけは飲むことにしている。


旅先で飲む限定ビールはさいこう。いつか札幌も行ってみたいなあ。舞台になったサッポロビール工場にも! そのときはソバーキュリアスだなんてカッコつけてないでガブガブ飲みたいよ。
網走監獄(13巻・14巻〜)
さて、とうとうやってきました! 網走監獄!

マスクをしている看守さん、と思ったらすごくよくできた人形だった。びっくりするやん、もう。
作品でもたびたび描かれているこの正門。そしてこれが正門を内側から見たところ。この屋根も、重要なシーンの舞台となっている。


監獄だと言われなければ、まるでレトロな結婚式の会場にでもなりそうな美しい庁舎。



回想シーンも含め、たくさんの名場面の舞台となった網走監獄。何といってもこの網走監獄をいちばんよく知る登場人物が、脱獄王の白石(シライシ)だ。

ゴールデンカムイのARスタンプラリーをやっていたので、もちろん参加。2023年3月までやっているらしい。それまでにまた北海道いけたらいいなあ。今度は小樽とか。札幌と函館も行きたい。

せっかくなのでシライシAR使ってみた。もうちょっと真ん中にすればよかった。「うまくいかんもんだな」(by 尾形)

そのシライシを始め、刺青を掘られた24人の元囚人が収容されていた「舎房」
あかりとりの天窓と鉄筋が美しい建物だった。

庁舎にはゴールデンカムイコーナーができていた。


は〜、大満足。
「網走監獄」は登録博物館なので、通信制大学で博物館学芸員資格を履修しているわたしにとっても、すごく興味深い場所だった。いろいろ感じたこともあったので、それは「博物館とゴールデンカムイ」というテーマで後日、別記事にしようと思う。(まだ書くことあるんかい)

ゴールデンカムイを文学的に考察
ところでわたしは文芸を学ぶ大学生でもあるので、ゴールデンカムイを文学的に考察してみた。ゴールデンカムイが入念なリサーチを基にものすごく精密につくられた上質なエンターテイメント作品であることはまちがいないのだが、もう一方でかなり重層的なテーマを持った「純文学」的な側面も持っているように思う。
作品では日本の西洋化・近代化がどんどん進む明治時代を舞台にしながら、アイヌの自然とカムイ(神)と共に生きる暮らしがしっかりと描かれている。登場人物たちは「金塊探し」や「上司の命令」などのもとで「合理的」に動いているようにみえて、時に合理的ではないとても人間くさい判断を下す。それがこの作品を「人間讃歌」といわしめているゆえんなのだろう。そういった意味で、この作品は近代を舞台にしながらも、ひじょうに「ポストモダン文学」的な作品であるといえる。
そして、どんなに残酷で救いがないようにみえても、そこにかならず小さな「希望」があるのが純文学でありポストモダン文学だ。
そういう意味では「尾形百之助」も、たくさんの寓意に満ちた純文学的なキャラクターであるといえる。(そう、すでにお気づきかと思いますが、わたしは「尾形」推しです。シライシも門倉元看守部長も好きなんだけどやっぱり)

ゴールデンカムイの魅力は「旅」にある
そしてなんといってもゴールデンカムイの魅力は旅にあると思う。魅力的な登場人物たちは、金塊探しのヒントを求めて小樽から網走に、北海道全域に、そして樺太にまで旅をする。
登場人物たちは、それぞれの思惑によって、それぞれのチームに分かれて旅をする。そしてときに敵と味方がともに旅をし、助けあう。いっしょに旅をするのは必ずしも味方同士という訳ではなく、たまたま目的地が同じだったり、利害が一致したり、じつは打算や裏切りが潜んでいることもある。そして話の展開によってはどんなに助けあった仲間であっても翌日には裏切ったり、戦うことになったりもする。
それでも旅をしていっしょに狩りをして、ごはんを食べている間は、彼らは仲間であり家族なのだ。
ゴールデンカムイではみんなでいっしょにごはんを食べている場面がたくさん出てくる。たとえあしたの敵になったとしても、チタタプ(魚や肉などを、軟骨や小骨や内臓ごとよく刃物で刻んで食べる、たたきみたいな食べ物)をいっしょに食べてヒンナヒンナ(食事に感謝する言葉)と言い合う。
わたしは常々、家族とは旅の途中でいっしょに同じ乗り物に乗り合わせたもの同士のようなものだと思っている。つかの間のひと時をいっしょに過ごし、ごはんを食べる。しばらくすると「わたしはじゃあ先に行くね」「わたしはこっちの道に行くね」と別れることもあるだろう。それでもいっしょに過ごした時間はかけがえのないものだ。そして別れてもまた、それぞれの道の先できっと会える。それが、家族だと思う。
旅は、家族そのものなのだ。
ゴールデンカムイで描かれるいくつもの旅は、だからこそ愛おしい。

北海道の自然
2泊3日の旅で、網走〜摩周湖、屈斜路湖、阿寒湖をぐるりとまわった。北海道在住のフォロワーさんによると、これはけっこうぎゅうぎゅうに詰め込んだスケジュールらしい。たしかに車での移動時間は長かった。はじめての北海道だから距離感が掴めてなくて、こんなプランになってしまった。こんなに広大な土地を、アシㇼパちゃんや杉元たちは旅をしたんだね。
特に阿寒湖〜摩周湖あたりの一帯はものすごく広い国立公園になっている。
北海道東部に位置する阿寒摩周国立公園は、北海道で最も歴史のある国立公園の一つです。公園区域の大半が亜寒帯性の針広混合林を中心とする天然林に被われ、国立公園の中でも原始的な姿を有しているといわれています。
わたしはこの旅で、たくさんの素晴らしい風景や、美しい森林、通りすがりのエゾジカにもたくさん出会えた。この広い素晴らしい天然林の土地を守ってくれてありがとう、と思った。

ゴールデンカムイを読んで、それがフィクションだと知りつつ、旅してきた北海道の大自然を振り返ってみても「なんかすごいマンガを読んだな」って思う。

北海道に来ることで、このマンガにであえて本当によかったなって思う。
やっぱり、旅はいいな。

参考文献
・野田サトル『ゴールデンカムイ 』集英社
・中川裕『アイヌ文化で読み解くゴールデンカムイ 』集英社、2019年
・札幌学院大学人文学部編『北海道と少数民族〈公開講座〉北海道文化論』札幌学院大学人部学部学会、1986年
・財団法人アイヌ民族博物館『アイヌ文化の基礎知識』草風館、1993年
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