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「まず現状分析」は、本当に最初ですか。

経営の話になると、よく聞く言葉があります。

「まずは現状分析をしましょう。」

SWOT分析。3C分析。ローカルベンチマーク。

どれも、大切な道具です。

でも私は、この言葉を聞くたびに、少しだけ立ち止まります。

本当に最初に必要なのは、「現状分析」なのでしょうか。

「分析」は、一つの動作ではない

「分析」という言葉を辞書で引くと、

「細かく分けて、調べること」

と出てきます。

つまり分析には、分けることと、調べることが含まれています。

「まず現状分析をしましょう。」

その一言の中で、

現状を把握し、

分け、

調べるところまでが、

ひとまとめにされているのです。

でも、本当に、最初から分けてよいのでしょうか。

分けるためには、名前が必要になる

分析するときには、現状をいくつかの項目に分けます。

顧客。

競合。

技術。

人材。

財務。

強み。

弱み。

分けることで、複雑に見えていたものは整理され、全体も見やすくなります。

ただ、何かを項目に分けるためには、そこに名前を付けなければなりません。

そう名付けて、初めて、表や枠の中に置くことができます。

分けることは、見やすくすることです。

でも同時に、分けなかったら見えていたものを、見えなくすることでもあります。

名前を付けた瞬間に、見え方が決まる

名前を付けると、私たちは、それをその名前として見始めます。

「これは強みである。」

と名付けると、

それを、強みとして見るようになります。

でも本当は、

まだ別の見え方が、あったかもしれません。

名前は、現状を整理してくれます。

その一方で、

まだ揺れていたはずのものを、一つの形に、固定してしまいます。

名前は、現状を整理するだけではありません。

そのあと、何を伸ばし、何を直すかという、未来の行動まで、静かに決め始めます。

「強み」は、何を指しているのか

「自社の強みを書いてください。」

と言われます。

でも、

「強みとは何ですか。」

と問われると、案外、答えに困ります。

高い技術があることなのか。

価格が安いことなのか。

納期を守れることなのか。

社長が強みだと思うものと、

社員が思うものは違います。

顧客から見れば、

さらに別のものかもしれません。

その状態のまま、

名前を付けて、

強みと弱みに分けていく。

それで本当に、

現状を分析したことになるのでしょうか。

特許では、曖昧なまま進めない

私は長く、特許の仕事をしてきました。

特許の世界では、

使う言葉の意味が曖昧なままだと、その先へ進めません。

「強固な」

「高性能な」

と書いただけでは、

何をもって強固なのか。

何と比べて高性能なのか。

と問われます。

言いたいことは、なんとなく分かる。

でも、

権利の範囲を定める言葉としては、それだけでは足りません。

私は、経営の言葉についても、少し似たことを感じます。

分析する前に、

そこで使っている言葉は、

本当に同じものを指しているのでしょうか。

分ける前に、そのまま見る

だから私は、

最初から分析しようとは思いません。

まず、現場へ行きます。

まだ十分に見ていないものを、

先に分けて、名前を付けてしまうのか。

そのまま受け取り、

少し輪郭が見えてから分けるのか。

同じフレームワークを使っても、

残るものは違ってくるはずです。

分析は、強い道具だから

私は、分析を否定したいわけではありません。

分析は、

複雑なものを見やすくする、とても強い道具です。

だからこそ、

使う順番を、大切にしたいと思っています。

「まず現状分析をしましょう。」

その言葉を聞くたびに、

私は少しだけ立ち止まります。

本当に最初に必要なのは、

分析ではなく、

まだ名前の付いていない現状を、そのまま見ることなのかもしれません。

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