言語化を仕事にしている私が、自分の仕事を言語化できていない理由
私は、言葉にすることを仕事の一部にしています。
技術を言葉にする。
発明を言葉にする。
会社の強みを言葉にする。
そういう仕事を長く続けてきました。
だからなのか、最近よく見かける「言語化」という言葉を聞くと、少し立ち止まることがあります。
もちろん、言語化は大切です。
考えていることを整理するためにも。
誰かと共有するためにも。
言葉にしなければ、伝わらないことはたくさんあります。
一方で、私は言葉にすることの難しさも知っています。
弁理士は、一語一句で勝負する仕事
特許の世界では、一語一句がとても重要です。
「支持する」と書くのか。
「保持する」と書くのか。
「含む」と書くのか。
「からなる」と書くのか。
日常会話であれば、どちらでも大きな問題はないかもしれません。
しかし、特許の世界では、その違いによって権利範囲が変わることがあります。
場合によっては、その言葉ひとつで守れるものが変わることすらあります。
だから私は、言葉を選ぶときに、
「この表現で本当に足りているのだろうか」
と考える癖があります。
言語化とは、きれいな言葉を見つけることではなく、
その言葉が本当に対象を表現できているのかを問い続けることでもある。
そんな感覚を持っています。
言葉にした瞬間に、こぼれ落ちるものがある
経営者とお話をしていると、
「うちの強みは品質です」
「うちは地域密着です」
「うちはお客様第一です」
という言葉を聞くことがあります。
もちろん、それらは間違いではありません。
でも、その言葉だけで説明できるほど、会社というものは単純ではないようにも思います。
なぜ品質なのか。
なぜそれを続けられているのか。
他社との違いは何なのか。
そこには、言葉になっていない背景があります。
私は、その背景の方に興味があります。
言葉になったものよりも、
その言葉にしたことで見えなくなったもの。
整理された言葉の裏側に残っているもの。
そちらを見に行きたくなります。
不思議なことに、自分の仕事が説明できない
ここで少し困ったことがあります。
私は、人の仕事や会社については、比較的整理して言葉にすることができます。
ところが、自分の仕事を説明しようとすると、少し止まってしまいます。
弁理士です。
中小企業診断士です。
知財の仕事をしています。
経営支援をしています。
どれも間違いではありません。
でも、どれもしっくり来ない。
何かが足りない気がします。
私は、特許を書くだけではありません。
経営計画を作るだけでもありません。
技術の話をしたり、
現場の話をしたり、
商品やサービスの話をしたり、
時には経営者自身の話を聞いたりします。
そうやって散らばったものを行ったり来たりしながら、
「この会社は、結局どこに向かおうとしているのだろう」
を考えています。
だから、まだ言葉を探している
最近は、「経営仕立て」という言葉を使っています。
会社ごとに異なる事情があり、
異なる強みがあり、
異なる歴史があります。
既製品のような答えを当てはめるのではなく、
その会社に合った形を一緒に探していく。
そんな意味を込めています。
ただ、この言葉も完成形ではありません。
使いながら、
「何かが少し違うな」
と思うこともあります。
そして、その違和感は案外大切なのかもしれません。
言葉にすることは大切です。
でも、言葉にした瞬間に、こぼれ落ちるものもある。
だから私は、
言葉にする。
そして、何がこぼれ落ちたのかを考える。
また言葉にしてみる。
そんなことを繰り返しています。
言語化を仕事の一部にしている私が、自分の仕事を言語化できていない理由は、案外そこにあるのかもしれません。
言葉を見つけたと思った瞬間に、
その言葉では表現しきれない何かが見えてしまう。
だから今日も、懲りずに言葉を探しています。
