部下の前でつい「昔はこうだった」と言ってしまうあなたへ
「声にならない言葉を対話で言語化する」を信条にコーチングのコーチとして活動しております。
「最近の若手は、こちらの意図を汲んでくれない…」
「自分が若かった頃は、もっと積極的に動いていたのに…」
リーダーとしてチームを率いる中で、部下との間に見えない壁を感じたり、自身の過去の成功体験に囚われてしまったりすることはありませんか?時代の変化と共に、働き方や価値観が多様化する現代において、過去のやり方が通用しなくなり、もどかしさを感じるのは、多くの管理職が直面する課題かもしれません。
しかし、そのもどかしさの根源は、本当に「部下」や「時代」だけにあるのでしょうか。もしかすると、私たちリーダー自身の「内なる変化」に気づかず、過去の自分という”物差し”で、現在を測ろうとしているのかもしれません。
この記事では、心理学の「メタ認知」と「自己受容」という概念を手がかりに、私たち自身の変化に気づき、過去の自分を「受け入れる」ための方法、そして、それをチームマネジメントに活かすための「愛に基づく問い」について考えていきます。
「昔の自分」という呪縛の正体
私たちは誰しも、経験を積み重ねる中で成長し、変化し続けています。20代の頃にがむしゃらに働いていた自分と、30代、40代になり、守るべきものや新たな責任を背負った自分とでは、価値観や仕事への向き合い方が変わって当然です。
しかし、私たちはしばしば、その「変化した自分」を無意識のうちに否定し、「昔はもっとできたはずだ」と過去の自分を理想化してしまうことがあります。これが、自分自身に向けられた「昔はこうだった」という呪縛の正体です。
この呪縛は、やがて他者、特に部下にも向けられます。「自分ができていたのだから、君もできるはずだ」という期待は、一見すると励ましのように聞こえるかもしれません。
しかし、それは相手の個性や背景を無視した、一方的な価値観の押し付けになってしまう危険性を孕んでいます。
もう一人の自分を、空から眺めてみる
この呪縛を解くための最初の鍵が、「メタ認知」です。メタ認知とは、自分自身の思考や感情、行動を、まるで「もう一人の自分が空から眺めている」かのように客観的に認識する能力のことです。
例えば、「なぜ今、自分は部下に対してイライラしているのだろう?」と一歩引いて考えてみる。
(事実)部下が、指示した通りに動いてくれなかった。
(感情)イライラする。がっかりした。
(思考)「なぜ言われたことすらできないんだ?」「自分の若い頃は…」
ここでメタ認知を働かせると、「ああ、自分は『指示したことは完璧にこなすべきだ』という自分の過去の価値観を、相手に押し付けようとしてイライラしているんだな」と、自分の思考の”癖”に気づくことができます。
この「気づき」こそが、変化への第一歩です。感情に飲み込まれるのではなく、自分の状態を冷静に把握することで、次にとるべき最適な行動を選択できるようになります。
過去の自分に「ありがとう」と声をかける
メタ認知によって自身の変化に気づいたら、次に取り組みたいのが「自己受容」です。これは、良い部分も悪い部分も含めて、ありのままの自分を受け入れる、ということです。
特に、過去の自分に対しては、批判的になりがちです。
「あの時の判断は間違っていた」
「もっとうまくやれたはずだ」
こうした過去の後悔や失敗は、消し去りたい記憶かもしれません。しかし、心理学のナラティブ・アプローチ(物語療法)の考え方では、過去の出来事そのものは変えられなくても、その「意味付け」は変えることができるとされています。
あの時の失敗があったからこそ、人の痛みがわかるようになった。
がむしゃらに働いた時期があったからこそ、今の自分の基盤がある。
このように、過去の自分を「未熟だった自分」として切り捨てるのではなく、「今の自分を形作ってくれた、かけがえのない存在」として捉え直すこと。それが自己受容に繋がります。それは、過去の自分との和解であり、今の自分を肯定するための大切なプロセスです。
リーダーのための「愛に基づく問い」
自己理解と自己受容が深まると、他者への眼差しも自然と変わってきます。それは、相手を自分の物差しで測るのではなく、相手の存在そのものを認め、その人なりの成長を信じて関わる「愛に基づく関わり」と言えるでしょう。
この関わりを実践するために、自分自身と部下に、次のような「問い」を投げかけてみませんか?
<自分自身への問い>
1年前の自分と比べて、今の自分はどんな点で成長しただろう?
最近、仕事で「面白い」「やりがいがある」と感じたのは、どんな瞬間だっただろう?
あの時の「失敗」があったからこそ、今の自分がある、と言える点は何だろう?
もし、今の自分が過去の悩んでいた自分に声をかけるなら、どんな言葉をかけるだろう?
<部下への愛に基づく問い>
(変化を認める)「〇〇さん、最近この部分がすごく伸びたよね。何か意識していることがあるの?」
(失敗から学ぶ)「この経験は悔しかったと思うけど、次に活かせるとしたらどんなことだろう?」
(存在を認める)「君がこれまで経験してきたことが、今の強みになっているんだね。」
(未来を拓く)「この仕事を通じて、半年後、どんな自分になっていたい?」
これらの問いには、相手を評価したり、コントロールしたりする意図はありません。ただ、相手の内にある変化に光を当て、その人自身の力で過去を受け入れ、未来へ進むことを信じる。そんなリーダーの姿勢が、部下の主体性を引き出し、信頼関係を育むのです。
変化することは、決して悪いことではありません。それは、あなたが様々な経験を乗り越え、成長してきた証です。過去の自分と和解し、今の自分を認め、そして未来へ向かって変化し続けていく。
リーダーであるあなた自身が、そのプロセスを体現することが、何よりも強く、温かいメッセージとしてチーム全体に伝わっていくはずです。
最後までお読みいただきありがとうございました!
もしよかったら、私と繋がっていただけませんか?
フォローお待ちしております。
