未来が不安になるからこそ、幸せの基準を変えよう
14年前22歳の時、少子化という問題と出会い、僕は大学の授業を受けながら背筋が凍るような気持ちになっていた。僕は建築という分野で生きていくものだと思っていたから、職業に絶望し、さらには年金など社会構造も大きく変わると予見したことから、まだ大学生ではあったものの、自分の人生は自分で作らなければならないと考えるようになっていた。
その頃に自分の中で作った「はだしのゲン理論」。
漫画はだしのゲンは60年前の第二次世界大戦中、広島に原子爆弾が落とされた時のことを題材にしている。その内容も貴重なものだが、僕が忘れられなかったのは、作中に出てくる主人公のゲンがお金持ちの家でバイトをした時の描写だ。
原爆で負傷した人の体を拭いたゲンに家の主人が3円を渡すとゲンの手が震え、その説明文として絵の横に「当時の3円は今の3,000円」と書かれていた。さらにはだしのゲンは今から45年も前に書かれた漫画だから、今でいえば30,000円くらいかもしれない。今の小学生が30,000円もらえば手が震えるような気もする...。
何が言いたいのかといえば、お金という物の価値は常に変化しているということだ。貯金をするとかお金についての投資をすること、まさにマネーゲームに何の信頼も持てなくなった時期でもあった。
この理論は僕の生活をも変えた。お金は使う物。特に自己投資として使う物に変わったし、使う時もしっかり自己投資になるか見極めてから使うようになった。さらに社会人になったらすぐに独立して自分で仕事を作るという選択肢しかないと思うようにもなった。
自分という人間のブランド価値を上げることで、何歳になってもその時代のお金の価値を得られる人間にならなければ生きていけないと思ったからだ。人生100歳時代、60歳に定年なんかしたらまだ40年もあるのだ。20歳から定年までの時間と同じだけの時間が...。
こんな風に僕は未来予測と共に自分の行動や哲学を自分の中で更新させ、違和感のないような生き方を選択してきた。漠然とした不安を持って生きるよりも、答えが間違っていても良いから、自分が今納得できる生き方を今も模索し続けている。
その中で、これは個人的な思考だけでなく、責任ある関係性にある家族にも伝えている考え方がある。それは
自分の幸せの基準を今よりも下げてほしい
ということだ。
例えば今、毎日お風呂に入れることが普通のことだとする。三食ご飯が食べられることや、温かい布団で眠れること、暑ければ冷房をつけ、寒ければ暖房をつける。自分にとって居心地の良い環境を作ることができるのが今の日本という国だ。
その幸せが当たり前に続くということを想定しないでほしいと家族に伝えているのだ。
何とも怖い話をしているのは分かっているが、僕はいつも思考の正常性バイアスを外すようにしている。
正常性バイアス
認知バイアスの一種。 社会心理学、災害心理学などで使用されている心理学用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のこと。
だから怖いことでも、想定できることから目をそらさないようにしてきた。
しかし、幸せの基準を下げるというのは、急に無理をしたり質素な生活をしてほしいという意味では決してない。そんなことをしても辛くなるだけだと思っている。
今できることは、自分の身の回りに、そして当たり前にあるような幸せを捕まえてその幸せを噛みしめたり、感謝の気持ちを持ったり、謙虚になること、そして家族や仲間を大切にすることがまずできることだと考えている。
そしてその中でお金や自分自身のスキルやコンテンツ、プロダクトを今の世の中で簡単に消費させず、温存したり成長させながら自己投資をしていくことができれば、自然と未来は明るいものになっていくと考えている。
未来に対して漠然とした不安を持っている人も多いと思う。不安だから自分を大きく見せてしまったり、何かに頼ろうとしてしまう気持ちも本当によく分かる。でも、実はそれは何の解決にもなっていない。
道端に生える花を見て感動したり、晴れた空を見て癒されたり、人と話すことや体を動かすことなど、お金をかけずともできる人間本来の喜びを意識してみるのはいかがだろうか。
竹鼻良文/TAKEHANAKE
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