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習作 三題噺『カガミさん』 2025/09/04 ②


『カガミさん』

ある日、少女がいつものようにお出かけしていると、どこか不思議な違和感をまとった男性を見つけた。男の姿が、どこかチグハグな気がしたのだ。
何気ない純粋な好奇心からか、あるいは感じた違和感の正体を求めてか、少女は男性に声をかけた。
「あなたはだあれ?」
「これは驚いた、お嬢さんには私の姿が見えるのかい?」
「もちろんよ、だってそこにいるじゃないの」
「なるほど、これは失礼した、私のことはそうだな、カガミさんとでも呼んでおくれ。」
「カガミさん?カガミさんはどうしてそんなにヘンなの?」
「おや、私が変かね?」
「ええ、どこがヘンかはわからないけれど、なんだかきもちわるいわ」
「なるほど、それは私が鏡の中の住人だからだろうね。身に着けているものがすべて反転しているから違和感があるのだろう。」
そう言って男はそっと腕時計を少女に差し出す。その腕時計は文字盤も、針の動きも、すべてが少女の知るものとは反転していた。
「あらほんとう、このとけいさかさまだわ!これじゃなんじかわからないじゃない!」
「はっはっは、我々からすればこの時計が普通なのさ。おっともうこんな時間か、すまないねお嬢さん。」
男性はおもむろに懐から付箋のような紙束を取り出し、一枚をちぎり取って口に含んだ。
「なにをたべているの?」
「これは風船切符だよ。こうして膨らませることで空を駆ける列車に乗ることができるのさ。」
男性が咀嚼していた切符をガムのように膨らませると、そのままふわりと空へ浮かんでいく。
「それではお嬢さん、これにて失礼するよ。君もそろそろ目覚める時間だからね。」
その言葉を聞くと同時に、少女はベッドで目を覚ました。
「ゆめのなかでだれかとおはなししてたような……」
そう呟きながら、少女はゆっくりと体を起こす。
「おなまえもわすれちゃったけど、またあいたいな」
少女の心に消えない足あとを残した男性は、彼女の目覚めを見届けた後、そっと鏡の中へと消えていった。


本日のお題

🍊第12回 3つのお題
🎈お題①:「鏡の中の住人」
🐾お題②:「風船切符」
⏳お題③:「消えない足あと」

【第12回】3つのお題に空想のひらめきを https://note.com/sane_seal1896/n/n48c5dc8b038a


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