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親が元気なうちに聞いておくべきお金の話——現役FPが本音で解説

「親が元気なうちに、お金のことを聞いておいた方がいい」

そう思いながら、結局何も聞けていない。そういう方は本当に多いです。

気まずい。縁起が悪い。何を聞けばいいかもわからない。気持ちはよくわかります。私もFPとして相談を受ける中で、「あのとき聞いておけば」という後悔を何十件も見てきました。

親が倒れた瞬間、通帳の場所もわからない。保険証券がどこにあるかもわからない。相続の話なんて一度もしたことがない。その状態で病院と役所と銀行を同時に回ることになる。

これは他人事ではありません。日本では年間約160万人が亡くなり、毎年約46兆円の財産が次の世代に移っています。2024年には亡くなった方の10人に1人が相続税の課税対象になりました。相続はもう、資産家だけの話ではないのです。

この記事では、親が元気なうちに「最低限これだけは確認しておきたいこと」を整理します。全部を一度に聞く必要はありません。できるところから、少しずつで大丈夫です。



1|なぜ「元気なうちに」なのか

理由はシンプルです。認知症になったら、本人の意思確認ができなくなるからです。

預金の引き出し、保険の名義変更、不動産の売却——どれも本人の判断能力がないとスムーズに進みません。「口座が凍結されて生活費が下ろせない」という事態は、相談の現場でも実際に起きています。

厚生労働省の推計では、65歳以上の約5人に1人が認知症またはその予備群とされています。「まだ大丈夫」と思っている間に、聞けるタイミングを逃してしまうケースは少なくありません。

元気なうちだからこそ、お互いに冷静に話せます。切羽詰まった状態で聞くのと、余裕があるうちに聞くのとでは、会話の質がまるで違います。


2|最低限、確認しておきたい7つのこと


全部を完璧に把握する必要はありません。まずは「どこに何があるか」の地図だけでも十分です。

預貯金と金融機関の情報

どの銀行に口座があるのか。通帳やキャッシュカードはどこに保管しているのか。ネットバンキングを使っているなら、IDやログイン方法のメモがあるかどうか。亡くなった後に口座の存在自体を見落とすケースは意外に多い。まずここから確認しておくと安心です。

保険の契約内容

生命保険、医療保険、がん保険、損害保険。契約者・被保険者・受取人が誰になっているか。保険証券の保管場所はどこか。保険は「入っていること」よりも「誰が受け取るか」が相続では重要になります。名義が古いままになっていることも多い。

不動産の情報

自宅の名義は誰か。登記簿や権利書はどこにあるか。住宅ローンが残っているかどうか。不動産は相続財産の中でも金額が大きく、分割しにくいため、事前に把握しておくだけで判断のしやすさが変わります。

年金の状況

公的年金の受給額はいくらか。企業年金や個人年金はあるか。年金は親の生活費の柱なので、万が一のときの生活設計にも直結します。

借入金や保証人の有無

住宅ローン以外にも、カードローンや知人への保証人になっていないか。負の遺産は相続放棄の判断にも関わるため、知らなかったでは済まないことがあります。「そんなものはないはず」と思っていても、聞いてみて初めて出てくることがあります。

証書類の保管場所

通帳、保険証券、登記簿、契約書、年金手帳。これらがバラバラに保管されていると、いざというときに探すだけで膨大な時間がかかります。できれば一か所にまとめてもらうだけでも、家族の負担は大幅に減ります。

本人の希望

介護が必要になったらどうしたいか。延命治療についてどう考えているか。葬儀の形式やお墓の希望はあるか。お金の話だけでなく、「どう生きたいか」を聞いておくことが、結果的に家族の迷いを減らします。これは数字では測れない、でも一番大切な確認かもしれません。


3|聞きにくいなら「ノート」を渡すという方法がある

面と向かって「お金のこと教えて」と聞くのは、やっぱり気が引ける。そういう方には、エンディングノートを渡すという方法があります。

エンディングノートは遺言書ではありません。法的効力はありませんが、本人の希望や情報を整理するためのツールとして非常に優秀です。市販のものでも、自治体が配布しているものでも構いません。

大事なのは、渡して終わりにしないこと。「一緒に見ようか」と声をかけるだけで、会話のきっかけになります。全部埋める必要はなく、書けるところだけでいい。それだけでも、いざというとき家族が助かる情報は格段に増えます。

FPとして相談を受ける中で感じるのは、ノートを書いた方の多くが「自分自身の人生を整理できた」と言うことです。家族のためだけでなく、本人にとっても意味のある作業になります。


4|相続で揉めるのは「お金持ちの家」だけではない

「うちは財産なんてないから大丈夫」という言葉を、何度聞いたかわかりません。

実際には、家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割の調停のうち、遺産額が5,000万円以下のケースが大半を占めています。揉めるのは資産家の家庭ではなく、ごく普通の家庭です。

自宅と預貯金しかない。不動産は分けられない。でも現金は少ない。こういう状況で「誰が家を相続するか」をめぐって兄弟間で話がこじれる、というのは典型的なパターンです。

事前に親の財産の全体像がわかっていれば、少なくとも「何をどう分けるか」の議論を冷静に始められます。揉めてから調べるのと、調べてから話すのとでは、結果がまるで違います。


5|知っておくだけで差がつく「5つの事前対策」

相続の事前対策には、大きく分けて5つの手段があります。どれが合うかは家族の状況によって変わりますが、「こういう選択肢がある」と知っておくだけで、動き出すタイミングを逃しにくくなります。

遺言書は、誰に何を残すかを明確にしておくことで、遺産分割協議そのものを省略できます。

任意後見制度は、認知症になったときに備えて、信頼できる人に財産管理を任せる制度です。

家族信託は、家族間で財産の管理・運用・承継を柔軟に設計できる仕組みです。認知症対策としても注目されています。

生前贈与は、生きているうちに財産を移すことで相続税の負担を減らせます。ただし2024年の税制改正で相続財産への加算期間が3年から7年に延長されたため、早めの設計が重要になっています。

生命保険は、法定相続人1人につき500万円の非課税枠があり、受取人を指定できます。「お金に名前をつける」手段として、相続対策の中では即効性が高い方法です。


6|最初の一歩は「雑談のついでに」でいい

この手の話は、正面から切り出すと構えられます。

お盆や正月の帰省のタイミングで、「最近、保険の見直しとかしてる?」くらいの温度で聞くのがちょうどいい。「相続の話をしよう」と言うと身構えますが、「通帳ってどこにあるんだっけ」なら自然に入れます。

一度に全部聞こうとしない。一回の帰省で一つか二つ確認できれば十分です。それを何度か重ねるうちに、親の方から「実はこういうのもあるんだけど」と話してくれることも多い。

FPとして一つだけ言えるのは、「聞いておけばよかった」と後悔する人はたくさんいますが、「聞いておいて損をした」という人には一度も会ったことがない、ということです。

「うちの場合は何から手をつけたらいいかわからない」という方は、一度FPに相談してみてください。家族構成と財産の概要がわかれば、優先順位を整理するだけでもかなり見通しが立ちます。


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筆者紹介
元・大手FP代理店/2級FP技能士・証券外務員二種。
資産形成・保険最小構成・住宅ローン設計を“数字で判断できる形”にするのが得意。
X:@takenouchiFP

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