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世界は日本をどう見ているかNo65

自尊史観を持って進むために~その49

イギリス
イザベラ・バード

「日本の社会秩序の基盤は従順さにあり、子供たちは家庭で絶対服従に慣れっこになっているので、教師が苦労せずとも静かにしており、よく話に聞き従っている。
 大人びた顔つきで教科書を見つめる子供たちの真剣さは痛々しいほどで、外国人が入って来るというめったにない出来事に対しても、よそ見ひとつしなかった。」

 イザベラ・バードは、明治初期に来日したイギリスの女性旅行作家です。
 当時女性の旅行作家は珍しかったものの、彼女は旅の行く先々で案内人を雇い入れ、精力的に日本中を歩き回りました。

 冒頭の言葉は、彼女が栃木県下の学校を訪れた時の授業風景の印象を述べたものです。
 イザベラは、日本の自然の美しさや人々の礼儀正しさなどを認めつつも、その観察眼には、日本は未だ半文明国であるという当時多くの西洋人が抱いていた偏見も内在していました。

 授業風景を見た感想も、一見して日本人の従順さと規律を重んじる集団行動を評価しているように思えますが、さもそのおかげで
   教師が苦労せずに教壇に立てる
とか
   授業を受ける子供の姿が痛々しい
などと述べるなど、日本の教育制度に対する批判ともとれるニュアンスの表現が含まれています。

 確かに日本の教育制度を省みる時、彼女の指摘は当たらずとも遠からずという思いにも至ります。

 日本の教育制度は
   ・高い学力水準
   ・集団生活で公共心を培う躾教育
   ・平等な義務教育
などを長所として挙げられる一方
   ・受動的な学習スタイル
   ・集団主義と規律の過度な重視
   ・問題解決能力の欠如
などが短所とする指摘もあります。

 ただ明治時代に入り、急速な欧米化に追随していくためには教育が重要であり、むしろ日本人の
   規律を重んじる集団性
が教育の現場においてもいかんなく発揮され、国家全体としての近代化に貢献しています。
 そして見逃してならないのは、既に江戸時代までに高い識字率が国民に備わっていたことです。
 当時西洋諸国でさえ識字率は半分以下でしたが、日本では武士階級はほぼ100パーセント、庶民でも70~80パーセントという高いものでした。

 また国民の旺盛な知識欲も見逃せない要素でしょう。
 江戸時代の本屋でさえ、和訳された外国の書籍が出回っていたことや、庶民が関心の高い時事ネタも「読売」という読み物で出回っており、もはや知識欲は日本人の民族性のひとつと言ってもいいでしょう。
 ちなみに読売新聞の社名は、江戸時代のこの「読売」つまり
   読むものを売る
という意味からきているようです。   

 日本が開国後急速に近代化できた背景には、この
   高い識字率と旺盛な知識欲
があったことと、個を犠牲にした集団主義と規律を重視した教育方針があったことは論を待たないのではないでしようか。

 現在の恵まれた環境からすれば、確かに明治初期の教育には、集団主義と規律の過度な重視という一面があったことも否めませんが、その延長線上に日本の現在の繁栄があることを思えば、全否定するわけにもいかないのではないでしょうか。
 一方、個を重視し、問題解決能力を重視した欧米の教育制度がその後世界にどういった影響をもたらしたでしょうか。
 世界に自らの正義を振りかざし、アジア・アフリカ諸国を庶民地支配で苦しめ、資本主義や共産主義の思想を全世界に波及させて覇権を奪い合おうとした彼らを育てあげた背景にも、教育があったはずです。

 日本の教育が、集団と規律を重視する傾向も、結局は
   和の精神
という稲づくり文化を基礎とするわが国の古代文化に辿りつきます。
 今世界に求められるのは、個を重視して他者を排除しようとする欧米的発想ではなく、調和を重視する「和」の精神ではないかと思います。

 ただ、今の日本人には、集団の協調性を保ちつつも、いかにグローバルな視点を持つ個の創造性を伸ばせるかということも求められていると思います。
 イザベラ・バードの鋭い視線は、そのことを現在の日本人に投げかけているような気がしないでもありません。

イザベラ・バード
1831~1904


 

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