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進捗を「タスクの個数」で測ると破綻する。作業に「金額」を貼るEVMの本質

「今週は予定していたタスク10個のうち、8個が終わりました!進捗80%で順調です!」

若手から進捗会議でメンバーからこんな元気な報告を受けると、頼もしいなと思う反面、ちょっと背筋が寒くなることはありませんか?

無事に8個終わったのは素晴らしい。でも、残っている「2個」のタスクって、もしかして他部署との調整が必要な超ヘビー級のタスクだったりしないか…。

案の定、翌週になってもその2個は終わらず、全体のスケジュールがズルズルと遅れていく。

またこのパターン・・・現場のリーダーやPMをやっていれば、直面するトラップですよね。

「タスクの消化数」だけで進捗を管理していると、こんな風に見えない爆弾を抱え込むことになりがちです。

なぜ、タスクを数えて進捗を測るとプロジェクトは破綻へ向かってしまうのか。
今回は、この「タスク数で測る進捗管理」の危うさを紐解き、すべての作業を「金額」という統一基準で測り直す、EVM(アーンド・バリュー・マネジメント)の本質についてお話ししていきます。

【この記事で学べること】
・タスクの消化数で進捗を測ってはいけない理由(ティッシュとピアノの罠)
・すべての作業に「金額(予算の重み)」を貼るというEVMのコアコンセプト
・PMの本当の役割は「現場監督」ではなく、利益を守る「投資マネージャー」であること


タスクの「個数」で測るから、現在地を見失う

「タスクが全部で10個あるから、1個終われば10%完了だな」

これ、Excelで引いたWBS(作業分解構成図)などで、無意識にやってしまいがちな計算です。表計算ソフトのデフォルト機能で進捗率を出すと、大抵はこのように単純な割り算になってしまいます。

でも、現実のプロジェクトにおいて、すべてのタスクが同じ重さ(労力やコスト)であることは絶対にありません。

極端な例で考えてみましょう。

あなたがオフィスの引っ越し作業を取り仕切っているとして、「ティッシュ箱を10個段ボールに詰めるタスク」「重たい複合機を1台、階段で運ぶタスク」があったとします。
ティッシュを10箱詰めて「よっしゃ、全体の90%終わった!進捗は順調だ!」と喜んでいたら、どうなるでしょうか。残された複合機1台を前にして、想定以上に人手も時間も足りないことに気づき、引っ越し業者の追加料金まで発生して絶望するはずです。

これは少々誇張した例ですが、ITの現場でも、これと同様のことが起きています。

「簡単な文言修正」も「他システムとの複雑なAPI連携テスト」も、タスク一覧の上では同じ「1行」として扱われてしまう。簡単なタスクから手をつけているうちは進捗グラフが綺麗に右肩上がりを描くため、誰も危険に気づけません。

そして終盤になって「重たいタスク」だけが残り、進捗がピタッと止まって炎上する。タスクの個数で現在地を測るやり方は、構造的に「見えない遅延」を隠蔽してしまう仕組みになっているわけです。

すべての作業に「金額のタグ」を貼るという発想

この「重さの違うタスク」をごまかしなく正確に測るためには、共通の「モノサシ」が必要です。それこそが、EVMの最大の特徴である「金額(予算)」への換算。

EVMの世界では、ティッシュを運ぶタスクには「500円」、複合機を運ぶタスクには「5万円」といったように、あらかじめすべての作業に対して「どれくらいのコスト(予算)がかかるか」という金額のタグをペタペタと貼っていきます。

そうすれば、ティッシュを10個運んだ時点での進捗は、「500円分(全体の約1%)が終わっただけ」だと誰もが冷静に判断できますよね。

ITプロジェクトに置き換えるなら、「API連携テスト」にはエンジニア2名が3日稼働するから「30万円」、「文言修正」は半日で終わるから「2万円」といった具合です。

工数(人日)やタスクの数ではなく、すべてを「金額」という揺るぎない指標で統一する。これが、プロジェクトの現在地をシビアに見つめるための第一歩となります。

金額に換算することのもう一つのメリットは、チーム全体に「コスト感覚」が芽生えることです。
「このタスクは30万円の予算がついているから、ダラダラやらずにしっかり終わらせよう」という意識が生まれますし、無駄なやり直しが発生したときも「これで5万円分の予算が吹き飛んだな」と、痛みをリアルに感じることができます。

作業を「金額」で測ることは、単なる管理手法を超えて、チームのマインドセットを変える強力なアプローチでもあるのです。

PMは「現場監督」ではなく「投資マネージャー」

なぜ、わざわざ「金額」で管理する必要があるのか。現場の感覚からすれば「工数(時間)で管理する方がピンとくる」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

実のところ、ここにPMという職種の役割に対する大きな誤解が隠れています。
PMの役割は、決められたスケジュール通りにメンバーの尻を叩いてタスクを消化させる、単なる「現場監督」ではありません。会社から何千万円、何億円という事業予算を預かり、それを正しく投下して価値(システムやサービス)を生み出す「投資マネージャー」の立場にあるのです。

「テストが遅れましたが、なんとか休日出勤と残業でカバーしてリリースに間に合わせました!」
現場としては「やり切った、頑張った」という空気になるかもしれません。しかし、経営層から見れば、予定外の残業代や外注費(超過コスト)が発生した時点で、そのプロジェクトの「利益」は大きく削られています。ビジネスとしては失敗に近い状態です。

進捗を金額で追うということは、常に「このプロジェクトは今、会社に利益をもたらしているか(構造的な赤字に陥っていないか)」をリアルタイムで監視しているのと同じこと。

ステークホルダーや役員との会議で、「タスクが3つ遅れています」と報告しても、「ふーん、急いでやってね」で終わってしまうことが多いですよね。しかし、「このままだと、予算を200万円オーバーして赤字になります」と金額で報告すれば、彼らの顔色は一変します。
ビジネスの世界では、誰もが「お金」の動きには敏感だからです。

私たちが守るべきは、ガントチャートの線ではなく、会社の利益。
タスクを数えるのをやめ、作業に「金額」を貼る視点を持つだけで、PMとしての視座は一段も二段も引き上がっていくはずです。

次回は、この「金額」のモノサシを使って、実際にプロジェクトの現在地をどう測るのか。EVMの基本となる3つの絶対指標(PV/AC/EV)について、さらに泥臭く解説していきます。「予算が余っているから順調」という致命的な勘違いの正体を暴いていきましょう。お楽しみに。

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