「豊臣兄弟」藤堂高虎役の佳久創さんと、和歌山と台湾の深い縁について
◆はじめに
本稿では、現在放映中のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟」に藤堂高虎役で出演中の日台ハーフの俳優・佳久創さん、藤堂高虎が築城に活躍した和歌山城、和歌山と台湾の間の不思議な縁についてお話ししてみようと思います。
◆佳久創さんとは
アクロスエンタテインメント公式サイト内プロフィール
佳久創さんは、1990年10月28日名古屋市生まれの35歳。
中学3年生からラグビーを始め、明治大学卒業後は社会人ラグビーの名門・トヨタ自動車に進みましたが、怪我がもとで2015年シーズン限りで現役を退きました。
ラグビー界からの引退後は活躍の場を俳優業に移し、日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」(TBS系)やスーパー戦隊シリーズ「王様戦隊キングオージャー」(テレビ朝日系)などが代表的な出演作品です。
NHK大河ドラマへの出演は、今回の「豊臣兄弟」で2作目。初出演となった「鎌倉殿の13人」(2022年)では武蔵坊弁慶を演じました。
◆お父様はプロ野球選手の郭源治さん
佳久創さんのお父様は、1980~90年代に中日ドラゴンズで投手として活躍した郭源治さん(注)。
1956年10月5日、台湾・台東市で先住民族・アミ族の家庭に生まれ、12歳の時にアメリカで開かれたリトルリーグ・ベースボール・ワールドシリーズで中華民国(台湾)代表として優勝を経験しました。
輔仁大学卒業後、中華民国陸軍で兵役中にロッテオリオンズ(当時)と中日ドラゴンズからオファーを受け、最終的に1981年シーズン途中にドラゴンズに入団。ドラゴンズが星野仙一政権下の1988年にリーグ優勝を果たした際は、胴上げ投手に輝いています。
1996年シーズン限りでドラゴンズを退団後は台湾に帰国。統一ライオンズで1年、中信ホエールズで2年プレーした後、1999年に引退。
引退後は指導者や解説者として活躍しているほか、一時期名古屋市内で台湾料理店を経営していたこともありました。
(注)帰化後の本名は佳久源治。

◆藤堂高虎が築いた和歌山城、和歌山と台湾の縁
佳久創さんが「豊臣兄弟」で演じる戦国武将・藤堂高虎(1556~1630)は、和歌山市との縁が深い武将の一人です。
高虎は黒田官兵衛(孝高)、加藤清正と並ぶ「築城三名人」と称され、数多くの築城の縄張りを担当、高石垣の技術に定評があり、層塔式天守を考案したことでも知られています。
1585年(天正13年)の紀州征伐に勝利した豊臣秀吉は、弟の秀長に紀伊・和泉を加増し、居城となる和歌山城の築城を命じました。
この際、普請奉行を務めたのが高虎でした。和歌山平野にある虎伏山という小山を利用し、紀ノ川を天然の堀として築城された和歌山城は、その後豊臣秀長、桑山氏、浅野氏、紀州徳川氏の居城として長く用いられました。
太平洋戦争時の和歌山大空襲で天守閣や櫓、門の多くを焼失していますが、現在も焼け残った岡口門や追廻門、復元された天守閣などの建築物がその威容を伝えています。


さて、和歌山城を築いた藤堂高虎を、父方のルーツが台湾という佳久創さんが演じるということを知った私は、台北市内に残る和歌山にゆかりの深いある建物のことを思い出しました。
「紀州庵文学森林」公式サイト
「みんなの台湾修学旅行ナビ」より
その建物とは「紀州庵文学森林」。
日本統治時代の1897年に西門町で料亭「紀州庵」を開いた和歌山県出身の平松徳松氏が、1917年に新店渓沿いの風光明媚な土地に建てた支店の離れを活用した、歴史と文学に関する展示・交流施設です。
戦後は大陸から渡ってきた公務員の官舎として使われた時期もありましたが、母屋は1990年代の火災で失われ、残った離れについても長年の放置により荒廃が進んでいる状況でした。
しかし、21世紀に入り台北市文化局や台湾大学の院生によるフィールドワーク調査の結果、この離れが持つ由緒に光が当たりました。なかでも、作家・王文興(1939~2023年)の旧居ならびに作品の舞台であったという点には大きな注目が集まり、離れとその敷地は文学に関する博物館や交流施設として修復のうえ保存・活用が図られることになりました。
そして、修復作業を終えた離れと、カフェや店舗が入った新館は2014年に「紀州庵文学森林」としてオープン。以来今日に至るまで、文学に関する講座や同人誌刊行、和歌山市との国際交流など幅広く活動を続けています。

広い庭には、和歌山市から送られた「吉宗桜」が植樹されています。


美しい姿に蘇った離れの大広間には、紀州手鞠も展示されていました。

余談ですが、「紀州庵」の創業者である平松徳松氏の一族は、戦後日本に引き揚げた後、和歌山市で「スーパーヒラマツ」を創業。
現在、同社は親会社の「オークワ」に吸収合併されましたが、同社から継承した一部店舗には今も「ヒラマツ」の屋号が残っています。
◆むすびに
今回の「豊臣兄弟」で台湾とゆかりの深い俳優さんが、台湾と縁の深い城下町の名城を築いた武将を演じるということは、おそらく台湾の戦国武将ファンの間でも話題になっているのではと思われます。
また、和歌山と台湾の交流促進に向けて活動されている「紀州庵文学森林」の関係者の方も、さぞ喜ばれているのではと思います。
歴史に詳しい人でなければピンと来ない話題かもしれませんが、佳久創さんが藤堂高虎を演じていることがきっかけになり、和歌山と台湾、日本と台湾の交流がさらに深まることを願って、結びとさせていただきます。
【参考サイト】フリー百科事典「ウィキペディア」
「みんなの台湾修学旅行ナビ」
