ジェイキャスエアウェイズの関空~米子線開設計画と、関空に乗り入れたYS-11の思い出
◆はじめに
今日は、来秋の就航を目指している関西国際空港拠点のリージョナルエアライン「ジェイキャスエアウェイズ」と同社が開設を計画している大阪~米子間の航空路線に因んだ小話をお届けします。
◆ジェイキャスエアウェイズの関空~米子線開設計画
ATR72-600型機(72席)を用いて、関西国際空港を拠点に2026年秋の路線就航を目指している「ジェイキャスエアウェイズ」ですが、まずは大阪(関西)~米子線と大阪(関西)~富山線の開設を計画しているとのことです。
いずれも、かつて関西国際空港の開港直後に大手航空会社が開設したものの、最終的に陸上交通機関との競合に敗れ短期間で撤退に追い込まれた歴史がある路線です。
本記事では、このうち大阪(関西)~米子線について、他の関西地方~山陰地方間の航空路線の状況にも触れつつ掘り下げていこうと思います。
◆以前あったJACの関空~米子線について
JAC(日本エアコミューター)は、関西国際空港開港翌年の1995年10月に大阪(関西)~米子線を開設しました。
親会社のJAS(日本エアシステム)(注1)から引き継いだ、従来の大阪(伊丹)~米子線の一部便を振り替える形での路線開設で、JACにとって初の関西国際空港発着路線となりました。
(注1)のちにJAL(日本航空)と経営統合
鳴り物入りでスタートした大阪(関西)~米子線ですが、注目すべき点はその使用機材でした。
山陰の商都・米子とアジアのハブ空港・関西国際空港を結ぶ期待の新路線に、同社が充当したのは日本航空機製造YS-11(64席)でした。
言わずと知れた戦後日本唯一の国産旅客機であるYS-11は、関西国際空港では珍しいプロペラ機の定期便(注2)ということで、ある意味異色の存在となっていました。



関西国際空港での国際線乗り継ぎの需要や、大阪府南部・和歌山県北部と山陰地方を結ぶ需要を見込んで就航したJACの大阪(関西)~米子線でしたが、思惑とは裏腹に客足が伸び悩んだようで、最終的に1996年12月を以て運休に追い込まれました。
残る大阪(伊丹)~米子線についてはしばらく運航が継続されましたが、高速バスや自家用車、鉄道との競合が激しさを増すなか、最終的にこちらも廃止という転帰を辿っています。
その後、2013~2015年にスカイマークが神戸~米子線に参入したことがあり、廉価な運賃設定で利用者に支持されましたが、こちらも同社の経営見直しの煽りで運休となり、現在は関西地区と米子空港を結ぶ空路は長く途絶えた状況が続いています。
【参考】鳥取県ホームページ
(注2)関西国際空港発着のプロペラ機による定期便としては、このほかJ-AIRの広島西線(1994年頃)、JACの徳島線(2000年夏ダイヤ)などもありましたが、いずれも短命に終わっています。このうち、JACの徳島線では、一部の便に米子線と同じYS-11が充当されていました。
また、ANAも2000年代後半の一時期ですが、関西国際空港発着の国内線の一部便(福岡線など)にDHC-8-Q400を投入していました。
◆関空~米子間航空路線の運賃・所要時間を想定する
JACの大阪(関西・伊丹)~米子線、スカイマークの神戸~米子線が姿を消した後、2019年冬ダイヤからはFDA(フジドリームエアラインズ)が神戸~出雲線に参入しましたが、こちらもコロナ禍による需要減の煽りを受け、2021年3月限りで撤退を余儀なくされました。
関西地方~山陰地方間の航空路線が苦境を強いられている最大の理由としては、鉄道や高速バス、自家用車といった他の交通機関との競合が挙げられます。
大阪~米子間の所要時間・運賃を比較してみると、
鉄道(山陽新幹線・特急「やくも」)利用の場合、
新大阪~米子間の所要時間は3時間20分程度(乗り換え時間含む)、
運賃は11,830円(特急料金は普通車通常期指定席)。
【参考】Yahoo!路線情報より


日本交通高速バス利用の場合、
大阪梅田(阪急三番街)~米子駅間の所要時間は3時間30分程度、
運賃は5,400円となっています。
【参考】日本交通公式ホームページ
https://www.nihonkotsu.co.jp/bus/highway/timetable/yonago-kobe_osaka.html
これに対し、仮に関西国際空港~米子空港間の航空路線が復活した場合、大阪難波から米子までの所要時間、運賃は以下のとおりになると想定されます。
南海難波→関西空港 37分 1,490円(特急「ラピートα」レギュラーシート利用 特急料金520円を含む)
↓
関西国際空港での搭乗手続 30分
↓
関西国際空港→米子空港 40分 8,500~14,000円
(ジェイキャスエアウェイズ利用)
※需要に応じた変動制運賃を採用
(出典:「読売新聞」2025年6月25日付)
↓
米子空港での乗り継ぎ 15分
↓
米子空港→米子 約30分 240円(境線利用)
640円(日の丸自動車連絡バス利用)
【合計】 2時間32分 12,300~18,200円
あくまで、南海難波駅へのアクセスや受託手荷物の手続きにかかる時間を考慮しなければの話ですが、航空機利用の場合、鉄道や高速バスを利用した場合より1時間近く短い所要時間で大阪~米子間を移動することが可能になります。
運賃についても、最安値で大阪(関西)~米子間のチケットを購入することができれば、現行の鉄道利用とそう変わらない金額に抑えることができる見込みです。また、南海難波~関西空港間で、特急「ラピートα・β」ではなく特別料金不要の空港急行を利用する方法もあります。
【参考】読売新聞(2025年6月25日付け)
◆関空~米子間航空路線の課題と可能性
大阪(関西)~米子間の航空路線復活にあたっては、課題となる点もあります。
その一つが、競合する交通機関と比べて運航便数が少ない点です。
大阪(関西)~米子線の便数は就航時点では1日1往復、就航半年後に1日2往復になる予定だとのことです。1日2往復あれば、関西側の利用者にとっても山陰側の利用者にとっても都合の良いダイヤ設定が可能になりますが、単純に本数だけを見れば鉄道(注3)や高速バス(注4)と比べて不利な面もあります。
(注3)伯備線の特急「やくも」は1日15往復運行
(注4)日本交通の大阪・神戸~米子線は1日最大20往復運行
このほか、米子空港から市内中心部へのアクセス手段としては、日の丸自動車が運行する米子鬼太郎空港連絡バスとJR境線がありますが、前者が航空機の発着に合わせたダイヤとなっているのに対し、後者は本数が1時間に1本程度と少なく、航空機の離発着を考慮したダイヤではないため、利用の際は注意が必要です。
【参考】米子空港駅米子方面行き時刻表
一方で、現在もJALが大阪(伊丹)~出雲線を4往復運航していることから分かるように、関西地方と山陰地方をどうしても急いで行き来しなければならない利用者のニーズは一定数あるのもまた事実です。
ジェイキャストエアウェイズの大阪(関西)~米子線にも、JALの大阪(伊丹)~出雲線が持つこうしたニーズに応える役割が期待されています。
加えて、関西国際空港には世界各地からの国際線が発着しており、山陰地方から関西国際空港経由で世界各地に向かう需要や、世界各国、特に近隣アジア諸国から山陰地方を目指すインバウンド旅行者の需要の獲得も見込まれているといいます。
素人の意見ですが、JAL運航の大阪(伊丹)~出雲線とジェイキャストエアウェイズ運航の大阪(関西)~米子線で相互にコードシェアを実施すれば、両社両路線の利用者にとって選択肢が広がり、ひいては知名度やロードファクターの向上にも繋がるので一考の余地があるのではというところです。

◆おわりに
関西国際空港を拠点とし、日本の地方空港を結ぶリージョナル航空会社として、今まさに産声を上げようとしている「ジェイキャスエアウェイズ」。
当面は、既存の交通機関との競合のなかでいかに棲み分けを図れるかが課題になると思いますが、就航地域との連携や積極的な営業施策などを通して潜在的な需要を拾い上げ、安定して持続可能な交通インフラを提供できる存在になることを期待して応援したいものです。
今後機会があれば、同社が開設を予定しているもう1つの路線である大阪(関西)~富山線を取り巻く状況についても考察してみようと思いますので、しばしお待ちのほどよろしくお願いします。
