【タイ】ホアヒンで見た“ゆったり老後ライフ”——ホテルに暮らすという選択肢(2025年11月/No.125)
老後の暮らし方には、もっと自由な選択肢があるのかもしれない。1|“老後の住まい”に固定観念はいらない
ホアヒン(Hua Hin/フアヒン)で過ごした数日間で、「老後の暮らし方はひとつではない」と感じる場面がいくつかあった。ビーチリゾートは開放的な時間をくれるけれど、それ以上に印象に残ったのは、そこに“ゆったり暮らす人たち”の姿だった。
老後=持ち家や施設、という発想だけではなく、もっと幅の広い生き方があるのかもしれないと思った。
2|“長期滞在組”も混ざるホアヒンのホテル
2018年の春、バンコク滞在のあと、約3時間かけて海辺の街ホアヒンに向かった。滞在中は、ビーチを歩いたり、プールで何もしない時間を楽しんだりと、リゾートらしい1日を過ごした。
そこで出会ったのが、イギリスから来て「ほぼホテルに住んでいる」という高齢の夫婦だった。毎日のようにホテル内の別々のレストランで食事を楽しみ、スタッフとも親しげに挨拶を交わしている。ときどきイギリスから子どもたちが会いに来て、一緒に滞在していくこともあるらしい。さらに、世界一周クルーズにも何度も乗っているそうで、「いろんな人と話せるから楽しいのよ」と笑う姿が印象的だった。
費用のことが頭をよぎったが、世界にはそれを気にせず、自分に合う場所を住まいに選ぶ人もいるのだと知った。ホアヒンのホテルには、短期の旅行者と“暮らすように滞在する人たち”が、自然に混ざり合っていた。
3|“ホテルを住まいにする”という社会的ヒント
ホテル暮らしと聞くと贅沢に思えるけれど、ホアヒンは物価や宿泊費がバンコクや日本より抑えられ、長期滞在のモデルとしても現実味がある。海外リタイア費用は地域で大きく差があり、タイ政府観光庁(TAT)でも長期滞在者が多い地域としてホアヒンが挙げられている。
リゾート地ならではの利点もある。
生活インフラが国際基準で整っている(医療・交通・語学)
スタッフとの自然な会話が、孤立の予防につながる
観光産業の中に“高齢者を受け入れる仕組み”が組み込まれている
もちろん、すべての人に合うわけではないし、費用や健康状態によって選択肢は変わる。でも、日本で老後の話になると「施設に入るか、自宅で暮らし続けるか」という二択で語られがちな気もする。そこに、リゾートホテルでゆるやかに暮らすという選択肢があってもいいのでは、とホアヒンで考えさせられた。
4|暮らし方の“幅”を持っておく
ホアヒンで出会った夫婦のように、人生の後半をゆっくり楽しむ方法は本当に多様だと思った。ホテルの庭を散歩し、スタッフと挨拶を交わし、ときには家族が訪ねてくる——そんな日常も悪くない。
短期滞在では何もしない時間が贅沢に感じるけれど、もし本当に毎日こんなふうに過ごしたら、自分はどんなリズムで暮らすのだろう。

「自分は老後をどんな場所で、どんな時間の使い方で過ごしたいのだろう?」
そんな大きな問いを、この旅で持ち帰った。