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音楽迷宮探遊記 23 炎

 もし「絶叫番付」を付けるなら西の横綱は、
「マチルダさーーんッ!」
 が譲らないだろうが、東の横綱はやはり、
「煉獄さーーんッ!」
 だろうか。僕の中では元横綱の、
「お前の血は何色だーーッ!」
 を引退(南斗部屋・水鳥親方)に追いやる程の絶叫だったと思う。

 そんな事より、重要なのはLiSAさんの歌う『炎』の方だった。
 僕らは惜しい人を失くし、あれから随分と時が経った訳だが。今更ながら僕は「鬼滅の刃・無限列車編」の楽曲『炎』を聴く事がある。
 『炎』のボーカルは低音からゆっくり展開する。LiSAさんは表現豊かに、内側に秘めた熱いものが静かに漏れ出すように歌う。これを聴いてると僕は、下の方からジワジワと、しかし確実に燃え広がる炎のイメージが湧いて来る。そんな落ち着いた歌いぶりで始まっても曲の後半は得意の高音でスパッと抜けるのが気持ち良く、素敵な歌声でハートを鷲掴みにされて卒倒しそうになる。万夫不当のボーカリストと言えよう。
 そんな風に僕は『炎』を楽しみながら、「きっとこの曲は炎について良く考えてる人が書いたんだろうな」なんて想像するのだった。
 それからと言うもの僕は『炎』を聴くと、あの最初の出だしの、

 トゥーン トゥーン トゥーン トゥーン

 の部分だけで涙腺が緩むようになった。もはや条件反射の世界である。もう始めの二秒で、窓を開け放って、
「煉獄さーーん!」
 と大空に声を届けたくなるのだった。

 ◯

「父さん、実はあの出だしのトゥーンだけで感動しちゃうんだ」 
 そううっかり息子に話してしまった。これは失敗だった。それから『炎』を聴く度に、息子はちょっと僕を小馬鹿にしたように、
「ねえ、パパ、感動した?」
 と薄笑いを浮かべるようになった。仕方ないので僕は、
「うん、感動した」
 と応えていた。
 それがあまりに頻回なもので、だんだん面倒になって、遂にはいつか貴乃花が優勝した時の小泉総理よろしく投げやりな、
「感動したっ!」
 を連発するようになってしまった。もー、あの時のトゥーンの感動を返せーッ!

 ◯

 ところで僕の誕生日って「岩柱」と同じなんでした・・・「炎柱」が良かったのにな。

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