僕の行きつけの飲食店11──飯田屋の「どぜう鍋」と下町の静けさ
浅草の路地に息づく老舗の風格
2018年3月。
春の陽ざしがやわらかく差し込む浅草の裏通りを歩いていた。
目的は、創業百年以上を誇る老舗「飯田屋」のどぜう鍋。
看板の「どぜう」という文字が、控えめながらも確かな存在感を放っていた。



のれんをくぐると、店内にはほんのりと甘辛いタレの香り。
昼下がりでも多くの客で賑わい、テーブルの上では小さな鍋が静かに湯気を上げていた。
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江戸の味──どぜう鍋との対面


運ばれてきた鍋の中には、小ぶりなどじょうがぎっしりと並ぶ。
店員さんが手際よく刻み葱をたっぷりとのせ、そこに熱気がふわっと立ちのぼる。
まさに“江戸の味”が立ち上がる瞬間だ。
味噌仕立ての出汁にどじょうの旨味が溶け込み、
葱の香りがそれをやわらかく包み込む。
少し泥臭さを想像していたが、驚くほど上品。
口に入れた瞬間、骨ごと煮込まれた身はほろりと崩れ、
まさに「これぞ老舗の仕事」と唸らされた。
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飯田屋という時間旅行
メニューを眺めると、「柳川鍋」や「ほねぬき鍋」、
さらに「どぜう丼」「うな重」まで揃い、
まるで明治・大正の料理帳を開いたような感覚に陥る。
現代の浅草には新しいカフェや観光客向けの食堂が並ぶが、
この店の空気だけはまったく時代が変わっていない。
畳敷きの空間、木のぬくもり、湯気の向こうに見える職人の姿──
すべてが「江戸から続く粋」を体現している。
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一杯の酒とともに
どぜう鍋には、やはり日本酒がよく合う。
熱燗を口に含むと、どぜうの旨味がより深く、
まるで川の流れのように体に染み込んでいく。
この瞬間だけは、浅草という観光地ではなく、
“江戸”という時代にタイムスリップしたような錯覚に陥った。
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終わりに──「粋」は残る
飯田屋のどぜう鍋は、ただの郷土料理ではなく、
江戸の人々の生活や文化を今に伝える“文化遺産”のような存在だと思う。
観光地の喧騒を離れ、路地を一本入った先にあるこの店で、
湯気の向こうにある“粋”を味わってみてほしい。
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🪧 店舗情報
どぜう飯田屋(浅草)
東京都台東区西浅草3丁目3-2
東京メトロ銀座線「田原町駅」徒歩約5分
営業時間:11:00〜21:00(L.O.20:30)
定休日:水曜日(※要確認)
