「何も起きなかった一日」が、航空整備士にとって最高の仕事である
飛行機が予定どおりに出発し、無事に目的地へ到着する。
お客様にとっては、ごく普通のことに見えるかもしれません。
しかし、航空整備の仕事に携わる者にとって、「何も起きなかった」という結果は、決して当たり前ではありません。
飛行機は、昨日問題なく飛んだからといって、今日も必ず同じ状態とは限りません。
そのため、何度も見ている場所でも、毎回自分の目で確認します。
「昨日は大丈夫だったから、今日も大丈夫だろう」
飛行機の世界では、こんな考え方は通用しません。
不具合があれば、そのままにしない
整備の現場では、無線を使って担当者同士が機体の状況をやり取りしています。
不具合が発生したときは、必要な確認を行います。
問題がないことを確認できれば、そのまま運航できると判断します。
確認できなければ、必要な処置を行うのか、修理するのか、それともMELを適用するのかを判断します。
MELとは、一定の条件と決められた処置を行うことで、安全に運航できるかを判断するための基準です。
決して「故障していても、そのまま飛ばしてよい」という意味ではありません。
分からないことがあれば確認する。
必要な処置があれば、確実に行う。
問題がないことを確認してから、飛行機を送り出す。
このような判断と確認の積み重ねによって、飛行機の安全は守られています。
飛行機本来の性能を発揮するために
飛行機は、膨大な数の部品によって構成されています。
不具合がないということは、それらの部品が設計どおりに働き、その飛行機が本来持っている性能を十分に発揮できるということです。
私は、それは本当に素晴らしいことだと、いつも思っています。
整備士の仕事は、何か特別なことを起こす仕事ではありません。
飛行機を安全な状態で送り出し、予定どおりに運航を終える。
その「何も起きなかった一日」を支える仕事です。
一つの確認、一つの判断、一つの処置。
それぞれは目立たないかもしれません。
しかし、その積み重ねが飛行機の安全につながっています。
飛行機が無事に出発し、目的地に到着する。
そして、お客様が安心して飛行機を降りていく。
私たち整備士にとって、「何も起きなかった一日」こそが、最高の結果なのです。
