開かずの赤ワイン
今朝はお盆の8月15日。
この話は昨日の出来事である。
夕方、娘家族が我が家を訪れた。
除雪王家の墓参りの帰りに、ついでに家の仏壇に手を合わせに来たのだ。
実際のところは墓じまいをしているので、納骨堂参りをしてくれたわけであるが。
順番では最初に仏になる生き仏の除雪王に手土産を携えて。
その手土産は赤ワインであった。
手土産もありがたいが、何より孫の顔を拝めるのはありがたい。
数年前までは「じ~ちゃ~ん」と、飛びついてきたものであるが、今はそっけない。
勿論、近頃は飛びつかれても受け止める自信はないが。
小学2年の孫は来ると必ず何か食べるものは無いかとおっしゃる。
除雪王が糖尿のため妻は好物の甘いものは概ね排除しているが故、除雪王家には孫の突然の訪問に応える菓子類がない。
おやつはないがアーモンド好きだからと、妻はアーモンドと冷たい牛乳を出した。
美味しそうに一粒ずつアーモンドを食べている。牛乳で流し込みながら。
夏は冷えたスイカかメロンを出し、麦茶だろ?手土産はスイカかビールだろ普通?なんて考えながら夕飯が楽しみになった。
夕飯には頂いた赤ワインを開けることにしようと思うと、笑みがこぼれた。
その表情を娘は見逃さなかった。多少勘違いしていたかもしれないが。
「お父さんに孫の顔も見せれたし、夕飯支度があるからそろそろ帰ろう。」と腰を上げた。
高1の孫娘も立ち上がった。妻の横に並ぶと、娘は言った。あれ背が伸びたね?おばあちゃんと同じぐらいになったのでは?
妻は小柄だ。そして孫娘はもっと小柄なのだ。しかし確かにしばらく見ないうちに背が伸びている。
確かに伸びているな?ひょっとしたら、ばあちゃん抜くかもな?と除雪王。
そして娘家族が去って行った。一瞬の賑わいの後、またいつもの静寂が戻った。
妻は夕飯の支度にとりかかった。
除雪王は今頂いたばかりの赤ワインをテーブルに並べた。
ワインを空気に触れさせるため抜栓しておこう。。。
あれ、いつものところにソムリエナイフが見当たらない。
それから捜すこと小一時間。狭い台所をくまなく。妻も料理の手を止め一緒に。
確か、1週間前に赤ワインを飲んだ時に使用したのが最期だ。
もう十数年使用しているソムリエナイフだ。それもたった今までいた娘が除雪王の誕生日プレゼントでくれたものだ。
結構高価なソムリエナイフである。大切に使用していたナイフである。
「千と千尋の神隠し」ならぬ、「栓が開かずの赤ワイン」ではないか。
まあ、諦めることにしよう。しぶしぶ食事を開始した。なんだか飲めないとなると余計にワインが恋しい。
とは言え実は昨日妻といつものラ・パラッツイーナで食事をし赤ワインを飲んできた。二日続けるのはよくない。昨夜は飲めない方がよかったのだ。
しかし、どこに行ってしまったのだ?あのソムリエナイフ。何本も何本も思い出のワインを抜栓してきたあのソムリエナイフ。
そして今日は15日。多分先祖が仏壇に帰って来ている。1日家にいよう。こんな日は家で静かにしていよう。
ただ今夜は折角頂いた赤ワインは飲みたい。
ドジャースとブリュワーズの試合をみてからソムリエナイフを買いに行こう。いつまでも過去のソムリエナイフにこだわってはいられない。
新しいソムリエナイフでまた新しい思い出のワインを抜栓してゆけばよいのだ。
まだまだ新しい思い出を作ってゆけば良いのだ。
ああ、そうそう、孫が好きなアーモンド、老人にも良いアーモンド、在庫が少なくなっているのでこれもついでに買ってこよう。いつ孫が来ても良いように。
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