加工度が高くて食べすぎやすい食品ほど危ない――健康の鍵は「一手間」にある
「簡単に食べられるものは、だいたい体に悪い」
少し乱暴な言い方ですが、日々の食生活を見直すうえでは、かなり使える感覚だと思っています。
もちろん、例外はあります。
バナナは皮をむけば食べられる。納豆も、豆腐も、ゆで卵も、無糖ヨーグルトも、缶詰のサバも、冷凍野菜も、かなり簡単に食べられます。これらまで「簡単だから悪い」と切り捨てるのは、さすがに雑です。
問題は、もっと別のところにあります。
袋を開けるだけで食べられる。
片手で食べられる。
噛む回数が少ない。
甘い、しょっぱい、脂っこい。
食べ始めると止まりにくい。
そして、食べ終わったあとに「ちゃんと食事をした」という感覚が残りにくい。
こういう食品が、現代の食生活にはあまりにも多いのです。
たとえば、菓子パン、スナック菓子、甘い飲み物、カップ麺、加工肉、コンビニの揚げ物、甘いシリアル、デザート系ヨーグルト、エナジーバー、冷凍ピザ、チルド惣菜など。
どれも便利です。
忙しいときには助かります。
疲れているときには、むしろ救いになることもあります。
だから、これらを完全に否定したいわけではありません。
ただ、こうした食品は「人間が食べすぎやすいように設計されている」面があります。甘味、塩味、脂質、香料、食感、やわらかさ、包装、手軽さ。いろいろな要素が組み合わさって、脳にとって非常に魅力的な食べ物になっています。
問題は、意志の弱さではありません。
環境の強さです。
目の前にある。
すぐ食べられる。
おいしい。
止まりにくい。
しかも安い。
この条件がそろった食べ物に、人間が毎回勝てると思う方が無理があります。
だから、食事を整えるときに大事なのは、根性論ではなく「一手間」を入れることです。
一手間といっても、凝った料理をしようという話ではありません。
野菜を洗う。
卵をゆでる。
魚の缶詰を皿に出す。
豆腐に薬味をのせる。
冷凍ブロッコリーを温める。
ご飯に納豆をかける。
味噌汁を足す。
カット野菜にツナをのせる。
ヨーグルトにナッツを入れる。
このくらいでいい。
大事なのは、食べ物が「商品」から「食事」に戻ることです。
袋から直接食べるものは、食事というより刺激に近い。
皿に出すだけでも、少しだけ食事になります。
そこにタンパク質や野菜を足すと、さらに食事らしくなります。
たとえば、カップ麺を食べるなら、卵と冷凍野菜を足す。
菓子パンだけで済ませそうなら、無糖ヨーグルトかゆで卵を足す。
おにぎりだけなら、サバ缶や味噌汁を足す。
コンビニ飯なら、唐揚げ単品ではなく、サラダ、豆腐、ゆで卵、味噌汁を組み合わせる。
完璧な自炊を目指す必要はありません。
「一手間で悪さを薄める」くらいで十分です。
健康的な食事というと、どうしても意識高く聞こえます。
玄米、オーガニック、無添加、手作り、発酵食品、地産地消。もちろん、それらも悪くありません。
でも、多くの人にとって本当に大切なのは、もっと地味なことです。
甘い飲み物を水やお茶に変える。
菓子パンを毎日の主食にしない。
袋菓子を袋のまま食べない。
毎食、タンパク質を何か一つ入れる。
野菜、海藻、きのこ、豆類を少し足す。
「すぐ食べられるもの」だけで一日を終えない。
この程度のことを続ける方が、極端な食事法よりずっと現実的です。
「簡単に食べられるものは、だいたい体に悪い」
この言葉は、科学的に厳密な表現ではありません。
でも、生活の中で使う警報としてはかなり優秀です。
正確に言えば、悪いのは「簡単さ」そのものではありません。
悪いのは、簡単で、濃くて、やわらかくて、止まりにくくて、食べても食事の満足感が残りにくいものです。
逆に、簡単でも体にいいものはあります。
納豆、卵、豆腐、魚の缶詰、無糖ヨーグルト、ナッツ、果物、冷凍野菜、具だくさん味噌汁。
だから目指すべきは、全部手作りの生活ではありません。
「開けるだけの食品」から、
「少しだけ整えて食べる食品」へ。
「刺激として食べる」から、
「食事として食べる」へ。
その小さな一手間が、食生活をかなり変えてくれます。
毎日完璧にやる必要はありません。
ただ、食べる前に一度だけ考える。
これは、袋を開けたらそのまま終わる食べ物か。
それとも、自分の体をつくる食事になるものか。
その問いを一つ挟むだけで、食べ方は少し変わります。
そして、食べ方が少し変わると、体は長い時間をかけて変わっていきます。
重要ポイントまとめ
* 加工度が高く、甘味・塩味・脂質が強くて食べやすい食品ほど、食べすぎを招きやすい。
* 食生活を改善するコツは根性ではなく、「卵を足す」「野菜を加える」などの小さな一手間を入れること。
* 袋のまま食べるよりも、皿に出してタンパク質や野菜を組み合わせることで「商品」が「食事」に変わる。
* 完璧な自炊を目指さず、甘い飲み物をお茶に変える、毎食タンパク質を入れるなど続けやすい工夫を優先する。
* 食べる前に「これは刺激として食べるものか、それとも体をつくる食事か」と一度考える習慣をつける。
