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デザインサイエンス(05: 環境)「07_都市と自然の境界線が消える未来」

このデザインサイエンスは、デザインを学ぶ学生たちに広い知識と広い視野を持ってもらうために開講したシリーズものです。詳しくは(00: イントロ)を参照ください。

本講義は「身体」「建築」「都市」「農業」「環境」「エネルギー」のカテゴリーに分けて、学生たちから特にリアクションの良かったトピックをランダムに投下しています。どこから読んでも楽しい構成にしていますので、気軽に興味のあるトピックからどうぞ!

 今回は「環境」です。

今回は「都市」について取り上げたいと思います。このデザインサイエンスに「都市」枠がありますが、ここはあえてこの「環境」という視点から都市を俯瞰します。

「都市」は「自然」と対比させて論じられることが多いものです。自然破壊や環境問題の根源は都市機能にあるという指摘は理解できますが、ここではちょっと違った視点でみなさんと一緒に都市について考えていきます。

 ・資源・素材を固定化する都市
「環境」としての「都市」を考える際、様々な視点が考えられます。循環(様々なエレメントのフロー)、エネルギー交換、熱交換、物質(有機物と無機物)、流通、成長・退廃などなど、様々な専門家がそれぞれの分野で沢山の考察を行っています。環境学に関する細かい専門分野はその道のエキスパートたちにお任せするとして、今回このデザインサイエンスでみなさんと取り上げたい視点は、もう少し大雑把ですが、俯瞰図として捉えやすい視点を紹介します。

都市が自然に対して悪者にされる理由のひとつとして「資源・素材の固定」が考えられます。自然界はゆるやかに呼吸し、多くの物質や生物が「生産者」「消費者」「分解者」となって循環しています。このような循環環境の中で順応や適応が行われ、常にゆるやかな最適化が更新されているという世界です。この自然界で行われている緩やかな最適化こそが、地球にフィードバックをもたらし、環境の維持や最適化がゆっくりと行われるという正義の世界です。

それに対して都市は膨大な資源や素材が集められ固定化され建物や道路となり、自然界のような循環が生まれにくい環境だと言えます。これが自然界と都市を大雑把に捉えた分かりやすい違いのひとつだと言えます。この都市が固定してしまっている全てのものが自然と相互に健全な循環関係 ( *1 ) にあれば都市はこれほど悪者にはされないでしょう。

もしかしたら、都市を構成している(固定化されている)資源・素材が全て循環できる未来がやってきたら、都市と自然の境界線はわからなくなり、都市は自然の一部として昇華することになるのではないでしょうか?

 ( *1 ) 都市が自然と相互に健全な循環関係:例えば、都市は化石燃料を自然界から取り込み、様々な産業を稼働させて温室効果ガスや廃液、化学薬品などを排出しますが、これは「健全な循環関係」とは言えません。しかし農作物を取り込み、排泄物を有機栄養素として自然界に還元できれば「健全な循環関係」の一部を構築できる可能性があります。

  ・都市資源
「都市鉱山」という言葉があります。これは、都市部にある家電製品やそれらの廃棄物などに含まれる金属資源を鉱山に例えたものです。特に希少金属(レアメタルや貴金属)の多くは都市部に流通しているため、この資源を有効利用しようとする動きが活発になっています。スマートフォンやコンピューターなどを廃棄する際、自治体や行政に廃棄手続きを行うよう推奨されているのも、このことと関係しているのです。

さて、都市に存在する「鉱物資源」の存在に気が付いた私たちは、次にその他の都市資源の中から価値のあるものを探したくなりますよね。都市は多くの素材で構成されていますので例を挙げると、例えば、土(粘土)、石、木、銅、鉄、アルミニウム、ガラス、コンクリート、プラスチック、ゴム、繊維などがあります。しかしそれらの多くは「都市資源」として「採掘」されずに廃棄されているものがほとんどです。もちろんこれらの素材の中で盛んにリサイクルやリユースの対象となっているものはありますが、まだまだ充分ではないことはみなさんも承知のことと思います。

 ・第一次資源サイクル
人類は起源より天然資源に触れ、その素材特性を学び、試行錯誤を繰り返しながら文明を発展させてきました。都市は、建物、道路、橋、移動体、家電などあらゆるもので構成されており、これらは自然環境から素材の選別、発掘、成分の分離や融合、精錬、加工することで、完成度を高めながら都市形成を行ってきました。

 ・第二次資源サイクル
都市を構成している様々な素材を「資源」と捉え直すことで生まれる創造行為を第二次資源サイクルと呼びます。これはすでに幾つか試みがあり、古紙、プラスチック、ペットボトル、ガラス瓶、アルミ缶などの再資源化(リサイクル)はみなさんも知っている通りです。

この分野はまだまだ開発途上にあり、今まで廃棄されていた「資源」を「発掘」した事例として、サーキュラーエコノミー(循環型経済)という仕組みがあります。これは、従来の「資源採掘」「製造」「廃棄」という直線型経済システムではなく、「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、循環させる経済の仕組みのことです。例えば、廃棄という手段でしか所有物を手放せないユーザーに対し、製造メーカー自身が、売った製品の回収をビジネスモデルに盛り込むことで、廃棄を回避することなどが取り組まれています。またオランダのMUD jeansは売ることによってゴミを生産することを避けるため、全てリースというサブスクリプション・モデルで世界中から注目を浴びています。

 ・固定された都市資源のサイクル
さて、少しずつ「固定化された都市素材」と「第二次資源サイクル」の話が出会いそうな予感がしてきましたね。

 コンクリートは都市を構成する素材の中でも最も量が多いもののひとつです。都市素材の半分以上がコンクリートだという試算もあります。そしてそのコンクリートの廃棄量は、日本国内だけでも年間3,500万トンもあると言われており、そのほとんどが産業廃棄物として処理されています。一部再利用されていますが、せいぜい砕いて道路建設の下地に利用される程度です。これは一度石化したコンクリートからセメントを取り出す技術には、まだまだ大きなエネルギーコストがかかるため実用化されておらず、粉砕しての再利用にとどまっています。

ただ、コンクリートを粉砕して再利用するというのは、「循環」という観点からすると、まだ都市に固定されていることと同義です。また将来安価なセメント分離技術の実用化に成功したとしても、そこでどのような副産物が生まれるのかも予測出来ていません。

このように都市資源が「循環」するためには、多くの課題が複合的に関係しているため、簡単には解決できません。しかしこのセメント分離技術やその再利用法などが確立すれば、突如としてコンクリートの廃墟が宝の山に代わるのです。今までゴミだった厄介ものは、技術革新によって宝にもなり得るのは面白いですよね。このような都市資源の可能性は今後さらにみなさんの世代によって開拓されるべき領域だと言えます。

図:技術革新によってこの瓦礫の山が宝の山に代わる可能性がある。

 こうやって「都市」が素材固定の場所ではなく、循環する場所になれば、都市と自然の境界線が消え、真の環境共存型の社会が完成するのかもしれません。この理想は高すぎるのかもしれませんが、デザインという職能はこのマンガのような思想でも、恥ずかしがらずに挑戦できるものだと信じています!

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