✏️ある体育教師の告白:うつ状態から復活した私の同僚の転機となった出来事:部活顧問の苦労半減のための法則⑤
「完璧な顧問」を目指した同僚
「西山先生、今日も練習ありますよね?」
「西山先生みたいなプレーヤーになりたいです!」
「西山先生のおかげで、バスケが好きになりました」
こんな生徒たちの言葉を聞くたび、彼は「もっと頑張らなければ」と自分を奮い立たせていました。
私は高校の数学教師として10年以上勤務していましたが、同じ職員室で机を並べていた西山先生(仮名)の姿を今でも鮮明に覚えています。彼が高校のバスケットボール部の顧問を任されたのは、教員3年目のことでした。体育教師として、自分が得意とする分野での指導に胸を躍らせていた彼の姿が印象的でした。
大学時代は準レギュラーとして全国大会も経験し、「バスケットで生徒を変えたい」「人生を教えたい」という情熱に満ちていた西山先生。朝練、放課後練習、休日練習...時間を惜しまず指導し、生徒たちも応えていました。
最初の1年は、チームも少しずつ強くなり、地区大会でベスト8に入ることができました。「これから先が楽しみだ」と彼は職員室でよく話していました。
当時の西山先生は、こんなことをよく口にしていました:
「教師とは生徒のために全力を尽くすべき存在だ」
「休みたいと思うのは、情熱が足りないからだ」
「結果を出せるかどうかは、努力次第だ」
今思えば、彼が自分に課した「あるべき姿」が、彼を追い詰めていったのでしょう。数学教師だった私には、その兆候が少しずつ見えていました。
崩れ始めた同僚の心と体
教師4年目、顧問2年目の冬頃から、西山先生に変化が現れ始めました。
「おはよう」と声をかけても、いつもの明るい返事が返ってこない。無理に笑顔を作っている感じが、同じ職員室の私には分かりました。
「最近、朝起きるのがつらくて...」と彼がポツリと漏らした言葉が気になり、様子を見るようになりました。
ある日、バスケ部の練習を見学に行った際、彼が生徒のミスに対して過剰に反応する場面を目にしました。「何度言ったら分かるんだ!」と声を荒げる西山先生の姿は、それまで見たことのないものでした。
職員室では、夜遅くまで残り、練習メニューを考え込む彼の姿が日常になっていました。「西山先生、もう遅いよ」と声をかけても、「あと少しだけ」と帰ろうとしない。
ある日の昼休み。同僚が「西山先生、最近痩せました?」と声をかけた時、私も気づきました。確かに彼は知らず知らずのうちに5キロも体重が減っていたのです。
それでも「もっと頑張れば乗り越えられる」と言い続け、さらに自分を追い込む西山先生。土日返上で指導し、夜遅くまで練習メニューを考え、生徒一人ひとりの課題を克服するための個別指導案を作る...。
数学教師だった私は計算が得意です。彼の睡眠時間は確実に4時間を切っていると推測しました。
底に落ちた朝
そして迎えた西山先生の教師5年目の6月のある朝。
いつもなら職員朝礼の10分前には必ず来ている彼の姿がありません。「珍しいな」と思っていると、教頭先生から「西山先生、今日は体調不良で休み」との連絡がありました。
翌日も、そして翌々日も彼は休みました。心配になって電話をすると、かすれた声で「ちょっと体調を崩しているだけ」と言うのですが、明らかに様子がおかしい。
数日後、西山先生から職員全員にメールが届きました:「適応障害からうつ状態に移行していると診断されました。2週間ほど休職することになりました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
職員室には重い空気が流れました。特に部活動顧問を担当する教師たちの表情は曇っていました。「あれだけ頑張っていた西山先生が...」「自分も似たような状況かも...」という声が聞こえてきました。
転機となった生徒からの一通のメール
休職して3日目、バスケ部のキャプテンが職員室に訪ねてきました。
「先生、西山先生のことで相談があります」
彼はバスケ部全員で西山先生にメールを送りたいと言いました。「先生は数学の先生だけど、西山先生の友達だから相談しました」と。
私は「それはきっと西山先生の力になるよ」と背中を押しました。
その翌日、西山先生から一通のメールが私宛に届きました。
バスケ部の生徒たちからメールをもらいました。
「チームは一人じゃない」... 私が彼らに教えていた言葉です。
なのに自分は一人で抱え込もうとしていました。
生徒たちに気づかされました。ありがとう。さらに彼は生徒たちからのメールも転送してくれました:
西山先生、体調はどうですか?
僕たちは先生に心配かけて申し訳ないと思っています。
実は最近、先生が苦しそうなのをみんな気づいていました。
でも、言い出せなくて...。
先生がいつも言っていた「チームは一人じゃない」って言葉、
今こそ先生自身に届けたいです。
僕たちも頑張るので、先生はゆっくり休んでください。
バスケ部一同よりこの生徒たちのメールを見て、私も胸が熱くなりました。生徒たちの方が、私たち教師よりも西山先生の変化に敏感だったのです。
「チームは一人じゃない」を実践した回復への道
休職期間中、私は週に一度、西山先生の自宅を訪ねるようにしました。最初は「迷惑をかけて申し訳ない」と言っていた彼でしたが、徐々に本音を話してくれるようになりました。
「僕は『チームは一人じゃない』と生徒に教えながら、自分自身は完全に一人で抱え込もうとしていた」 「生徒のために無理をすることが、実は生徒のためになっていなかった」 「バスケは5人でプレーするのに、部活運営は一人でやろうとしていた」
彼の気づきは、私自身の教師としての在り方も見つめ直すきっかけになりました。私も数学科の仕事を一人で抱え込みがちだったからです。
西山先生が休職から復帰した時、彼は大きく変わっていました。
まず行ったのは、同僚の体育教師に協力を求めることでした。「週に1回、練習を見てもらえないか」と。彼のプライドを知る私は、この一歩がどれほど勇気のいることか理解していました。
次に、部活運営の一部を生徒たちに任せるようになりました。キャプテンを中心に、練習メニューの一部を考えさせる試みです。「以前の私なら絶対に許せなかった『不完全さ』を受け入れられるようになった」と彼は語っていました。
さらに、これまで距離を置いていた学校のカウンセラーにも定期的に相談するようになりました。「教師だからこそ、専門家の力を借りることの大切さを生徒に示したい」と。
うつから回復した先にある「新しい教師像」
西山先生が休職してから約1年後、バスケ部は県大会ベスト4という、学校史上最高の成績を収めました。皮肉なことに、彼が「一人で全てをやろう」としていた時期よりも、「チーム全体の力」を信じるようになってからの方が、はるかに良い結果が出たのです。
職員室での彼の変化も顕著でした:
定時で帰る日を週に1日は必ず作るようになった
「完璧にできなくて申し訳ない」という言葉が減った
他の教師に助けを求めることに抵抗がなくなった
生徒の失敗に対しても、以前より温かい目で見るようになった
そして何より、生徒たちとの関係がより深く、より本質的なものになりました。西山先生のうつ状態と回復のプロセスを近くで見てきた生徒たちは、「完璧ではない大人の姿」「困難を乗り越える過程」を学んだのです。結果的に、彼の教育者としての信頼性はむしろ高まりました。
元数学教師として私が学んだこと
西山先生の経験から、私自身も多くのことを学びました。数学と体育という異なる教科を担当していても、教師として抱える悩みや負担の本質は同じだったのです。
私も「良い教師」「良い顧問」であるために、無理をしてきた一人でした。西山先生の姿を通して、自分自身の働き方も見直すきっかけになりました。
教師を辞めた今、私が強く伝えたいのは以下のことです:
「教師である前に、一人の人間である」ということ
生徒のために自分を犠牲にすることが、必ずしも生徒のためにならないという逆説
「一人で頑張る」よりも「チームで支え合う」ことの大切さ
この経験から得た学びと、10年以上の教師生活で蓄積した知恵を元に、私は「部活動顧問の精神的負担を劇的に減らす7つの法則」をまとめました。これは西山先生のような状況に陥らないための、あるいはそこから回復するための具体的な方法論です。
有料記事「【緊急指南書】部活動顧問の苦労を半減させる7つの法則」では、以下のような内容を詳しくお伝えしています:
西山先生のような状況に陥らないための予防法
既にバーンアウト寸前の先生のための「緊急回復マニュアル」
「教師のメンタルを守る5分間リセット術」
部活動顧問としての負担を劇的に軽減する7つの法則
西山先生のような優秀な教師がうつ状態に陥る前に、あるいはそこから回復するために、私の経験が少しでもお役に立てれば幸いです。
あなたへのメッセージ:同僚の変化に気づいていますか?
西山先生のケースを振り返って、私が最も後悔しているのは「もっと早く気づけなかったか」ということです。毎日顔を合わせていながら、彼の心の叫びに気づくのが遅すぎました。
もし今、あなたの周りに「西山先生」のような同僚がいるなら、ぜひ声をかけてみてください。「最近どう?」という何気ない一言が、大きな支えになることもあります。
そして、もしあなた自身が「もう限界かもしれない」と感じているなら、それは弱さではなく、大切なサインです。西山先生のように「一人で抱え込まない」勇気を持ってください。
教師という仕事は、間違いなく価値のある、素晴らしい仕事です。だからこそ、長く続けられるよう、自分自身と同僚を大切にしてください。
あなたは一人じゃありません。
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