【第4話】“感じる力”を見える化する——内受容感覚の評価法を科学と臨床から読み解く——
【内受容感覚】【シリーズ連載】【評価】
はじめに
「なんかしんどい」「モヤモヤする」「調子が悪い気がする」——
そうした言葉に出せない不調の背景には、「身体の中の感覚=内受容感覚」が関係していることがあります。
私たちは、空腹や心臓の鼓動、喉の渇き、筋肉の張りなど、身体内部からの信号を絶えず受け取っています。ところが、この感覚に気づく力は人によって大きく異なります。
では、その「内受容感覚」を評価するにはどうすればよいのでしょうか?
本記事では、研究や国際論文でも使用されている評価法をもとに、3つの側面——強度・感受性・気づき——から整理します。
評価法は、正しく選び、解釈することで「支援への道しるべ」となります。
評価そのものが目的ではなく、「理解」と「変化」のための出発点。
あなたが支援者でも当事者でも、必ずヒントになる内容をお届けします。
■ 強度の評価
定義:身体内からの感覚そのものの“強さ”をどれだけ感じているか。
代表例:脈がドクドクする/お腹が痛くて丸まるなど。
代表的評価法:
BPQ(Body Perception Questionnaire)
Cameron, 2001 → 日常で感じる身体感覚の頻度と強さを評価。主
観的評価の代表的スケール。
ビジュアルアナログスケール(VAS)
0〜10の線上で「まったく感じない〜非常に強く感じる」まで主観
的に印をつけるシンプルな方法。感覚の“瞬間的強さ”を捉えるのに
有用。
■ 感受性の評価
定義:身体の変化に気づける能力、つまり「気づけるかどうか」その
もの。
代表例:脈が少し速くなった気がする/胃のむかつきに初期段階で気
づける、など。
代表的評価法:
Heartbeat Detection Task(Schandry法)
Schandry, 1981 → 実際の心拍と自己申告の心拍数の一致を調べ、
内受容感覚の鋭敏さを客観評価。
Respiratory Interoceptive Accuracy Task
Paulus & Stein, 2010 → 呼吸の自覚と客観的呼吸数の一致から感受
性を分析。
■ 気づきの評価
定義:感覚を“自覚”し、言語化・判断できる力。
代表例:「不安で胸が苦しい」と認識して言葉にできる。
代表的評価法:
MAIA(Multidimensional Assessment of Interoceptive
Awareness)
Mehling et al., 2012 → 気づき、行動、自己調整、感情との関連な
どを8領域に分けて測定。慢性痛・心身症に
おいて広く用いられる。
有料部分の内容(要約)
評価尺度の選び方・注意点(目的・対象別)
評価から読み取れる「感覚タイプ別分類」と特徴
自記式が使えない方への観察・ナラティブ評価の考え方
実際の研究や臨床応用例に基づく「活かし方」
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評価尺度の「機能と違い」を理解する
評価法には「目的に応じた使い分け」が必要です。以下に代表的な評価法とその特徴を整理します。

→ ポイント:使用する対象者(小児・高齢者・精神疾患など)に応じ
て可否判断が必要。
評価から見えてくる「感覚タイプ」
評価スコアや観察から、以下のようなタイプ分類が可能です:

→ 補足:この分類は臨床的仮説にすぎませんが、支援方略の見立てに
有効。
評価が困難な人へのアプローチ:観察とナラティブ
認知的に自己記入が困難な方への評価は、「観察+ナラティブ」で行います。
観察対象:表情・姿勢・反応・睡眠・食欲・衛生行動
ナラティブ:本人の言葉・周囲の語り・変化のタイミング
視点:発汗・顔色・動作・声のトーンなど、感覚的サインを丁寧に 拾う
→ 補足:「評価できない」のではなく、「評価の仕方を変える」ことが重要。
まとめ
評価は「使い方」が命:測ることではなく“何に気づくか”が大切
感覚特性のタイプ分類で、支援の方向性が見えてくる
数値化が困難な人には「観察・語り・背景」でアプローチを
次回予告【第5話】
“感じる力”を育てる
——内受容感覚への支援(強度・感受性・気づきへの直接・間接的アプローチ)——
評価をどう活かすか?
リハビリや教育の場で実際に使える支援法を、根拠と実例をもとにご紹介します。
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参考文献(原著+要約)
1. Mehling, W. E., et al. (2012). The MAIA scale. PLoS ONE.
→ 内受容感覚の8側面を測定。慢性痛・トラウマ研究で広く使用。
2. Cameron, O. G. (2001). Interoception. Psychosomatic Medicine.
→ 身体感覚の中心的役割を解説。BPQの理論基盤を提供。
3. Schandry, R. (1981). Heartbeat perception. Psychophysiology.
→ 感受性の客観的評価法として確立。心拍と自己感覚の一致度測定。
4. Porges, S. W. (1993). The Polyvagal Theory. Integrative Physiological and Behavioral Science.
→ 自律神経と内受容感覚との関連理論を提示。
5. Labus, J. S., et al. (2004). Visceral Sensitivity Index. Neurogastroenterology & Motility.
→ IBS患者の感覚過敏と不安関連反応を測定。
6. Paulus, M. P., & Stein, M. B. (2010). Interoception in anxiety. Brain Structure & Function.
→ 呼吸課題による評価法を紹介。精神疾患との関連を深掘り。
7. Garfinkel, S. N., et al. (2015). Interoceptive dimensions. Philosophical Transactions B.
→ 感受性・信頼性・認知的評価の3軸モデルを提示。
8. Critchley, H. D., & Harrison, N. A. (2013). Visceral influences. Neuron.
→ 感情と内臓感覚の脳科学的メカニズムを説明。
9. Khalsa, S. S., & Lapidus, R. C. (2016). Can interoception improve mental health? Neurosci Biobehav Rev.
→ うつ・不安・摂食障害と内受容感覚の関係に焦点。
10. Herbert, B. M., & Pollatos, O. (2012). The body in the mind. Current Opinion in Psychiatry.
→ 認知と身体感覚の双方向性を検証。
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