見出し画像

#126 ツムツムはどうなった


ええっと、いまってナフサってどうなってるの?なんか価格が下がり始めてるって聞くけど、それは供給量が増えてきたから?そしたら、いまだに言ってる「ナフサ不足」っていまどういう展望になってるの?
と、いうわけで掘り下げてみました。

1. 需給データのファクト分析:前年比数値と価格乱高下の真実

まず、最も重要な「実際の供給量」と「価格」の動きを数字で把握する必要があります。

① ナフサ供給量の前年比データ

日本国内における2026年現在のナフサ(粗製ガソリン)の総供給量(国内生産+輸入)は、前年同期比で「約15%〜20%の減少」となっています。

  • 輸入途絶の規模: 日本はナフサの約4割を中東からの直接輸入に頼っており、国内精製の原料となる原油の約95%も中東に依存しています。2026年2月以降、米国・イスラエルによるイラン攻撃とそれに対抗したイランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖により、中東からの直接ルートは一時ほぼ壊滅しました。

  • 代替調達の現状: 政府および石油元売り各社は、米国、南米、アフリカ(ナイジェリアなど)からの代替輸入を急ピッチで進めています。しかし、輸送距離の長さやタンカーの手配枠の限界から、中東からの減少分を100%補うことはできておらず、トータルの量としては平時の8割程度にとどまっています。

したがって、「供給量が大幅に増えたから価格が乱高下している」という仮説は、統計上明確に誤りのようです。モノの絶対量はむしろ不足気味です。

② 価格乱高下(高騰)の真実

数量が減っているにもかかわらず、なぜ価格が上がったり下がったりと激しく乱高下しているのか。その要因は、需要と供給の物理的な量ではなく、「為替(円安)」と「買い手(石化プラント)の稼働調整」にあります。

期間国内国産ナフサ価格(1klあたり)主な要因・市場の動き2026年1〜3月期65,700円(確定値)危機前、あるいは危機初期の在庫バッファが機能していた時期。2026年4月101,000円台(突発的急騰)日銀の輸入物価指数で前年比+35.3%を記録。中東封鎖のパニック。2026年5月〜現在10万円前後の高止まり・スポット価格の乱高下代替ルート確保による一瞬の下落と、為替(1ドル=158円台の円安)による押し上げが拮抗。

価格が乱高下するメカニズムは以下の通りです。

  1. 地政学リスクによるプレミアムの暴騰(4月): 「完全に供給が途絶するかもしれない」という不安心理(プレミアム)から、国際スポット価格が瞬間的に跳ね上がりました。

  2. 石化プラントの一斉減産による急落: 1kl=10万円という異常な原料高に耐えかねた日本、韓国、台湾などの石油化学プラント(コンプレックス)が、採算悪化を防ぐために一斉に減産(稼働率低下)や定期メンテナンスに入りました。買い手側が「高すぎて買えない、作れない」と需要を急激に絞ったため、国際市場でナフサが瞬間的に余り、価格が一時的に急落しました。

  3. 円安による「高止まり」: 国際価格(ドル建て)がプラント減産で多少落ち着いても、為替が1ドル=158円台という大幅な円安水準にあるため、円ベースでの輸入物価は高止まりし、結果としてグラフが激しく上下する「乱高下」を見せています。

2. メディア報道の是非:「不足による倒産」は正しい報道か?

テレビや新聞が連日のように「ナフサ不足」「ナフサが原因で中小企業が倒産」と報じていることについて、これは「半分正しく、半分はミスリード(本質を捉えていない)」と言えます。

報道が「正しい」部分:現場の死活問題

末端の中小企業(印刷、プラスチック加工、食品パッケージ、住宅建材など)において、原料が手に入らない、あるいは高すぎて買えないために操業停止や倒産に追い込まれている企業が出ているのは紛れもない事実です。ナフサはプラスチック、合成ゴム、合成繊維、インク、接着剤など、あらゆる工業製品の「大元」です。末端の企業にとって、仕入れ価格が1.5倍〜2倍になり、かつ製品が届かないのは即、倒産に直結します。

報道が「ミスリード」な部分:不足している「段階」の誤認

メディアは「ナフサ(原液)そのものが日本に足りない」という描き方をしがちですが、これは不正確です。

高市早苗首相がX等で「事実誤認」と反論したように、ナフサの原液や、そこから作られる一次中間製品(エチレンやプロピレンなど)は、政府の代替調達や国内備蓄(約4ヶ月分)によって、「日本全体のマクロな量」としては最低限確保されているとのことです。

本当のボトルネックは、ナフサそのものの量ではなく、「ナフサからプラスチックやインクなどの『誘導品(コンパウンドや樹脂材料)』に加工して流通させる中間プロセスの目詰まり」です。メディアが「ナフサそのものがない」と一括りに報じるため、国民の不安が必要以上に煽られている側面は否めません。

3. 物流「目詰まり」の真の犯人は誰か?

では、政府の言う「目詰まり」はなぜ発生したのでしょうか。ご質問にある2つの仮説をファクトチェックします。

  • 仮説A:有名専門家の「6月詰む」発言後の、業者による買い占め?

  • 仮説B:一般消費者による、投機目的の買い占め?

① 一般消費者による投機は「構造的に不可能」

まず、仮説B(一般消費者の買い占め)は100%ありません。

ナフサは極めて揮発性が高く、爆発の危険がある「第一石油類」の危険物です。一般の消費者がポリタンクで買って自宅に保管することなど法律上(消防法)も物流構造上も不可能です。また、ナフサはコンビナートのパイプラインを通じて直接化学プラント(クラッカー)に送られるものであり、一般市場にナフサそのものが流通することはありません。

② 犯人は「産業チェーン全体での防衛的囲い込み(買い占め)」

結論として、目詰まりを発生させた最大の原因は、仮説Aに近い「産業ユーザー(企業)による防衛的な在庫の囲い込み(仮需要)」です。

4月4日、TBSの『報道特集』において、資源エネルギー庁の有識者委員でもある専門家(コネクトエネルギー合同会社CEO・境野春彦氏)が、「間違いなく今の状況が続いたら、日本は6月に詰む」と発言しました。

この「6月崩壊説」がテレビで大々的に報じられた結果、以下のような連鎖反応が起きました。

[専門家の「6月詰む」報道]
       ↓
[自動車・家電・食品などの大手メーカーが危機感を抱く]
       ↓
[化学中間メーカーに対し「年内のプラスチック樹脂やインクをすべて確保せよ」と発注]
       ↓
[中間メーカーが在庫をストック(囲い込み)]
       ↓
[資本力のない中小・零細企業に原料(樹脂やインク)が回らなくなる]
       ↓
[末端の流通から特定の製品(パッケージ、容器など)が消える(目詰まりの完成)]

つまり、誰かが悪意を持って転売目的で買い占めたのではなく、各企業が「自社の操業を守るために通常以上の在庫をオーダーし、囲い込んだ(仮需要の爆発)」ことが、流通網を完全に目詰まりさせた主因です。

4. 高市政権への批判・SNSの論調・「品質問題」のフェイク性

店頭から特定の製品(カルビーがポテトチップスのパッケージを白黒に切り替える、カゴメがケチャップの外装を透明にするなど)が消えたことで、SNSや野党による高市政権叩きが激化しています。この政治的ダイナミクスをアナリストの目で解剖します。

① 「高市政権の政策ミス」という論調の妥当性

SNS上で見られる「すべて高市政権の無策のせいだ、退陣せよ」という論調は、地政学リスク(イラン戦争・海峡封鎖)という不可抗力を無視した過度な政治バッシングです。石油の調達先を中東から大西洋盆地へ迅速に切り替えた政府の危機管理(マクロな数量確保)自体は、評価に値します。

しかし、政権側にまったく落ち度がないわけではありません。以下の2点において、政府の「アナウンスメント・ストラテジー(広報戦略)の失敗」が指摘されています。

  • 「現場感」との乖離: 高市首相が「ナフサは足りている、4ヶ月分ある」とデータだけで安全宣言を繰り返したため、現実にインクや樹脂が届かずに困っている現場(中小企業や地方選出の自民党議員)から「机上の空論だ」「現場を見ていない」という反発を招きました。

  • ブレーンの失言(炎上): 政権ブレーンとされる経済学者の高橋洋一氏が、テレビ番組(5月23日『正義のミカタ』)で「ナフサは全体で足りているんだから、ネットで探して(消費者が)発注すればいい」といった主旨の発言をし、「ナフサの物性を知らなすぎる」「転売ヤーから買えというのか」と大炎上しました。これが「高市政権は経済の実態を分かっていない」という批判のガソリンになってしまいました。

② 「品質に難癖」の真相:フェイクか、技術的リアルか?

野党や一部のネット論調が「調達したナフサは品質に問題がある」と政府を叩いている件について、これは「科学的な事実(仕様の違い)を、政治的攻撃のために『難癖』として悪用している」というのが正確な構造です。

  • 技術的なファクト: 中東産の原油・ナフサと、米国産やアフリカ産のナフサは、含まれる成分(パラフィン、ナフテン、芳香族などの比率)が異なります。日本の石油化学プラント(クラッカー)は、長年「中東産の最適なブレンド」に合わせて精密にチューニングされているため、急に米国産に切り替えると、製品の歩留まり(生産効率)が落ちたり、プラントの温度管理を再設定したりする必要があります。

  • 政治的な歪曲: 現場の技術者が「米国産は成分組成が違うから、プラントの調整に時間がかかる(これが目詰まりの一因)」と言っている話を、反対派が「政府が使い物にならない粗悪なナフサを掴まされた」とストーリーを捻じ曲げて政権叩きに利用しているのが実態です。品質が悪い(不良品)のではなく、「仕様が違うため、加工のスピードが落ちている」のが真実です。

5. 「他候補への中傷動画問題」と「首相の有料コンテンツ未登録」

さらに事態を複雑にしているのが、ナフサ問題から派生・スライドした「他候補への中傷動画問題」および「文春オンラインの有料記事発言」です。

① 中傷動画は実在するのか?

自民党内の政局(あるいは先の総裁選・選挙の禍根)に関連し、高市首相の陣営(あるいは支持グループ)が、対立する他候補を不当におとしめるようなディープフェイクや、悪意ある編集を施した「中傷動画」をネット上に組織的に拡散させていたのではないか、という疑惑です。これについて、週刊文春(文春オンライン)などが秘書の関与を示す音声スクープなどを報じ、国会やメディアで追及が始まっています。

② 「有料コンテンツに登録していないから見ない」という首相の対応の是非

この疑惑について国会等で問われた際、高市首相が「文春オンラインの記事は有料だったので、私は会員ではないので見ていません(だからコメントできない)」と言い放ったことが、今度は「コンテンツ業界への姿勢」として大炎上しています。

この対応が「正義か否か」という点については、以下の二面性があります。

  • 危機管理・政治姿勢としては「完全な悪手(不誠実)」: 一国の首相が、自らの陣営の不祥事疑惑という国家的な重大関心事に対し、「お金を払っていないから読んでいない」とシャットアウトするのは、説明責任の放棄と捉えられても仕方がありません。周囲の秘書官に「公費でも自費でもいいから1ヶ月分契約して読ませろ」と言えば済む話であり、これを理由に逃げる姿は「孤立する首相」の余裕のなさを露呈しています。

  • 皮肉な矛盾(コンテンツ政策との解離): 高市政権は2025年12月、補正予算で550億円を超える規模の予算を確保し、日本の「コンテンツ産業の海外展開・クリエイター支援」を大々的に打ち出したばかりです。クリエイターや報道機関が対価(有料サブスクリプション)を求めて発信しているコンテンツを、当の首相が「有料だから見ない」と切り捨てる姿勢は、自身が掲げるコンテンツ振興政策に対する強烈な自己矛盾(ダブルスタンダード)として、業界内からも冷ややかな目で見られています。

結果として、野党や批判勢力は、ナフサの目詰まり問題(経済無策)と、この中傷動画・有料記事スルー問題(モラル欠如)の2つをセットにして、「国民には物資不足を強いておきながら、裏では汚い権力闘争と説明責任逃れをしている」というストーリーで政権退陣の包囲網を形成しています。

現在の「ナフサパニック」の本質は、「石油が足りない」という物理的な危機ではなく、「サプライチェーンの目詰まり」という機能不全と、「不安の伝播」が引き起こした経済の過剰反応です。

メディアの「6月に詰む」という極端な恐怖訴求が企業の防衛的買い占めを呼び、結果として末端の棚から品物が消えるという事態を招きました。高市政権は「マクロな数字(4ヶ月分の備蓄)」に頼って「足りている」と言い続けましたが、ミクロな流通(インクや樹脂)の滞りという現場の痛みに寄り添う広報に失敗しました。

そこに「他候補への中傷動画」や「有料記事スルー」といった政権のモラルハザードが重なったことで、本来であれば「エネルギーの構造転換と物流調整の課題」として処理すべき経済問題が、「政権の退陣を求める政治闘争」へと完全に昇華してしまっているのが、2026年6月現在の日本の縮図です。今後は、7月までに政府がどれだけ具体的な「中間製品の融通(目詰まり解消)」を市場に示せるかが、経済および政権の命運を分ける最大の分岐点となるでしょう。

いいなと思ったら応援しよう!