秋田で、ミダミダ!現代アート
「ミネバネ!現代アート」が、今年7月25日から9月7日まで、秋田県立美術館と秋田市立千秋美術館の2会場で開かれた。タグチアートコレクション(以下、タグコレ)の個性豊かな現代アートの世界を、計約100点の作品によって紹介する展覧会だ。実際に秋田に行き、タグコレの魅力を存分に味わった。「秋田で、ミダミダ(見た見た)!現代アート」というわけだ。
タイトルの「ミネバネ」とは、「見なくちゃ」を意味する秋田の方言だ。展覧会は、「自然の営み」「人間の営み」「カラー」「モノクローム」という4つのテーマに分けられており、そのテーマからもわかる通り、多種多様な現代美術作品が展示されていた。

まず秋田市立千秋美術館を訪れると、入り口外の大きな柱にはザネレ・ムホリの大きなセルフポートレイトと、その間から覗く館内に展示されたホセ・ダヴィラの立体作品に胸が高鳴る。展示スペースに進むとすぐに現れるジュリアン・オピーの《Shahnoza, pole dancer. (lightbox)》(2006年)。続いて奈良美智の《Cosmic》(2007年)が目に飛び込んで来る。


展示全体を通して、2〜3歩下がって初めて視界に入り切るくらいの大きな作品が多い。タグコレは展示を前提とした収集のため、空間全体の雰囲気をガラリと変える力を持ったサイズの作品が多く収蔵されているのが特徴的だ。
中を進んで行くと、映るものが歪む鏡と共に設置されているのが印象的なエルムグリーン&ドラッグセットの立体作品《Super Models, Fig. 7》(2007年)や、高橋喜代史の映像作品も並ぶ。青山悟の《Just a piece of fablic(VS877800A)》(2021年)では、刺繍で作られた千円札に自分でLEDライトを当てて浮かび上がるメッセージを見ることができ、ロイ・リキテンスタインの《Mirror in six panels #1》(1970年)ではフラッシュをたいて自分で写真を撮ることで浮かび上がる像を見ることができるなど、能動的な鑑賞体験の場が設けられていた。そうした体験は作品に対する驚きと発見を与えてくれる、とても充実したものだった。



最後の部屋は、開放的な広い空間に人の身長よりも大きく色彩豊かな作品が壁一面に並んでおり、壮観だった。ひとつひとつの作品に大きなインパクトがあるため、全体を見渡すと改めて現代美術の力強さを感じた。

「モノクローム」作品にインパクト

次に、秋田県立美術館を訪れた。1階の展示空間に進むと、秋田市立千秋美術館同様、サイズの大きな作品が多く展示されていた。ステンレス製のバケツに大小さまざまなお玉が刺さったスボード・グプタの立体作品《Sun Flower》(2010年)や、多摩美術大学出身の作家である照屋勇賢の《告知 − 森(ティファニー)》(2009年)、村上隆《黄色い麦わら帽子の女の子》(2010年)、杉本博司《日本海、北海道》(1986年)、大岩オスカール《氷山》(2007年)など、多様な作品がまさに「一堂に会している」のだ。見る作品によって、強烈な色彩だったり穏やかな色使いだったり、わかりやすくも多様な見所があり、現代美術を初めて見る人にとってもこれでもかいうほど楽しめるようになっていた。




安藤忠雄設計の秋田県立美術館の建築に合わせてグザヴィエ・ヴェイヤンが制作した《Mobile n°1》(2025年)を囲む螺旋階段をのぼって上階に進んでいくと、常設の藤田嗣治の大壁画《秋田の行事》(1937年)の展示スペースが現れる。実はこの作品は、縦3.6m、横20.5mに及ぶ大壁画なのだ。畏怖の念さえ覚える大きな壁画に圧倒される体験をした。その時は、またタグコレの世界観に没入することができるのかという不安を覚えつつ、次の展示に歩を進める。

さらに上階に登った先には「モノクローム」をテーマとした最後の展示空間があり、澤田知子の《FACIAL SIGNATURE》(2015年)の展示があった。見渡す限り、全て異なる化粧や髪型の作家のポートレイトが現れ、すぐに現代美術の世界に引き込まれた。これも大壁画の後に見るものとして計算されていたのだろうか。

先程の不安は不要だった。奥に進むと、異質なものを組み合わせたような金氏徹平の作品《Gray Paddle #17》(2014年)や、机上がチェスの盤面となっており実際に座って触れる事ができるオノ・ヨーコの《Play It by Trust(信頼して駒を進めよ)》(2015年)、塩田千春《存在の状態(ドレス)》(2013年)、ガヴィン・ダークによるマウリツィオ・カテランの生バナナを粘着テープで壁に貼り付けるインスタレーションのオマージュ作品《Giraffe》(2021年)など、色彩感を削ぎ落としたモノクロームという概念でくくられる中でも、インパクトのある作品がそろっていた。




現代美術は誰にでも開かれている
現代美術と聞くと、「わからない」「難しそう」といったイメージが先行して遠ざけてしまう人も少なくない。今回訪れたタグコレの展示は、そういう人たちにぜひ体験してほしいと思う内容だった。何かを「考えなくてはいけない」ではなくて、見た時に自然と問いが浮かんで「考えてしまう」ような作品の数々に出合うことができた。
現在、岡山県の高梁市成羽美術館で「世界の道しるべ-ヤバイ現代美術 #もっとタグコレ 」を2026年1月18日まで開催中だ。全ての展示作品が秋田のものとは異なるとのことで、秋田のものとは別の作品を通して現代美術の面白さに触れることができるだろう。美術が好きな人も興味がない人も、実際に自分の目で見て多様な現代美術の世界を感じてみてほしい。
文・写真=松見彩音
【記事で取り上げた展覧会】
「ミネバネ!現代アート タグチアートコレクション」(終了しました)
期間:2025年7月19日〜9月7日
会場:秋田県立美術館、秋田市立千秋美術館
【現在開催中のタグコレの展覧会】
「世界の道しるべ-ヤバイ現代美術 #もっとタグコレ 」
期間:2025年9月20日〜 2026年1月18日
会場:高梁市成羽美術館(岡山県)
開館時間:9時30分〜17時(入館は16時30分まで)
休館日:毎週月曜日(但し祝祭日は開館、翌火曜日休館)、年末年始(12月28日~1月4日)
観覧料:一般1,200円、高大学生600円(小中学生は無料)
