【掌編小説】名前を聞くまでの時間

パテックさんからパテック杯に招待していただき
(パテックさんからのスキを勝手に勘違いした女がここにいます)
急遽、恋愛をテーマにした短編小説を書きました〜
私もパテック杯に参加させて下さいっ
恋愛は始まるんだか始まらないのかよくわからないポワポワした時間が1番楽しいと思う派です
あ、わたくし既婚者ですのでもうそんな時間は1秒も無いです、はい

↓始まります☆





久しぶりの3連休
行き先しか決まってない気ままな一人旅
バスに乗り込むとまぁまぁ混んでいた
小さめのスーツケースを上に上げて通路側の自分の席に座った
週末の帰省なのかそれとも旅行なのか車内は控えめの話し声でザワザワしていた
心地良い賑やかさだ
ポッドキャストを聴くのでイヤホンをつける私に周りの環境は関係ない
出発してしばらく経つと隣に座っていた青年がトイレに立った
私は足を横に向け彼が通りやすいようにした
「すみません」とペコっと頭を下げて行った
礼儀正しい子だな、とだけ思った
またしばらく経つと「すみません」と立った
「あ、はい」
青年は胸に手を当てて戻ってきた
その後も何度か席を立った
思わず「大丈夫ですか?」と聞いてしまった
「あ、はい、ごめんなさい何回も前通ってしまって」
「いや、いいんです、気持ち悪いんですか?」
「ちょっと出発前にお酒を飲みすぎてしまって、、、失敗しました」
「フフッ、まぁ、そうですか、それは時間が解決してくれますね笑」
「すみません、ホントに」
「いえいえ」と私は首を横に振り会話は終わった
しばらく無言で過ごした後突然青年が
「あ!」と声を上げて私の方を見て
「席ばくりませんか?またお姉さんの前通って迷惑かけちゃうので」
「あ、はい」
お姉さん、、、そうか、私あなたから見るとお姉さんか、、そうだよな、絶対私の方が年上だなって余計なこと考えながら返事をした
それから窓側の席に座った私はずーっと景色を見ていた
通路側の彼はぐーぐー寝ていた
まつ毛が長くて見とれてしまった
ハッと我に返り、寝顔に見とれるなんてキモいキモいと自分を罵倒した

途中高速のSAでトイレ休憩があり私もバスから降りた
トイレから出てくると隣の席の青年がいた
「あ!」
「お姉さん、ソフトクリームごちそうします」
「え?いいよ」
「迷惑かけたんでごちそうさせて下さいっ」
「え、じゃあ、お言葉に甘えて」
「はい!待ってて下さいっ」と走って行った
彼の後ろ姿見ながらなんかこそばゆくなった
なんだろ?名前も知らない人におごってもらうなんて、普通なら受け付けないであろう事案だ
しかし人懐っこい笑顔とお姉さん呼びに私は彼に少しだけ心を開いている
さっきの長いまつ毛を思い出していた
青年は自分の分と私の分を持ってやって来た
私は彼のおなかが心配になった
「冷たいの食べても大丈夫?」
「大丈夫です!」
出発時間までにソフトクリームを食べきりバスに乗り込んだ
キレイな景色を見て目をつぶりたい時につぶって
終点まで何か喋るわけでもないけど心地良い時間が流れた
リラックスして座っていた
それは青年もそうだったと思いたかった
終点に着いてバスから降りた
青年はこれからどうするのだろう
ここで聞いて何になる
ただ隣り合わせた年上の女にいろいろ聞かれるのも嫌だろう、ハラスメントの1種になるかもしれない
「じゃ、良い旅を」
「はい、お姉さんも」
そこで青年と別れた
もう会うことも無いだろう
名前だけでも聞いとけばよかったかな?と思いながら私は歩き出した

次の日

「昨日のお姉さん!」
「は?えーーー?」
呼び止められた私はびっくりした
「おはようございます!」
「おはよう、おなか治った?」
「はい!もう大丈夫っす!昨日はご迷惑をおかけしました」
「こちらこそソフトクリームごちそうさまでした」
「、、、、」
「、、、、」
お互い無言になってしまった
「ははっ」
「じゃあ」
「あ、はい、あ、お姉さんは今日どこ行くんすか?」
「〇〇だよ」
「わっ!オレ反対方向っす」
また2人は無言になってしまった
「ねぇ、名前だけ教えて、私は〇〇といいます」
彼は目を丸くしてカバンの中から免許証を出して私に見せてくれた
「僕は〇〇といいます、〇〇って呼んで下さい」
免許証を見せるなんて、なんてオープンな子なんだと思いながら
「見ず知らずの人に免許証見せるかな〜?」
「お姉さんは見ず知らずじゃないです」
「そうだね、ソフトクリーム食べた仲だね笑」
「お姉さん、ライン教えてください」
「は?」
「旅の途中でお互いに写真送りあいませんか?」
「あ、いいけど、、」
私は少々押され気味に連絡先交換をしたが
内心はすごく嬉しかった
青年からしたら連絡先交換なんて特別なことじゃないかもしれないが、私は何かが始まるかもしれないとドキドキした
でもお姉さんと呼ばれているうちは何も始まらないだろうなとどこか安心してる自分もいた
「じゃあね〇〇くん」
「はい!」
仔犬のような笑顔が眩しくて一瞬目眩がした

それから私達は反対方向に向かって歩きだした
(1820文字)



お読みいただきありがとうございました
したっけね👋

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