【ほっともっと】1人で食べる夕飯が、不思議と温かかった理由
私は今、お昼から夜まで働いています。
仕事帰りに夕飯を作るのが億劫な日は、週に1回ほどのペースで「ほっともっと」に寄るのがルーティン。
気づけばもう2〜3年ほど、定期的にお世話になっています。
今回は、そんな私と「ほっともっと」の絶妙な距離感について書いてみようと思います。
誰とも喋りたくない、ボロボロの夜に
始まりは、数年前の夜のことでした。
その日は仕事で疲れ果てていて、帰宅してからご飯の支度をする余裕なんて、微塵もありませんでした。
退勤後、誰かと喋る気力すら残っていない。けれど肉体労働の後なので、お腹はペコペコ。
コンビニに寄ることも考えましたが、レジでのやり取りを想像して足が止まります。
「ポイントカードはありますか?」
「袋はどうしますか?」
「お弁当、温めますか?」
……そんな当たり前の質問にすら、感じよく答えられる自信がなかったのです。
「とにかく、あまり喋らなくていい場所に行きたい!」
そうして吸い寄せられるように入ったのが、ほっともっとでした。
注文して、支払って、あとは待つだけ。
夜の時間帯は他にお客さんも少なく(たまに居るくらいで)、私はいつも店内の椅子にぐったりと座って、自分の番号が呼ばれるのを待ちます。
番号を呼ばれたら取りに行き、「ありがとうございます」と一言添えて退店する。
ただそれだけ。
ビニール袋も割り箸も最初からついているし、何より出来立てだから、家に帰って温め直す手間もいりません。
「あぁ、最高……」
そんな風に、ただ空腹を満たすための静かな避難所として利用し続けて数ヶ月。
ある日、年配の女性店員さんに不意に声をかけられました。
「こんばんは。この前買った新発売のお弁当、どうだった?」
まさか話しかけられるなんて思ってもみなかったので、心底びっくりしました。
とっさに「あ、美味しかったです……」と返したものの、自分の声は驚くほど棒読み。
誰とも喋りたくないほど疲れていた夜。
けれど、その予想外の温かな問いかけに、私の心は少しだけ解けたような気がしたのでした。
時代はアウト?
でも温かかった「おせっかい」
この日を境に、その店員さんはちょいちょい話しかけてくるようになりました。
「仕事終わり?」
「家、近いの?」
「彼氏いるの?」
「このおかず、にんにく強いわよ!明日デートじゃない?大丈夫?」
今の時代なら、もしかしたらアウトかもしれない踏み込んだ質問のオンパレード。
でも、私は不思議と不快には感じませんでした。この年代の方にとっては、これが親しみを込めた普通の会話なんだろうなと、悪気がないのが伝わっていたからです。適当にかわしながらも、そのやり取りをどこか楽しんでいる自分がいました。
通い詰めるうちに、ほっともっとのアプリもダウンロード。ポイントを貯めたりクーポンを使ったり、すっかり常連の仲間入りです。
仕事帰りにネット注文をしてから店舗へ向かえば、待ち時間も減ってさらに便利に。
注文票には私の名前が表示されるので、彼女がいる時はいつも厨房からレジまで駆けつけて、声をかけてくれました。
ある日、彼女が申し訳なさそうに言いました。
「いつも買ってくれるからサービスしたいんだけど、何もしてあげられなくてごめんね」
私は全く気にしていませんでした。だって、自分が食べたくて買いに来ているだけなのですから。すると彼女は、茶目っ気たっぷりにこう続けたのです。
「サービスはできないけど、握手ならできるわよ?」
私は精一杯の笑顔で、でも心を傷つけないように、明るくお断りしました。
(握手なんてしたら、さらにお話が長くなりそうだな……なんて心の中で思いながら。)
そんな温かくも少し賑やかな日常でしたが、昨年、転機が訪れました。
市内で引っ越しをしたことで、あんなに通っていた店舗が遠くなってしまったのです。
週に一度は必ずお世話になっていたのに、今ではすっかり足が遠のいてしまいました。
そんな日々から月日が流れ、先日。
私は久しぶりに、あの「ほっともっと」の暖簾をくぐりました。
お目当ては、毎年楽しみにしている焼肉ビビンバ弁当。
発売の知らせを聞き、仕事終わりにアプリで予約を済ませました。
「あの店員さん、まだいるかな……」
そんな淡い期待を胸に、お店へ向かいます。
店舗に着くと、そこには懐かしい彼女の姿がありました。
いつもなら真っ先に声をかけてくれるのに、なぜかこの日は私を見かけるなり、サッと裏の事務所の方へ消えてしまったのです。
「あれ? 久しぶりすぎて、私だと気づかれなかったのかな……」
少しだけ寂しい気持ちで会計を済ませようとした、その時。
彼女が事務所からひょいと顔を出し、弾んだ声で言いました。
「あら! 久しぶりじゃない、元気だった? ちょっとお嬢さん、デザート食べない?」
一瞬、私のひねくれた心が顔を出します。
(あぁ、売上を伸ばすための営業かな……)
正直、少しだけ身構えてしまいました。
けれど、彼女が続けた言葉は予想もしないものでした。
「ここの棚から、好きなもの選んでいいわよ」
あまりに唐突で、すぐには意味が飲み込めませんでした。
なんと、彼女が自分の財布から私に一つ、ご馳走してくれるというのです。
驚いて戸惑いながらも、棚に並んだ商品に目をやると、大好きなプリンが目に留まりました。
迷った末にそれを選ぶと、彼女はわざわざ事務所まで取りに行っていた自分のお財布から、会計を済ませてくれました。
胸がいっぱいになりました。
私はただの、一時期よく通っていただけの客に過ぎません。
それなのに、どうしてこんなに優しくしてくれるんだろう。
人生捨てたもんじゃない!
温かかった一人ごはん
帰宅して、一人で向き合う焼肉ビビンバ弁当と、あのプリン。
お弁当はいつも通り温かいけれど、それ以上に心がじんわりと温まっていくのが分かりました。
今日、仕事を頑張ってよかった。
少し遠回りだったけれど、ここに寄ってよかった。
人生捨てたもんじゃない!
そんな大げさな言葉が、今の自分にはこれ以上なくしっくりときました。
その日、夫は3時間半の残業で、帰宅は私よりもずっと遅い時間でした。
一人で食べる夕飯だったけれど、不思議と寂しさは感じませんでした。
翌日、仕事が休みだった私は、お礼を伝えに店へ向かいました。
私の一番好きなホリのとうきびチョコに、小さなメッセージカードを添えて。
残念ながら彼女は不在でしたが、別の顔馴染みの店員さんに、ことづてをお願いしました。
いつかまた彼女に会えたら、今度は私の方から「こんばんは」と、最高の笑顔で話しかけたい。
そう願いながら店を後にする私の足取りは、昨日よりもずっと軽くなっていました。

私にとっては特別なプリン
アプリクーポンで貰ったミニスタンド
あなたにとっての『ほっともっと』のような場所はありますか?
