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流離の冒険者 ♯8 まだ見ぬ世界 【連載小説】(ファンタジー小説)

【あらすじ】

あれからただ横たわり、何もできない1日を過ごした。
ただ、眠るだけでいい。

そう意識すればするほど、遠ざかる。
ただ、今すぐにでも試したい。

それを、わたし自身が許してくれない。
わずかな食料と水を手の届く範囲に配置し、じっと回復を待つ。

明日中には、回復しないといけない焦りと、これからの新たな希望を抱き、まだ見ぬ光景を夢に見ていた。

流離の冒険者 ♯8 まだ見ぬ世界 【あらすじ】

ーー‥‥‥

いつもより、少し遅く起きた。
なかなか寝付けずに、ゴロゴロしていたからか。

疲労感が少しマシになっているのがわかる。

「‥‥‥ヒール」

ーーぽわーん。

「‥‥‥はぁ、よかった」

ーーゴソゴソ‥‥‥バサッ、ギシッ‥‥‥

何とか動けることを確認して、安心する。
これまでずっと当たり前すぎて、この災厄に備えていなかったことを反省する。
窓の外を眺めて、ふと思う。

「庭で、薬草って育つのかな‥‥‥」

自然に癒されるからだろうか。
いや、単に他人と共同で生きるのが疲れるからか。

士官学校から、少し離れたこの家を見つけた時に、ここだと思った。
ここなら、のんびりと何をしていても落ち着く。

だが、今回の一件で身にしみた。
わたしが動けなくなった時、わたしを動かせる者がいないことに。

そういったことに備える必要があると。

「自宅だからといって、安心はできないな‥‥‥非常時に備えて、回復アイテムを買っておかなければ‥‥‥」

普段はあまり出かけないわたしにも、街に出かける理由が出来た。
明日に備え、休日の重い扉を開ける。

ーートコトコ‥‥‥しーん。

「‥‥‥あれ」

街の入り口に近づいた時、異変を感じた。
いつもはそれなりに人が歩いているこの場所に、人が見当たらない。

本来の目的を果たすため、ジリジリとしたこの熱波の空気の中、雑貨屋へと向かう。

「‥‥‥なんだと」

『本日、臨時休業』

この雑貨屋は、休みなのかと肩を落とす。
じぶんが動いた時に限って、なぜこうなるのかと。

もう一軒、知っている雑貨屋がある。
微かな記憶を頼りに、その方向へと向かう。

『CLOSED』

行く先々で、無言で断られているように感じてしまう。
そもそも、今日は何かある日だったのかと疑う。

この店だけではない。ここまで通ってきた家屋は閉め切っている。
人の数も明らかに少ない。

「はやく!こっちよ!急がないと!」

そして、その者達も何かに焦るような様子で急いでいる。
この街で、いったい何が起こっているのか。

ーーヒュー‥‥‥ドーーン!

「‥‥‥ん?何の音だろ」

どこからか、何かが爆裂したような。

「‥‥‥まさか‥‥‥戦いが」

皆、戦火に巻き込まれないように非難したのか。
先ほど、急いでいた者達の方向を目で追いかける。

「‥‥‥士官学校の方向だ」

不吉な予感がする。
士官学校に人が集まる時‥‥‥それは、非常事態の時。

災害や戦いになった時の、非難先に指定されている。

「ついに、来てしまったのか‥‥‥」

わたしもその方向に向かい、走り出す。

ーーざわざわ‥‥‥

士官学校に辿り着くと、行列ができていた。
周囲の流れに身を任せ、わたしもその中に加わる。

遠くから、声が聞こえる。

「しっかり並んでください!優先者はこちらから入ってください!」

皆、まだかまだかとソワソワしている様子。
優先者とは、こども達のことだろうと察する。

未来あるこの姿を守らねばならない。
列の横を走り抜けていく、その姿を見守る。

「大丈夫!ここには、レンジャーいるんだ!」

「‥‥‥そうだよね」

走り抜けていく、少年と少女の声が聞こえた。
手を引き、不安な表情を浮かべている少女を導いている光景を目にする。

そうかここには、あの方がいる。

周囲を見渡しても、大人たちはあまり不安の様子がない。
きっと、あの存在を皆が心の頼りにしているのだろう。

そうしてこの列に並んでいると、とうとうわたしの順番が来た。

「銀貨3枚です~!」

「えっ‥‥‥」

「?」

わたしが戸惑っていると、目の前の女性がやさしく声をかけてくれる。

「あの、食べ物とドリンクが込みになっていますので、凄くお得ですよ♪」

そうか、非難にもお金が必要なのかと、しぶしぶ支払う。

ーーチョリーン。

「ありがとうございました~♪」

門をくぐると多くの人で賑わっていた。
まるで、お祭りのような熱気を感じる。

しかし、今あまり暑さを感じない。むしろ、この中に入ってから涼しい。
いったいどうなっているのだろう。

何かに誘われるように、心地の良い風がする方に歩みだす。
わたしも、この誘惑には抗えない。

「ここって‥‥‥」

敷地内の森のように囲まれたスペースの中に、天幕が貼られている。

ーーゴゴゴ‥‥‥

2人の男が仁王立ちしている。
この服装、王国騎士団の‥‥‥いったい。

「あの‥‥‥」

「ん?どうかしたか?」

「これは、いったい‥‥‥」

「見ればわかるだろ、これは‥‥‥」

ーーザッザッ‥‥‥

急ぎ足で、駆けつける騎士が現れる。

「兵士長ー!‥‥‥周辺に異常ありません!もう、大丈夫でしょうか?」

「あぁ、構わん。交代の時は、気を引き締めるんだな」

「ありがとうございます!では、お先に失礼します!」

ーーすたすた‥‥‥

「さて、わたしも仕事をせねば。これで最後の報告だったな」

「えぇ、あとは最終報告をしに行くだけかと」

ーーゴソゴソ‥‥‥

目の前の隊長は、物陰から何かを取り出している。
木箱に何か入っているようだ。

「すまない、ここは任せる」

「はっ!お任せください!」

男は天幕の方を見て、歩き出そうとしていた。

「あっ、そうだ。きみはこの学校の者か?」

「はい、ここで魔法を磨いています」

「ほう‥‥‥誰に、教わっている?」

わたしは、一呼吸置いて答える。

「ヒルデ‥‥‥将軍です」

男は少し笑みを浮かべたように見えた。

「そうか、それは幸運だな。ついてこい」

男は緊張しているのか、入り口の前で、一度立ち止まり呼吸を整えている。さっきのような笑みはすでになくなっていた。

足もとから、冷たい冷気のようなものを感じる。
そのまなざしから、真剣さが伝わる。

「ふぅー‥‥‥ガルド兵士長!!入ります!!」

こんなにも大きな声が出るのかと圧倒される。
その姿から、この方の強さが一瞬でわかった。

後を追うように、天幕の中に入る。
中央に大きなテーブルが置かれ、その先にあの方がいた。

「報告します!この施設周辺すべてに異常はありません!」

「わざわざ、すまなかったな。ガルド兵士長」

「いえ!ヒルデ将軍の頼みと聞きまして、わたしが勝手に駆け付けただけであります!」

わたしが騎士になった時、こんな風になれるのか。
このやり取りを見て、少し羨ましく思う。

「それで、その連れている少年は?」

ヒルデ将軍の冷徹な視線が突き刺さる。

「いえ、何か用があるのかと思いまして‥‥‥ヒルデ将軍の鍛錬を受けている者と聞きつい‥‥‥」

「そうか、そうだったな。それで用とは何だ?」

用がないのに来てしまったことを、少し後悔する。
わからないことを、ただ質問する。

「あの‥‥‥ヒルデ教官。これはいったい何をされているのでしょう?」

「見ればわかるだろう。そうだろ?ガルド兵士長?」

さっきまでの会話が聞こえていたのだと、一瞬ガルド兵士長と目があう。

「いや、わたしはここ周辺の警備を任されていただけで‥‥‥何かの催しをされているくらいでしか‥‥‥」

ガルド兵士長は、じぶんの任務を全うすることで精いっぱいのようだった。ヒルデ将軍は、その姿を認めているようだった。

「そうだな、詳しいことは一部の人間しか伝えていない。わたしは各々に、何をすべきかしか伝えていない」

指揮官としての姿がそこにあった。

この方は、いったい何をしようとしているのか。

「きみたちには伝えておこうか」

「‥‥‥」

「これは、ただの遊びなんだ」


ーーつづく。


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