社長が5分喋るだけで、集客の武器が生まれる時代
5分と、ゼロ秒の話
先日、あるコンサルをしていて、社長にこう聞かれた。
「動画も、ブログも、SNSも大事なのは分かってる。でも、俺、いつやればいいんだ?」
正直な質問だ。そして、正直な答えは「今のままなら、やらない方がいい」だった。
社長業は、すでに満杯だ。現場を回し、資金繰りを見て、人を動かし、客先に頭を下げる。そこに「発信もやりましょう」と乗せるのは、キャパオーバーの追い打ちでしかない。多くの社長が発信を始めて三日で止まるのは、根性がないからじゃない。時間という、動かせない制約に負けているだけだ。
私はこの三十年、ホームページを作る側の人間として、そういう社長を何百人も見てきた。忙しさのあまり、自分の会社のいちばんの武器——自分自身の経験と言葉——を、外に出せないまま抱え込んでいる社長を、数え切れないほど見てきた。そして最近、自分自身のビジネスでも同じ壁にぶつかった。伝えたいことは山ほどある。でも、それを文章にし、動画にし、投稿する時間がない。頭では分かっているのに、手が動かない。よくある話だ。
そこで、ひとつの仕組みを作った。仕組みと言うと大げさに聞こえるが、やっていることは単純だ。社長が5分喋る。それだけで、動画の台本と、ブログ記事と、note記事と、SNS投稿文が、自動でできあがる。
喋ったことが、勝手に形になる
種を明かすと、こうだ。
スマホのボイスメモで、5分だけ喋ってもらう。テーマは自由。今日あったこと、値上げした理由、断ったお客さんの話、なんでもいい。その音声ファイルを、AIが文字に起こす。そこから先は、人の手を離れる。文字起こしされた内容をAIが読み取り、その中身にいちばん合う伝え方——問題提起から入るのか、エピソードから入るのか、それとも数字から入るのか——を自動で選び、動画の台本、ブログの本文、noteの下書き、SNSの投稿文を、それぞれのフォーマットに合わせて一度に書き上げる。
社長がやることは、5分喋ることだけ。あとは仕組みが働く。
これを聞いて「AIに書かせるなんて、魂がこもってないんじゃないか」と思う人もいるだろう。私も最初はそう思っていた口だ。実際に自分で試すまでは、半信半疑だった。ある日、通勤前の五分間、思いつくままに喋った。「なぜ自分は、飛び込み営業を一度もせずに、ここまで来られたのか」という話だった。とりとめのない、脱線だらけの喋りだった。それが数分後、ちゃんと起承転結のあるブログ記事になって出てきたとき、正直、拍子抜けした。拍子抜けした理由は、出来が悪かったからではない。逆だ。ふだん自分が書くよりも、余計な言い訳や前置きが削ぎ落とされていて、芯だけが残っていた。
そこで分かったことがある。魂は、社長が喋った5分の中に、もう入っている。 AIがやっているのは、その魂を、文字という別の器に移し替える作業でしかない。手を抜いているのではなく、社長にしかできない仕事と、AIに任せていい仕事を、正しく切り分けているだけだ。
何を喋ればいいのか分からない、への答え
仕組みの話をすると、次に必ず聞かれるのが「じゃあ、何を喋ればいいんですか」だ。この質問こそ、実は発信が続かない一番の理由でもある。何を話せばいいか分からないから、マイクの前で固まる。ネタ帳を作ろうとして、それ自体が新しい宿題になり、結局やらなくなる。
私が社長たちに渡している問いかけは、たった三つだ。「今日、断った仕事は何か。なぜ断ったか」「今日、値段のことで悩んだ場面はあったか」「もし新人に一つだけ教えるなら、何を教えるか」。この三つは、どれも社長の頭の中に、すでに答えがある。考えて作る必要がない。思い出して喋るだけでいい。
面白いのは、この手の質問に答えると、たいてい話が脱線することだ。断った理由を話しているつもりが、いつの間にか昔の失敗談になっていたり、新人への教えのつもりが、値段の話に戻っていたり。私はこの脱線を止めない。むしろ、脱線の中にこそ、いちばん生っぽい、他の誰にも語れない話が隠れている。台本を用意して喋ると、その台本の枠を出られない。台本なしで喋るからこそ、思ってもいなかった一言が飛び出す。それをAIが拾って、記事という形に整える。
ある五分の実験
半信半疑だったと書いたが、もう少し具体的に書いておく。
試したのは、通勤前の慌ただしい五分間だった。テーマは決めていなかった。「今日は何を話そうか」と考えながらボイスメモを起動し、結局、前日にあった出来事をそのまま話し始めた。長年付き合いのあった取引先から、値下げを頼まれて、断った話だ。断った理由も、そのときの心境も、特に整理せず、思い出す順番のまま喋った。話し終えるまで、正味四分半ほどだった。
数分後、文字起こしと変換が終わり、画面に記事が出てきた。読んでみて驚いたのは、自分が喋った順番とは違う構成になっていたことだ。断った場面から始まるのではなく、「なぜ安く売ることが、必ずしも親切ではないのか」という一文から始まっていた。喋っているときには意識していなかった芯を、後から抜き出されたような感覚だった。これは、書こうとして書けるものではない。喋ったからこそ、拾えたものだ。
台本から、動画まで自動でできあがる
ここまでは文章の話をしてきたが、実はこの仕組み、動画も自動でできあがる。喋った内容から生成された台本は、そのままAIによる動画生成にも渡される。ショート版とロング版、あらかじめ好みの設定をしておけば、その動画が自動で作られる。ナレーションも、映像の構成も、社長が改めて指示を出す必要はない。台本ができた時点で、あとは仕組みが引き継いでいく。
できあがった動画は、そのまま自動で投稿されるところまで設定しておける。YouTubeにはロング版、ショート動画の枠にはショート版、というふうに投稿できる。社長は五分喋ったあと、何もしなくていい。気づけば、文章と動画、両方の形で、外への発信が積み上がっている。
もちろん、編集したい場合は、追加や読みの訂正などは可能だ。
これが意味するのは、「文章を書くのが得意な社長」だけでなく、「喋るのは得意だが書くのは苦手」「動画編集なんて触ったこともない」という社長にも、同じ入口が開かれているということだ。得意不得意に関係なく、五分喋れば、複数の形の発信が同時に生まれる。この並行生成こそが、時短の効果を何倍にも増幅させている部分だと思う。
以前の私なら、この規模のことをやろうとすれば、ライターに文章を発注し、別に動画編集者を探し、それぞれに素材を渡して、仕上がりを待つ、という段取りを組んでいた。人を探す時間、依頼する時間、確認して直してもらう時間。ひとつの発信を形にするまでに、下手をすれば一週間以上かかっていた。今は、その全工程が、社長が喋ったその日のうちに終わる。時間の桁が変わった、という感覚に近い。
時短の本当の意味
「時短」という言葉は、ともすれば「楽をする」という響きで受け取られる。でも、私がここで言いたい時短は、そういう話ではない。
社長の頭の中には、何十年分もの経験と判断基準が詰まっている。それは会社にとって、いちばんの資産だ。なのに、その資産は多くの場合、社長本人の頭の中だけに眠っている。忙しさが理由で、外に出る機会を失ったまま。会社が大きくなればなるほど、社長は現場から離れ、代わりに「発信する時間」も削られていく。皮肉な話だ。会社が育つほど、いちばん伝えるべき人の声が、外に届きにくくなる。
AIによる時短とは、この「眠ったままの資産」を、外に出すための時間コストを、限りなくゼロに近づけることだ。5分喋る。それだけで、その日のうちに、集客に使える形に変換される。この5分と、これまで発信のためにかけていた時間——構成を考え、文章を書き、推敲する何時間もの作業——との差が、そのまま社長に還ってくる時間になる。
そして、その時間は、また現場に戻る。客先に、商品開発に、次の一手を考えることに。発信のために本業を削るのではなく、本業をやりながら発信が積み上がっていく。これが、私が考える時短集客の本当の意味だ。時短とは、サボることではない。時間の配分先を、正しく組み替えることだ。
なぜ「集客」に効くのか
ここで大事なのは、これが単なる作業効率化ではなく、集客そのものに直結しているという点だ。
今、客は検索する前に、もう「この人に頼むかどうか」をある程度決めている。SNSで見かけた投稿、YouTubeで流れてきた動画、たまたま読んだnoteの記事——そうした接点で、無意識に信頼のスコアをつけている。検索は、その後に「確認」として行われるにすぎない。かつては、良いホームページを作り、検索に強くしておけば、それだけで客は来た。私自身、その時代に二千三百件以上のホームページを作ってきた人間だから、この変化はよく分かる。今は、検索にたどり着く前の段階で、すでに勝負がついていることが多い。
つまり、社長が発信を続けているかどうかが、検索の前段階の勝負を分ける。ところが、その発信こそが、時間という制約でいちばん後回しにされてきた。ここに矛盾がある。集客のために一番必要な行動が、集客以外の忙しさによって潰されている。
AIによる時短の仕組みは、この矛盾をそのまま解消する。社長は喋るだけでいい。喋った内容が、動画になり、記事になり、投稿になって、検索の前の接点を静かに増やし続ける。特別なライティングスキルも、動画編集の技術も要らない。社長がすでに持っている、経験という一次情報さえあれば動く。
AIにできないこと
念のため、正直に書いておく。この仕組みは万能ではない。
AIが用意できるのは、あくまで「型」と「文章の骨組み」だ。社長がまったく喋らなければ、何も生まれない。ネタになる経験や判断が、社長の中に何もなければ、AIは空回りする。つまりこの仕組みは、発信の労力を減らすものであって、発信の中身そのものを作り出す魔法ではない。中身は、あくまで社長自身のものだ。
もうひとつ。出てきた原稿を、そのまま無編集で世に出すことは、私はすすめない。AIが書いたものは、あくまで一次案だ。社長の言い回しの癖や、絶対に譲れない一言は、最後に人の目で戻す必要がある。時短とは、ゼロから作る手間をなくすことであって、確認する手間まで消すことではない。ここを混同すると、発信が薄っぺらくなる。
この二つを分かっていれば、この仕組みは十分に機能する。分かっていないと、ただの「AIに丸投げ」になって、逆に信頼を失う。
これから、社長に伝えたいこと
私はこの三十年、二千三百件以上のホームページを作ってきた。作りながらずっと感じてきたのは、「良いものを作れば売れる」という時代が、静かに終わっていったことだ。今は、良いものを作ったうえで、それをどう届けるかまでが、経営そのものになっている。
AIは、その「届ける」部分の、いちばんの障害だった「時間」を取り除く道具になり得る。派手な自動化や、難しいツールの使いこなしは要らない。5分喋る。それだけで十分に始められる。
社会を変えたいとか、正しさを語りたいとか、そういうつもりはない。ただ、これから先、AIをどう使うかで、中小企業の社長たちの時間の使い方は確実に変わっていく。喋ることが得意な社長もいれば、苦手な社長もいる。それでも、5分という時間だけは、どんな社長にも平等にある。
この五年ほどで、AIという道具は急に身近になった。けれど、多くの現場では、まだ「AIで何ができるか」を探る段階で足踏みしている。私が伝えたいのは、探る前にまず一つ、手を動かしてみることだ。難しい設定も、専門知識も要らない。マイクに向かって五分喋る。それだけで、AIが何をしてくれる道具なのか、体感として分かる。体感してからでないと、本当の意味での判断はできない。
この文章自体、種明かしをすれば、私自身が数分喋った内容を土台にして書き起こしたものだ。実演のようなものだと思ってもらっていい。喋ったことが、こうして一つの読み物になる。この変化の入り口に、ひとつ石を投げておきたいと思って、この文章を書いた。
喋るだけで、資産になる。忙しい社長にこそ、この仕組みが届いてほしい。
