5/8臼木ひでたけ議員:スラップ訴訟とは、公益通報者保護法の限界 具体的な法整備を提案、政府の姿勢 など
2026.5.8 国民民主党 臼木ひでたけ議員 法務委員会会 質疑 文字起こし
▼本記事は下記動画のうち、臼木ひでたけ議員の質問部分について文字起こししたものです。
スラップ訴訟に対する政府認識と海外規制について
臼木ひでたけ議員:
ありがとうございます。国民民主党・無所属クラブの臼木ひでたけと申します。今日は質問の機会をいただきありがとうございます。今日は、いわゆるSLAPP訴訟というものについて、法務省それから消費者庁の方にお聞きをしたいと思います。
我が国では定義がない言葉ですので、少し説明をさせていただければ、1980年代後半のアメリカで法学者、社会学者の共同研究で生まれた概念であります。ストラテジック・ロースーツ・アゲインスト・パブリック・パーティシペーション(Strategic Lawsuit Against Public Participation)、これのそれぞれ頭文字をとってSLAPPでスラップということで、日本語で直訳すれば市民参加に対する戦略的訴訟ということになりますが、日本の我が国の中ではしばしば恫喝訴訟とか口封じ訴訟というふうにも言われています。このネーミングが平手打ちを意味するSLAP、これと同音にしたことでキャッチコピー的な意味も持って認知も広がっていったとされ、米国では30を超える州で反スラップ法、スラップ被害防止法などが整備され、2022年には連邦議会にスラップからの保護法が提出されています。
また、EUをはじめ諸外国でもこの動きは広がっていますが、先ほども少しお話をしたとおり、我が国では時折報道でも取り上げられるようにはなってきていますが、明確な定義がなければ、訴訟制度改正の議論においてもなかなか話題にはなってきていません。
そこでまず政府に対してご質問させていただきますが、そもそもスラップ訴訟というものについてどのような認識であられるか。また、海外では法規制も既に導入されていますが、なぜそもそもこういうものが海外で規制されているのかという基本的な認識についてお答えをいただけますでしょうか。
松井民事局長:
お答え申し上げます。いわゆるスラップ訴訟については明確に定義されておりませんが、一般に公共の関心事に係る意見の表明等の行動をした者に対し、抑圧、萎縮、報復などの効果を狙って戦略的に提起された訴えに係る訴訟等と理解されております。
ご指摘のとおり、例えばアメリカの複数の州においては、いわゆるスラップ訴訟について一定の規制を行う法律を制定しているものと承知しています。アメリカの複数の州でこのような規制がされた背景等について、法務省において網羅的に把握しているわけではございませんが、いわゆるスラップ訴訟においては、相手方に応訴の負担を強いることにより、公共の関心事に係る表現の自由を萎縮させるおそれや、経済的、精神的負担を余儀なくさせるといった問題があることから、こうした問題に対応するために講じられたものと考えられます。
他方で、裁判を受ける権利を重視する観点から、このような法律の制定に消極的である州も複数あると承知をしています。
臼木ひでたけ議員:
ありがとうございます。私も同じような認識でありまして、先ほどありました意見表明をさせにくくする、また金銭的、様々な負担を、訴訟を提起されますと強いられますので、こういうことを目的として、本来の訴訟の目的とは違う目的での訴訟提起がされるということで大きな問題になっているということだと思います。ただ一方で、米国においても我が国においても、訴訟を受ける権利というものは保障はされていますので、これとの均衡、また調整が必要になってくるというところも全くおっしゃるとおりだと思います。
スラップ的提訴に対する司法の対応について
臼木ひでたけ議員:
当然、我が国でもスラップ訴訟と呼ぶか分類するかどうかは別として、こういった本来の訴訟の目的である権利確定や真実の解明を目的としないような、いわゆる口封じとか抑圧を主たる目的とするような提訴は、これは実際に過去にあったとは承知はしています。その際、司法はどのような対応がされてきたのかということについてもご説明いただいてよろしいでしょうか。
松井民事局長:
お答え申し上げます。お尋ねのような訴えの提起に対する対応は、事案ごとに裁判所が判断する事柄ではございますが、一般論としてお答えすれば、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときは、不法行為に該当し、損害賠償責任が生じ得るとした判例がございます。また、訴えの提起が著しく信義に反し、訴権を濫用する不適法なものであるとして、訴えを却下した判例もございます。
スラップ的訴訟への反訴可能性について
臼木ひでたけ議員:
ありがとうございます。今ほどありましたとおり、この提訴自体が著しく目的を欠く場合には不法行為に当たるということですので、これは一般論でお答えにはなると思いますけれど、当然このような、いわゆるスラップ訴訟と呼ぶかどうかは別としてですが、こういった相手の意見表明を抑圧したり、また相手に嫌がらせをするような目的で行われた訴訟に対しては、不法行為も成立し得るということですから、当然、訴えられた側からは損害賠償請求等の反訴も可能であるという理解でよろしいのか、ちょっとこの点もお答えをいただくことが可能でしょうか。
松井民事局長:
お答え申し上げます。反訴には民事訴訟法上、反訴の要件というものがございますけれども、その要件を満たす場合であれば、そのようなこともあり得るかと考えます。
臼木ひでたけ議員:
ありがとうございます。明確な定義はないけれども、実務上様々な形で処理はされてきているということではありますが、やはり一般の方というとあれですけれども、突然民事訴訟を提起されて、そして我が国の民事訴訟においては、基本的には原告、被告、それから訴訟物もどのような形で選ぶかは訴える側の自由に設定をされますので、突然訴訟の場に引きずり出されるという言葉が正しいかどうかは分かりませんが、訴訟の場に出ていかなければいけなくなり、また応訴をしなければ原告の主張が認められる可能性が非常に高いわけですから、こういった心理的な負担、精神的な負担、また時間的にも金銭的にも様々な負担を負いかねないという、これはある意味、司法、裁判制度の乱用、悪用というようなところの指摘もありますので、何らかの対応は必要ではないかと思います。
公益通報者保護法7条の限界について
臼木ひでたけ議員:
また今ほどずっと司法上の処理がされてきたということがありましたけれども、我が国でもこれに近い考え方が入れられた法制度がないわけではないと思います。
例えば公益通報者保護法の7条では、事業者は公益通報によって損害を受けたことを理由として、公益通報者に対して賠償を請求することができないという規定が入れられていますので、これは公益通報による保護法益が訴訟を受ける権利よりも優先されるんだろうということで規定されているものだと思っています。ただ近年、この公益通報者保護法の7条があっても、いわゆるスラップ的といいますか、嫌がらせであったり、公益通報をした、この公益通報を抑圧するような、また通報者を孤立させるような目的を持って訴訟提起がされることも見られており、これもまた報道等でも指摘され、問題となっています。
消費者庁には今日お越しをいただいておりますが、この公益通報者保護法7条、先ほど少し読みましたが、公益通報によって損害を受けたことを理由としては訴訟提起はできませんが、それ以外のことで訴訟提起をすることも実務上といいますか実体上あるわけですので、この公益通報者保護法7条の限界について、消費者庁としてどのように考えているかご説明いただけますでしょうか。
消費者庁飯田政策立案総括審議官:
お答え申し上げます。公益通報者保護法でございますけれども、現行法第7条でございますが、公益通報によって損害を受けたことを理由として、当該公益通報をした公益通報者に対して賠償を請求することができないと規定されている、これは委員御指摘のとおりでございます。これにつきまして、令和7年改正でございますけれども、この中におきまして公益通報者を特定することを目的とする行為というのも禁止されております。通報者探索を行った場合には、不法行為に該当することとなりまして、例えば民事裁判での敗訴につながり得る、あるいはその役員などが株主から経営責任を追及され得るなど、報復としての訴訟を行おうとする事業者に対する牽制効果が働くものとも考えられます。
さらに通報妨害行為というものが禁止されておりまして、事業者が公益通報を行おうとしている者に対して、報復としての訴訟をほのめかした場合にも、不法行為となって同様の牽制効果が働くものと考えております。このように公益通報者の保護を強化しているところではございますけれども、消費者庁といたしましては、一層の公益通報者保護の観点から、令和7年改正法の内容を含めまして、必要な周知に引き続き努めるとともに、公益通報に関する訴訟の実態についても十分に把握、注視してまいりたいと考えております。
EU公益通報者保護指令を踏まえた今後の考え方について
臼木ひでたけ議員:
ありがとうございます。昨年、法改正が行われ、今年の12月1日から、また内閣府の方で必要な指針というもの、これが動いていくものと思っていますけれども、先ほどご説明いただきましたが、探索行為は禁止をされると、また通報を妨害することも禁止をされるということですが、これ、別に特段こういうことをしなくても、たまたま知った、また知り得たことにより訴訟を提起すること、これ自体が妨げられるわけではありませんし、実際今見てみれば、そもそも公益通報に当たらないんだということで訴訟提起をすることは、これはもともと認められるし、これからも変わりません。
また、通報自体ではなくて、例えばそれに関連して守秘義務違反であるとか、民事上の名誉毀損であって、不法行為に当たるんだということで、これもまた民事の訴えを提起することは妨げられないということは、これは間違いないと思います。
この点、EUの公益通報者保護指令でいえば、公益通報を行ったことによる免責と訴訟却下を求める権利を通報者側には認める一方で、いわゆる乱用的通報に対しては罰則の規定を求める、罰則の規定を入れるということで、それぞれ通報者にも、また通報される側にも、さらなる抑止を入れているということで、当然それぞれに権利があるわけですし、それぞれの主張がありますが、節度を持って、当然社会的なルールに従って、それぞれ権利を行使する際には、きちんと責任を持って権利行使をしろという規定を入れるべきであろうということが、このEUの公益通報者保護指令では入っています。
一歩進んで、我が国においても、こういったそれぞれ、当然公益通報を行ったことによる通報者への権利行使についての保障を入れる一方、きちんと何か自分で意図的に、故意で、また乱用的になるような場合についての抑止規定も入れると、こういうことがやはり権利の対立がある場合には入れていく必要があるのではないかと思いますが、改正をしたばかりですので、まだ先の議論にはなりますが、この考え方について消費者庁の方からお考えを伺ってよろしいでしょうか。
古川内閣府大臣政務官:
お答えいたします。御指摘の報復からの保護措置や罰則等について定めているEU公益通報者保護指令の内容については承知しております。先ほど政府参考人からお答えしたとおり、まず損害賠償請求からの通報者の保護という観点では、公益通報者保護法では、公益通報によって損害を受けたことを理由として、当該公益通報をした公益通報者に対して賠償を請求することができないと規定されており、EU公益通報者保護指令と軌を一にするものと考えております。
また、令和7年の改正においては、近年の事業者の公益通報への対応状況及び公益通報者の保護をめぐる国内外の動向に鑑み、有識者による検討会を経て、公益通報をしたことを理由とする解雇または懲戒に対して刑事罰を新設するなど、通報者の保護の強化を図ったところです。いずれにいたしましても、消費者庁としては、まず本年12月1日の法改正の施行に向けた取組を着実に進めるとともに、通報者保護の強化に関しては、御指摘のEU公益通報者保護指令を含めた諸外国の事例、裁判例等の立法事実の蓄積状況等を把握するとともに注視してまいります。
臼木ひでたけ議員:
ありがとうございます。まずは、今年12月からも始まりますが、こういった指針をもとに実態の調査をしていただきたいと思います。
スラップ訴訟に対する法整備について
臼木ひでたけ議員:
この最初に話をさせていただいたこのスラップというものについては、民事訴訟が訴訟を受ける権利だからといって当然提起はできるのですが、その場にやはり引きずり出す、何度も言葉選びを自分で考えなければいけないのですが、引きずり出してくることを目的としてやっているわけですから、要は訴える側とすれば、高額な賠償金、損害賠償請求をするという、それで目的はほぼ達せらてるということですので、これも公益通報の本来の目的からすれば、なるべくその訴訟の場に出さないようにするということをやはり考えていく必要があると思いますし、このスラップ訴訟、今日質問したスラップ訴訟についても全般についても同じだと思います。これは日本国憲法の32条が定める裁判を受ける権利と、表現の自由、憲法21条などの基本的人権がまさに真正面から衝突しているということだと思います。何度も先ほどからお話をしていますが、我が国の民事訴訟では、被告も訴訟物もまずは原告が自由に設定して提訴することができますし、提訴されれば被告は応訴しなければいけない。金銭、時間的、精神的、肉体的疲労、様々なコストを負いますし、また今、こういうものを訴訟が、当然時間がかかりますので、こういうことがこれから減ることはおそらくないんだろうと思います。これから増えていくことについては、司法への信頼を損なうことにもなると思いますし、また限られた司法資源ですね、裁判所、またそこで働く皆様方の司法資源の浪費を防ぐという観点からも、やはりこれは少し、我が国としても前向きに検討していかなければいけないのではないかと思います。
そういう意味でも、このスラップ訴訟と呼ぶかどうかは別として、こういったいわゆるスラップ訴訟というものを、これをなるべく起こさないような仕組みというものを入れていく議論というのが、これからこの国会においても、ぜひやっていくべきであろうと思いますし、ぜひやっていただきたいと思います。
具体的には何があるのかといえば、先ほどもお話ししましたが、裁判を受ける権利ですので、当然裁判をするなということはできないでしょうから、そもそもスラップ訴訟をなるべく起こさせないような仕組みを入れる。例えば、先ほどありました訴訟の乱用による訴えの却下ということが下級審で認められていますが、特定の訴訟類型において、これはスラップであるという抗弁を入れれば、早めに先にこのスラップであるかどうかを審議して、場合によっては棄却、却下ということを早めに手続的にやっていくということであったり、また、これは弁護士費用の負担についても特定の訴訟では認められていますが、一般民事訴訟においては弁護士費用というのは原告、被告それぞれが負担することになっていますので、いわゆる片面的敗訴者負担制度というものですね。このスラップであれば、弁護士費用負担分の裁定をしていくとか、こういう様々な、提訴をされたとしても金銭や時間の浪費を最小限にとどめる仕組みを入れることもできると思います。こういった、海外で、特にアメリカではもう既に数十年の運用もありますし、こういうことも参考にしながら、我が国においてもスラップ訴訟に対しての法整備であったり、制度の整備ということをやっていくべきではないかと思いますが、最後、大臣の決意や思いも含めてご答弁をいただけますでしょうか。
平口法務大臣:
お答えをいたします。憲法で保障された表現の自由等を保護する観点から、いわゆるスラップ訴訟について法規制を求める声があることは承知をいたしております。表現の自由の保護は極めて重要でございますが、他方で裁判所において裁判を受ける権利も憲法で保障された重要な権利でございます。そのため、訴えの提起に何らかの制約を設けることについては、極めて慎重な検討が必要であると認識しております。
臼木ひでたけ議員:
ありがとうございます。ちょっと残念なご答弁だったなと思いますが、裁判を受ける権利の裁判というのは、これは当然適正な権利に基づく裁判の本来の目的である真相の解明、また権利の確定、これを行うこと、それを求める権利があるということですので、濫用的に制度を使う者まで保護に値するかということは、これは十分検討に値すると思います。
先ほどもお話をさせていただいたとおり、これは表現の自由との対立の中でどちらを優先していくかということは、時代が変わる中で真剣に議論していかなきゃいけないことだと思いますので、また機会があればぜひ質問や議論にも関わっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。
臼木ひでたけ(臼木秀剛)議員紹介
法務博士の知見を持つ政策のプロ
信州大学、新潟大学大学院(法務博士)で学んだ後、長年国会議員秘書として立法作業の裏方を支えてきた実力派です。国民民主党の職員としても党の政策立案に深く関わってきました。2024年の衆院選で初当選(比例北海道)し、農林水産委員会などで専門性を発揮。就職氷河期世代の課題解決にも積極的に取り組んでいます。
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