生成AIを「組織のOS」にするために。Ubieが実践するイネーブリングの全体像と"3つの浸透カテゴリ"
はじめに
こんにちは、Ubieのtamosan(@tamosan_01)です。 Ubie社内にて、内製システムや外部SaaSなどを組み合わせた生成AIソリューションの業務検証・定着施策を設計し、推進しています。
今日から始まる「Ubie Generative AI Advent Calendar 2025」。 そのトップバッターとして、今回は個別のツール論ではなく、「Ubieは組織としてどのように生成AIに向き合い、実装し、血肉にしているか」というイネーブリング(Enabling)の全体像についてお話しします。
以前のNoteでも触れましたが、私たちは生成AIを単なる「便利ツール」ではなく、医療現場の課題解決と組織の非連続な成長を実現するための「OS(基盤)」と捉えています。 2025年現在、私たちがどのような体制・プロセスでこの"熱い"取り組みを進めているのか、その裏側を公開します。
Ubieの生成AIスタンス:「攻め」と「守り」の統合
Ubieは、生成AIの活用を「業務QCD向上」「プロダクトの価値向上」「ブランドの価値向上」という3つの主軸(観点)で強力に推進しています。詳細は @masa_kazama の以下記事をご覧ください。
1. 業務QCD向上
全社的に生成AIを業務フローへ統合し、組織全体のパフォーマンスを高めるスタンスをとっています。
開発効率の向上: GitHub CopilotやCursorの導入により、開発者の生産性が約40%向上。
データ分析の高度化: BigQuery上でのAI活用やStructured Outputによる非構造化データの構造化により、分析工数を大幅に削減。
浸透施策: 社内利用率は100%となり、トップダウン(表彰制度)とボトムアップ(勉強会)の両輪で活用を推進。
2. プロダクトの価値向上(医療現場への還元)
技術トレンドを追いながら、これまで高コストだった医療現場の課題を生成AIで低コストかつ実用的に解決するスタンスです。
医療機関向けサービス: 紹介状や退院サマリ作成を支援する機能を開発。
成果: 実証実験において、医師の退院時サマリ作成業務を約15分から5分へ(最大1/3に)短縮することに成功。
3. ブランドの価値向上(業界への貢献と提携)
自社だけでなく、ヘルスケア業界全体での安全な活用をリードし、信頼性と技術力を高めるスタンスです。
ガイドライン策定・遵守: 「ヘルスケア事業者のための生成AI活用ガイド」を策定・公表し、業界のルール作りを主導。また3省2ガイドラインや政府指針への適合、社内へのAIガバナンスの実装を推進。
Google社との資本提携: 生成AIを含むデジタルイノベーションで日本の医療DXを加速させるべく、Googleからの資金調達・提携を実施。
このようにUbieでは生成AI利活用において攻めと守りをどちらも強固に実施し、「危ないから使わない」ではなく、「安全に使い倒すためのガードレール(学習オフ、情報区分規程)を最強にする」という思想で取り入れています。これにより、社員は迷いなくアクセルを踏むことができます。
組織浸透のロードマップ:「3つのカテゴリ」
「なんとなく便利そうだから使ってみよう」だけで展開するのは、組織全体の力にはなりません。私たちは生成AIの活用において、明確な「3段階の浸透カテゴリ」を定義し、それぞれに到達基準(Exit Criteria)とKPIを設けて管理しています。このカテゴリは必ずしもフェーズとして順序づけられたものではなく、そのソリューションの位置付けによって適切にイネーブリングを推進するための区分として利用しています。

検証カテゴリ
まずはPoCチームにて、限定的なスコープで「Ubieにとってそのソリューションに価値があるか」を明瞭にします。闇雲に広げず、少数のパイロットチームで「再現可能な手順書の初版(v0)」を作るまでが勝負です。
定義: 「なぜそのAIソリューションを使うのか」「なぜ使わないのか」を言語化するカテゴリ。
到達基準: 効果量が閾値を超える(時間削減、品質向上等)、または見送り理由が明確になるか、リスクレビューの完了。
代表例: Jira×AIパートナー連携の実証、PLAUD(音声デバイス)経由のデータ蓄積PoVなど。
段階浸透カテゴリ
価値が証明されたものを、特定の業務・チームへ標準化して広げます。「お触り会」やハンズオンなどのイネーブリング活動、特に生成AIチームと各部署との連携が重要になります。
定義: 標準運用に必要な部品化(テンプレート、FAQ)と習熟を進めるカテゴリ。
到達基準: 対象母集団の継続利用率(例: 週次50%以上)、標準手順・トラブルシュートの完備。
代表例: 社内生成AIソリューション(DevGenius)/問い合わせ管理サービス(Otter)のアーリーマジョリティへの展開。
全体浸透カテゴリ
利用しているソリューションについて、全社で「当たり前」の状態にします。
定義: 全社デフォルト装着。人間介入を10%以下へ抑える「パフォーマンスAI」を目指すカテゴリ。
到達基準: 全社公開完了、監査・ガバナンスの定常運転、OKR/AC目標(AIフィードバック受容率等)の達成。
KPI: 人間作業削減率、リードタイム短縮率、AI支援の受容率(60%以上)。
代表例: 会議録音→自動文字起こし→Notion格納→Slack通知の一連の自動化フロー(こちらの施策は後日別記事にてご紹介します)
例えばPLAUD(検証カテゴリ)について運用を考慮した全従業員向けガイドを作成しても利用していない人にとっては何のことか分からなかったり、社内問い合わせソリューション(段階浸透)について#all-announcementで周知しても、特に問い合わせを受けてない人からすると知っても意味がなく、イネーブリング効果が最大化されません。このように、対象のソリューションはどのカテゴリに位置付けているか明確にすることで、施策の打ち手を間違えないようにしています。
生成AI活用のレベル定義
Ubieでは、個人での生成AI利活用を計測し自己成長できるようにするべく、「どの程度の深さで使いこなしているか」という活用レベルも定義しています。そして従業員のレベルを向上することで2030年に向けて「2025年時点での既存の人間作業をゼロ」にする施策を推進しております。

Lv.1 個人活用×試用 知的好奇心を起点に「まずは触れてみる」段階。個人的な学びや興味の対象としてAIの可能性を探ります。
Lv.2 個人活用×改善 「自分の業務をどう良くできるか」を追求する段階。実用的なツールとして自身の生産性と質を向上させます。
Lv.3 チーム活用×価値協創 「チームのアウトカム最大化」を主語にする段階。顧客への価値提供や組織課題の解決を自律的にリードします。
Lv.4 事業活用×創造 事業の変革ドライバーとして扱う段階。ゼロベース思考で事業の非連続な成長や新規機会を創出・牽引します。
Lv.5 全社活用×変革 業界や社会へのインパクト(Giant Leap)を目指す段階。ミッション達成に向けた根本的な革新をもたらします。
生成AI活用を支える「イネーブリング体制」と「最強の基盤」
生成AIイネーブリングは、現場のニーズを探索しつつ生成AIソリューションで有用となる「武器」すなわちデータ基盤やアプリケーション、各種サービスの検証や展開、実践定着を推進するのですが、弊社としてはその基盤およびアプリケーションの整備も体制を整備して推進しています。

イネーブリング体制
Ubieでは生成AIを推進する部署を独立して設立し、各浸透カテゴリを推進する役割を明確化しています。当該部署の一つとしてイネーブリング体制があり、CoEとしてソリューションの検証や段階浸透、全体浸透を設計しています。また各部署から生成AIオペーレーションマネージャーを配置して、現場に根ざした生成AI施策の推進をしています。
データ整備チーム、社内生成AI開発チーム
イネーブリング体制以外の社内利活用チームとして、生成AIの利活用効果を最大化するために社内データを整備するチームと、社内向け生成AIソリューション(DevGenius、Otter)を開発・運用するチームがあります。これらのチームと密にコラボレーションしながら、従業員の業務ニーズと社内向け生成AIソリューション開発を高速で検証し日々リリースしています。
利用環境・ツールスタック
「使いたい時に最適なツールが手元にある」状態を作るため、内製環境とSaaSをベストミックスで提供しています。
LLM/Chat: Gemini, GPT, Claude, Perplexity, Notion AI
Dev/Ops: Copilot, Cursor, Azure OpenAI, v0
Integration/Workflow: n8n, Zapier
Others: Miro, Aqua voice, Supermemory など
Data: Notion, GCS, BigQuery など(Slackなどのフロー情報は各種データ基盤に配置、後日その取り組みについてご紹介します)
これらはSlackのスレッドで日々「このソリューションを実現するにはどれがいい?」「Geminiで新機能出た!」と議論され、それらが社内向け生成AIソリューションに即座に反映されています。
実績とこれから
こうした取り組みの結果、社内では「会議要約の自動格納」や「問い合わせの一次回答自動化率が50%達成」などが定着し、大幅な工数削減を実現しています。その結果をさらにビジネス価値に繋げるための生成AI x データ活用を推進しています。また、プロダクトである「ユビーメディカルナビ 生成AI」は「生成AI大賞2024」で特別賞と優秀賞をW受賞いただくなど、社内外での利活用が活性化しています。
しかし、まだ道半ばです。 私たちは人間が本来注力すべき「創造的な業務」「患者さんに向き合う時間」を最大化するために、これからも生成AIという強力な武器を磨き続けていきます。
明日以降のアドベントカレンダーでは、各部署、各職種のメンバーが、部署としての方針をご紹介したり、より具体的な「やってみた」「作ってみた」事例を深掘りしたりと豊富なコンテンツをお届けします。ぜひお楽しみに!
また弊社ミッションの推進をwith AIで加速していくことに興味をお持ちの方、現在積極募集中です。ぜひお気軽にお声がけください!
