ノイズレスを捨てた日、僕は本当のストラトに出会った!——お茶の水の楽器店員に『もったいない』と失笑された男の真実

「そんなの、もったいないですよ。なんでわざわざ性能を下げるんですか?」 お茶の水の楽器店で、僕は店員に呆れたような顔で聞かれました。
僕の手元にあるのはフェンダー最新技術の結晶である「ノイズレス・ピックアップ」を搭載したストラトです。そして僕が持ち込んだのは古めかしい構造の「リンディーフレーリン Real54」です。 最新の静寂を捨てて、半世紀以上前の不器用なトーンへいくことにしました。 ギター歴25年、一人の男が「利便性」という名の魔法を解き、剥き出しの「本物の音」に辿り着いた物語をここに記したいと思います。

性能の高さが「音の生命感」を殺していないか?

現代のピックアップは優秀です。ノイズを遮断し、どんな環境でもクリアな出力が得られます。それはプロの現場において、一つの正解だと思います。 しかし僕が求めていたのは「正解」ではなく「感動」でした。
ノイズを消すプロセスで、同時に失われている「弦の震え」や「ピッキングの繊細なニュアンス」が出るようになりました。整いすぎた音は時にプレイヤーの感情を平坦にしてしまいます。

ヴィンテージの亡霊を追いかけて

——アルニコ3が鳴らす「1954年の記憶」

僕が選んだのは受注生産体制へ移行したことでも知られる孤高の工房『リンディーフレーリン』の『Real 54』です。 1954年当時の仕様を追求し、あえて磁力の弱いアルニコ3マグネットを採用したモデルです。 店員に「もったいない」とまで言わせた決断の先にどんな景色が待っていたのか?

指先が弦を「視る」ような感覚

換装を終えて、アンプから最初の音が出た瞬間、空気の密度が変わりました。 ノイズレス時代には感じられなかったピアノのような深い奥行きと、空に抜けるような煌びやかな鈴鳴りです。 特筆すべきはピッキングへの反応です。 弱く弾けばまるで吐息のような繊細さです。
強く弾けば粘り強く叫ぶような音が出ます。
ノイズは確かに増えた。しかしそれを補って余りあるほどの「楽器としての生命感」がそこには宿っていました。

便利さの先にある不自由な贅沢

「欠点こそが愛おしい」という結論

最新のピックアップは欠点を埋めるために作られます。
対してリンディのピックアップはヴィンテージという「不完全な美しさ」を再現するために作られています。 ノイズが出ることやパワーが少し弱く扱いにくいといったことが挙げられます。 その不完全さこそが、奏者の癖を引き出し、唯一無二のトーンを形作ります。

リンディーフレーリン搭載のギター

1. Nashguitars(ナッシュギター)

エイジド加工(レリック)ギターの代名詞的存在であるNashguitarsはほぼ全てのモデルにリンディーフレーリンを標準搭載していることで有名です。

  • S-57 / S-63(ストラトタイプ): ヴィンテージホットやウッドストックなどが搭載されています。

  • T-52 / T-63(テレキャスタイプ): ストックテレやブルーススペシャルが中心に搭載されています。

  • PB / JB(ベース): プレベ、ジャズベタイプにもリンディーフレーリンが採用されています。

2. Momose Custom Craft Guitars(モモセ)

日本のディバイザー社が展開するハイエンドブランド「Momose」の「Vintage Series」の一部において、リンディーフレーリンが標準搭載されています。

  • MST / MTL シリーズ: 一時期、上位モデルにおいて「Lindy Fralin Real 54」や「Stock Tele」が標準採用されていました。(※現在は自社製オリジナルピックアップに移行しているモデルも多い為、現行品はスペック確認を推奨します)

3. Creston Guitars

独創的なデザインと高い演奏性で知られるアメリカのハンドメイドブランドです。

  • リンディーフレーリン本人と非常に親交が深く、ほとんどのギターに彼のピックアップが搭載されています。特に「Creston Special」などのユニークなモデルでみかけます。

4. Bill Nash / LSL Instruments(初期の一部)

LSL Instrumentsなどのハンドメイド系工房も初期の生産分や特定のオーダーモデルでは、その信頼性の高さからリンディーフレーリンを標準としていたケースが多くみられます。

昔はサウンドハウスで購入できましたが、在庫限りです。
ないものに関して、直接オーダーしなければなりません。早めに購入するか、オークションで出るのを待つしかありません。


あの時、お茶の水の店員に言いたかったです。 「もったいないのは便利さと引き換えに耳を塞いでしまうことだ」とヴィンテージ本体は買えないけど、ピックアップを代えることで近づくことはできます。
スペックやカタログスペックを超えた先に、真の「いい音」は存在します。 もし今のギターが「綺麗すぎる」と感じているなら、一度その魔法を捨ててみるのも悪くはありません。 そこには四半世紀ギターを弾き続けてきた僕ですら、思わず手が止まるほどの衝撃的な再会が待っているはずです。


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