野球場の記憶 その1
初めて、プロ野球を見に行った。
高いネットがそびえる下の入り口。
階段を上がるとスタンドが一望できる。
バックネット裏に陣取る。
ビジターチームのバッティング練習が終わり
シートノックが始まる。
スタジアムは、半分くらいの観客がザワザワとしている。
ノック終了。
グランド整備が始まる。
スタンドの空白が埋まって、ほぼ満員
背番号13番がマウンドへ上がる。
身体を沈めて、地面スレスレから右手が浮かび上がってくる。
乾いた音がミットから響く。
その途端、太鼓や笛、鐘がリズミカルに打ち鳴らされる。
「スットラ〜イク」
審判が右手を突き上げる。
長い爪楊枝をくわえた黒人選手がバッターボックスに入る。
忙しなく動く爪楊枝。
バットが空を切る。
「ブーン」
スイングの音がグランドからスタンドへ
波紋のように広がる。
阪神は背番号11番。
ザトペック投法で、相手を寄せつけない。
試合は進んで、ラッキーセブン。
中日がチャンスを作る、一打同点。
ピッチャーが大きく振りかぶる。
地響きのような唸り声。
投手へプレッシャーをかける。
ミットにボールがおさまって、審判の判定。
「ストライク!」
気合いの入った声と同時にスタジアム全体がため息で包まれる。
勝負どころになると、鳴り物は止まり
お客さんの息遣いが球場の空気を支配する。
球場の空気を野球ファンがが優しく包んでいた。
のどかな時代だった。
そんな空気を切り裂くようなにトランペットの音が球場で響き渡った。
続きは、その2へ
