女帝と呼ばれた同行人|タナカ日記|2026.2.9
4月から始める仕事の都合で南伊豆町へ。
ちょっとした小旅行のつもりが、
ストレスのたまる惨事修行となった。
惨事をまとめる。
まず、前の晩から腹を下した。
昼飯に極太麺の台湾ラーメンを2.5玉食べたのが原因なのか、夕飯に高級すき焼きを食べたのが原因かはわからない。
深夜からトイレにこもり、
早朝起きてもなお痛みは引いてなかった。
出発してからもお腹はゆるく、駅のトイレを
何度もはしごした。
道中の運転を任されたので、多少気が紛れたのが幸いだった。遠出の腹下しほどイヤな気分になるものはありません。
加えて、前日の雪が原因で、
高速道路は厚木から南が全面封鎖。
それに伴い高速道路に沿った一般道は大渋滞。
厚木で高速を下されてからは1時間かけてやっと100メートル進めるほどの牛歩速度。
山中なのでコンビニなどは一切ない。
集中力以外にもワタシは便意とも勝負しなければならなかった。
11時には南伊豆へ到着し、昼食は海鮮丼なんて優雅な計画をしていたのが水の泡。
それどころかお客さんのアテンドを予定する
13時にさえも到底間に合わない。
同行人の発案で急遽レンタカーを乗り捨て、
平塚から南伊豆へ電車で向かうことに。
電車に切り替えても最短最速ルートを探して
何度も乗り継ぎ、駅を駆け抜けた。
熱海でなんとかして目指していた電車に
コンマ数秒の差で無我夢中に乗り込んだ。
ただ、この乗り込んだ電車は「踊り子」という特急でその特急の中でもサフィール踊り子という食堂列車が付き、全席グリーン席という高級列車だった。
つまり、乗り込むには事前予約が必要だった。
しかしこの電車に乗らないと、
予定の時間から数時間の大幅遅刻が確定する。
「降りてもらうしかないでしょう」
事前予約していないワタシたちへ
車掌は無慈悲に告げた。
「この電車は普通の踊り子とは違って、
絶対予約が必要ですし、立ってのご乗車は他のお客さまのご迷惑になるので絶対だめです」
せっかく予定の時間に間に合う希望を残した
電車に乗り込めたが、ここでこれまでの
頑張りが潰える。
断念して下車しようとした。
「私に任せてちょうだい」
70才をこえた同行人がウインクしながらワタシに耳元でささやき、少し離れているようにと促した。
ワタシはデッキに移動して同行人と車掌が話しているのをガラス越しに見ていた。
数分後、70才こえた同行人が
腰を曲げながら駆け寄ってきて
「いけたわよ!」
と悪だくみした顔つきでガッポーズした。
車掌も遅れてついてきた。
先ほどの無愛想な表情はどこかへ消え、
むしろ遜った様子でワタシたちにチケットを
渡して去っていった。
70才こえた同行人が車掌を
どう口説いたかはわからない。
訳を聞くと、
「私は昔、女帝と呼ばれていたのよ」
同行人は、スナック菓子を頬張りながら
踊り子から見える窓外の海を眺めていた。
