腸内環境の役割〈吸収できなければ意味がない〉 | 食事 - 12
腸内環境を整えるには、発酵食品や乳酸菌を摂ればよいと思われがちです
しかし実際には、それだけで腸内環境が良くなるわけではありません。
大切なのは、腸内細菌に偏った餌を与えないこと、そして消化・吸収できるだけの身体の状態を整えることです。
食事の偏りやカロリー不足が続いていると、いくら腸活を意識しても、栄養をうまく吸収できず、便通や肌、メンタルの不調につながることがあります。
この記事では、腸内環境と腸内フローラの基本、善玉菌信仰の誤解、腸内環境が悪化する原因、そして普通の腸活でうまくいかない人に多いSIBOやリーキーガットまで整理して解説します。
✅この記事でわかること
腸内環境・腸内フローラの仕組みと善玉菌信仰の誤解
多様な食材が腸内フローラに良い理由
腸内環境が悪化する3つの原因と改善の3ポイント
腸活で効果を感じない人向けのSIBO・リーキーガットの解説
👩🏫腸内環境とは
腸内環境とは多くの場合、大腸の環境を指します。
ただ、「腸内環境を整える」というと、小腸から大腸までの腸全体に存在する腸内細菌の集まりである「腸内フローラ(腸内細菌叢)」やその活動を含みます。
腸内フローラ(腸内細菌叢)とは
腸内フローラとはヒトや動物の腸の内部に生息している細菌の集まりです。
ヒトでは約3万種類(100兆〜1000兆個、構成菌種の総数が500〜1000種)が生息して1.5〜2kgの重量になると言われています。
腸内フローラの多様性を高めるには、多様な食品をバランスよく食べることが重要です。
小腸とは
小腸は食べたものの消化・吸収や免疫機能を担います。
大腸とは
大腸は小腸で吸収しきれなかった栄養素や水分の吸収・排泄物の形成・排出を行います。腸内フローラは大腸に9割が生息しています。

💡腸内細菌の餌は大きく4つ
では、そもそも腸内細菌叢の餌になるものは大きく以下です。
食物繊維
主な餌の一つです。特に水溶性食物繊維や高発酵性食物繊維は特定の腸内細菌の増殖を促し、酪酸などの短鎖脂肪酸を産生します。短鎖脂肪酸は腸管のエネルギー源になるほか、腸の粘液分泌を促す重要な働きをします。オリゴ糖
ゴボウやタマネギなどに多く含まれ、特定の種類の腸内細菌に利用されやすいことが知られています。レジスタントスターチ
小腸で消化されずに大腸まで届くデンプンのことで、これも腸内細菌の栄養源となります。未消化のタンパク質や脂質
小腸で消化・吸収されずに大腸まで届いたタンパク質や脂質も、腸内細菌の代謝に利用されます。
現代食はタンパク質・脂質過剰気味です。炭水化物(糖質+食物繊維)もしっかり食べて腸内環境を整えていきましょう。
⚠️腸内環境が悪いってどういうこと?
腸内環境が悪いと消化・吸収機能が低下し、栄養素が十分に体に吸収されなくなります。その結果、栄養失調や全身倦怠感などの症状につながります。
腸内環境が悪化しているサインとして以下のような症状が出やすいです。
便・お腹の不調:
便秘・下痢・軟便・お腹の張り・膨満感・おならが臭う・腹痛・胃痛・食欲不振美容・身体の不調:
肌荒れ・ニキビ・乾燥・下腹ぽっこり・冷え・むくみ・慢性的な疲労感・免疫力の低下メンタル・精神的な不調:
イライラ・やる気が出ない・メンタルの落ち込み・不安感・集中力・記憶力の低下
腸内環境が悪化する原因は大きく3つあります。
1. 「食事の偏り」による腸内環境の悪化
特に現代人の食事は以下の特徴があります。
・低炭水化物(主食や野菜が少なく食物繊維が少ない)
・高タンパク・高脂質食
これにより、腸内フローラの多様性が低下して、腸内環境の悪化につながっている可能性があります。
2. 「消化能力」の低下による腸内環境悪化
胃や腸の働きが適切でない場合や、食事の内容・量・摂取タイミングなどが原因で消化能力が低下します。
消化機能が低下すると未消化物が腸に流れ込み、それを餌とする腸内フローラが異常増殖してバランスが悪化します。
さらに腸粘膜の刺激により炎症が起き、SIBO・過敏性腸症候群・リーキーガット症候群などの発症につながります。
消化不良のサインとして以下があります。
胃痛・腹痛・腹部膨満・吐き気・食欲不振・下痢・おなら・体重減少など
3. 「代謝低下」による腸内環境悪化
代謝低下は腸内環境に直接関係するわけではありませんが、消化能力の低下に関係があります。
胃酸分泌も体内のエネルギー代謝に依存しているためです。
このような流れで悪化していきます。
代謝低下
→ミトコンドリア機能の低下
→エネルギー産生量低下
→消化器官のエネルギー産生量低下
→消化機能が低下
以下の症状がある人は代謝低下による消化能力の低下の可能性があります。
無気力・疲労感・むくみ・寒がり・体重増加・動作緩慢・記憶力低下・便秘など
以上のように、腸内環境は食事内容だけでなく、消化能力・代謝低下によっても悪化します。腸活を意識している人は、食べるものだけでなく、そもそもの体の状況も考慮できると良いです。
✅多様な食材が腸内フローラに良い理由
腸内にはそれぞれ好む餌が異なる多種多様な細菌が生息しています。
さまざまな食材を摂ると、より多くの種類の腸内細菌に栄養が供給され、腸内細菌の多様性が高まります。
そして、この多様性が、バランスの取れた腸内環境を維持する上で重要です。多様な食材を摂ることで腸内細菌叢の多様性が高まり、以下のメリットが生まれます。
腸管バリア機能の向上:
多様な腸内細菌が腸の粘膜を厚くし、外部からの刺激に対するバリア機能を高めます。健康状態の維持:
腸内細菌叢の多様性が高いほど全体的な健康状態が良好であることがわかっています。有用な代謝産物の産生:
食物繊維の発酵によって作られる短鎖脂肪酸をはじめ、腸内細菌は健康に役立つさまざまな物質を産生します。
❌よくある誤解:善玉菌信仰
「腸内環境を良くするには発酵食品・乳酸菌・善玉菌」という情報をよく耳にします。しかしこの考え方には誤解が含まれています。
腸内環境をわかりやすく説明する例として、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」がよく使われていますが、これは我々にとって分かりやすく説明するものであり、医学用語ではありません。
善玉菌:2割
悪玉:1割
日和見:7割
さらに、「善玉菌」は健康に良く、「悪玉菌」は害を及ぼすと思われています。
しかし実際には、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の身体への影響は、
・腸内フローラが存在する環境や状況
・その人の全体的な健康状態・免疫状態・他の腸内微生物
などとの相互作用などによって変わります。
例えば日本人とアメリカ人でも食べるもの全然違いますので、腸内環境も異なります。
さらに、7割を占める日和見菌の存在を忘れていることが最大の問題です。
善玉菌と悪玉菌を相殺する考え方よりも、最初からいろんな食材を摂ることでさまざまな菌を増やす方が腸内環境にはよいです。
🌏腸内フローラは人のコミュニティのようなもの
腸内フローラはひとつのコミュニティのようなものです。
正義感強い正統派ばかりでも、個性派な異端児ばかりでも良くありません。
さらに、5人のコミュニティで3人で2対1の対立が起きると大惨事ですが、5,000人のコミュニティであれば3割(1,500人)が対立しても残りの大多数は巻き込まれません。
腸内フローラも同じで、
・発酵食品でサプリで、いわゆる善玉菌ばかり摂ったり
・高タンパク質・高脂質で、いわゆる悪玉菌ばかり増やしたり
するのはあまり良くありません。
以上より、腸内フローラは善玉菌や悪玉菌と考える前に、様々な食材を摂ることが良い腸内環境に繋がることがイメージできましたでしょうか。
🔽いろんな食材の取り方は以下の食品カテゴリを参考にしてみてください。
発酵食品や乳製品、海藻など、全部カバーしてます。
🔥【実践】腸内環境改善の3ポイント
腸内環境を良くするということは、腸内フローラと腸内をクリーンにすることです。
以下の3ポイントで整理できます。
1. 消化力を上げる
適正カロリーを摂取する
食事前後30分以内に水をがぶ飲みしない
しっかり噛んで消化しやすくする
白米や野菜スープなど、消化のしやすいものメインで食べる
2. 腸内細菌叢の多様性を上げる
いろんなものを食べる(特に食物繊維・穀物・野菜)
ガスが溜まったり肌荒れする場合は低FODMAPを意識してみる(後述)
PFCバランスを意識して高タンパク・高脂質食を避ける
3. 排泄力を上げる
便秘気味なら運動して排泄を促す
下痢気味なら下痢しやすいものを減らす(ガム・お菓子・ジュース・乳製品・0kcal商品・大豆製品・カフェインなど)
🔥 【発展】普通の腸活で効果を感じないあなたへ
腸活を意識しているのに効果を感じない、発酵食品を食べるとむしろお腹の調子が悪くなるという人は、「SIBO」や「リーキーガット症候群」が関係している可能性があります。
■ SIBO(小腸内細菌異常増殖症)
SIBOとは通常少ないはずの小腸で細菌が異常増殖し、食事を発酵させて大量のガス(水素・メタン)を発生させる病気です。過敏性腸症候群(IBS)と合併しやすく、IBS患者の約6割が実はSIBOだったというデータもあります。
主な症状は以下の通りです。
食後の腹部膨満・苦しさ(食後にお腹がパンパンに張る)
ガス・ゲップ・おなら(異常なガスの発生)
便通の異常(下痢や便秘、または交互に繰り返す)
胃酸の逆流・栄養吸収障害(鉄・ビタミンB12など)
以下に当てはまる人はSIBOの可能性があります。
食後にお腹が張りやすい
ヨーグルト・キムチ・納豆などを食べるとお腹の調子が悪くなる
下痢や便秘を頻繁に繰り返す
げっぷ・おならがよく出る
胃薬(制酸剤)を常用している
空腹時にお腹がグーっとならない
原因は小腸の運動低下・胃酸減少・過度な腸活(発酵食品・食物繊維の摂りすぎ)などです。治療・改善には低FODMAP食や抗生物質を使用しますが、日本ではまだ診断・治療が難しいのが現状です。
■ リーキーガット症候群

リーキーガット症候群(腸管漏出症候群)とは腸壁のバリア機能が低下し、本来は通過しないはずの未消化物・毒素・細菌などが血流中に漏れ出す状態です。
腸の細胞同士を密着させている「タイトジャンクション」という構造が壊れ、細胞間に隙間ができることで物質が漏れ出します。腸内環境が乱れたらほぼ起こる現象であり、SIBOもIBSもクローン病もリーキーガットが起きている可能性が高いと言われています。

さらに、腸内細菌叢のバランスが悪化・多様性が低下すると、グラム陰性菌などの炎症物質を産生する菌が増えることが多いです。
炎症物質が増えることで身体が免疫反応を活性化し、炎症性物質を攻撃します。同時に身体の細胞も傷つけてしまいます。
通常の血液検査や内視鏡検査では見つかりにくいため、遅延型アレルギー検査(IgG抗体検査)や腸管の透過性を調べる特殊な検査が用いられることがあります。
主な症状は以下の通りです。
消化器:腹痛・下痢・便秘・お腹の張り
全身・精神:慢性的な疲労感・不眠・集中力の低下(ブレインフォグ)・不安感
肌トラブル:ニキビ・じんましん・アトピー性皮膚炎
その他:関節痛・食物アレルギー・自己免疫疾患への関与
原因と考えられる要因は以下の通りです。
食事:小麦(グルテン)の過剰摂取・白砂糖・人工甘味料・加工食品(添加物)・過度の飲酒
生活習慣:慢性的なストレス・睡眠不足
薬・病気:抗生物質の多用・鎮痛剤(NSAIDs)・腸内環境の乱れ

なお、カゼイン・グルテン・サポニン・レクチンがリーキーガット症候群を引き起こしやすいと言われています。
「牛乳(カゼイン)や小麦(グルテン)が危ない」とSNSで騒がれるのもここが原因と考えられます。
ただ、サポニン・レクチンを含む食品には豆類・じゃがいも・トマト・玄米などがあります。
大豆は発酵食品に置き換えることでサポニン・レクチン量を減らせるという研究もあります(納豆・しょうゆ・みそで約80%減少)。
これらはSNSで騒がれていませんが、いつ誰が騒ぎ始めるか分かりませんね。
💡アプローチ方法
検査をしようがしまいが、対策としては結局食生活の見直しが基本です。
自分でできる対処法としては以下のアプローチが有効です。
症状を引き起こしている食材を特定して減らしてみる
低FODMAP食材を取り入れてみる
腸内環境を整えた上で、徐々に症状を引き起こしていた食材を食べる
避けるものの目安は以下の通りです。
高FODMAP食材:
砂糖・小麦・乳製品・カフェイン・発酵食品・はちみつ・オリゴ糖などリーキーガット関連:
カゼイン・グルテン・サポニン・レクチン
ただし全部が全部あなたの症状を引き起こしているわけではありません。
時間をかけて腸内環境を整えた上で、徐々にまた取り入れるようにしましょう。
📝まとめ
腸内環境を整えるうえで大切なのは、発酵食品や乳酸菌だけを増やすことではありません。
腸内フローラは多様な菌の集まりであり、特定の菌だけを増やすよりも、さまざまな食材をバランスよく摂って多様性を保つことの方が重要です。
また、腸内環境は食事内容だけで決まるものではなく、消化能力や代謝の状態にも大きく左右されます。
高タンパク・高脂質・低炭水化物の食事、消化不良、慢性的な代謝低下が重なると、腸内環境は悪化しやすくなります。
その結果、便通異常やお腹の張りだけでなく、肌荒れ、疲労感、集中力低下、気分の落ち込みなど、全身の不調につながることがあります。
腸活をしているのに改善しない場合は、発酵食品を足すことよりも、まず食事全体の偏りを見直し、消化しやすい状態を作ることが優先です。
それでも改善しない場合は、SIBOやリーキーガットのような状態も視野に入れて考える必要があります。
この記事を読んで、腸内環境を良くしていきましょう!
