居酒屋のメニューは「料理」ではなく「チーム」で考える
飲食店をやっていると、
「どうやって新メニューを考えているんですか?」
と聞かれることがあります。
おそらく多くの人は、料理人が新しいレシピを考え、試作し、完成したらメニューに載せる。
そんなイメージを持っているのではないでしょうか。
もちろん間違いではありません。
しかし、実際に店を運営している立場からすると、メニュー作りは少し違います。
私の感覚では、メニュー作りは料理開発というよりも、
チーム編成に近い。
野球でもサッカーでも構いません。
強いチームを作る時、監督は選手を一人ずつ見ていますが、本当に見ているのはチーム全体のバランスです。
居酒屋のメニューも同じです。
一品一品を考えているようで、実際は全体のバランスを考えている。
今日はそんな「居酒屋のメニュー設計」について書いてみたいと思います。
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メニューは大きく2種類に分かれる
私の場合、メニューは大きく分けると2つです。
・ベースメニュー
・季節メニュー
ベースメニューは一年を通して使う商品。
季節メニューは旬の食材やイベントに合わせて入れ替える商品です。
お客様から見ると単純な話です。
しかし店側からすると、もう少し複雑になります。
例えばベースメニューにも種類があります。
通年で使うもの
一年中ほぼ変わらない商品です。
定番の唐揚げやポテトフライのようなもの。
お客様がいつ来ても注文できる安心感があります。
素材だけ変えるもの
調理法は同じ。
しかし季節によって食材を変える。
例えば天ぷら。
春は山菜。
夏はとうもろこし。
秋はきのこ。
冬は牡蠣。
こんな感じです。
素材は同じで調理法を変えるもの
こちらは逆です。
例えば鶏肉なら、
・唐揚げ
・油淋鶏
・ヤンニョムチキン
・スパイスチキン
などなど。
同じ食材でも違う商品になります。
こうして考えると、実際に店で使っているメニュー数よりも、頭の中にはもっと多くの候補があります。
ここが大事なポイントです。
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メニューは完成品ではなく資産である
飲食店を始めたばかりの頃は、
「新しいメニューを作らなければ」
と思っていました。
しかし長く続けていると考え方が変わります。
本当に大事なのは、
新しいメニューを作ることではなく、使えるメニューを蓄積することです。
例えば夏メニューを考えたとします。
10品考えた。
実際に採用したのは5品。
残り5品は不採用。
普通ならここで終わりです。
しかし私は終わりだと思っていません。
その5品はストックになります。
来年使うかもしれない。
再来年使うかもしれない。
あるいは別の商品に派生するかもしれない。
つまり不採用ではなく、
控え選手なのです。
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強い店ほど「2軍」が厚い
スポーツでも強いチームは控え選手が強い。
飲食店も同じです。
開業したばかりの頃は、
「夏メニューどうしよう」
から始まります。
しかし数年営業すると状況が変わる。
過去に作った商品。
試作した商品。
期間限定で出した商品。
SNSで反応が良かった商品。
いろいろなデータが蓄積されていきます。
すると、
ゼロから考えるのではなく、
手持ちのカードを組み合わせる作業になる。
これは非常に大きい。
毎回フルスクラッチで作る必要がなくなるからです。
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メニューは食材から考える
ここは一般のお客様には意外かもしれません。
店側は料理から考えるとは限りません。
むしろ、食材から考えることが多い。
例えばとうもろこし。
夏だからとうもろこしを使いたい。
そこで考える。
・とうもろこしの天ぷら
・焼きとうもろこしバター
・とうもろこしのアヒージョ
・とうもろこしのポテトサラダ
というように展開していく。
すると自然と複数のメニュー案が生まれる。
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なぜ複数展開するのか
理由は単純です。
ロスを減らしたいから。
一つの商品だけのために仕入れると危険です。
売れなかったら終わり。
しかし3〜4商品に展開できれば話が変わります。
どれかが売れれば食材は回る。
結果として廃棄も減る。
利益も残りやすい。
そして面白いことに、
複数展開を前提に考えるとアイデアが増える。
「新しいメニューを考えよう」
だと苦しい。
しかし、「この食材であと2品作れないかな」
と考えると自然に出てくる。
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展開できない食材もある
もちろん全ての食材が万能ではありません。
どうしても用途が限られるものもあります。
そういう食材はスポット採用。
短期間で使い切る前提。
期間限定商品として扱う。
お客様から見れば限定感。
店側から見れば在庫リスク管理。
両方にメリットがあります。
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毎月少しだけ変える
私はメニューを大きく変えるより、
小さく変える方が好きです。
月に1回。
あるいは1〜2品。
それだけでも十分。
お客様は意外と変化に気付きます。
新商品が10品増える必要はない。
1品でも増えれば、
「何か変わった」と感じる。
この感覚が大事です。
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メニューには役割がある
ここからが経営の話になります。
私は全てのメニューに同じ役割を求めていません。
選手にも役割があるように、
メニューにも役割がある。
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客寄せ選手
原価率は高い。
利益率は低い。
でも集客できる。
SNSで拡散される。
話題になる。
店の顔になる。
こういう商品は必要です。
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スター選手
利益率も良い。
注文率も高い。
リピートも取れる。
チームを支える主力。
本当にありがたい存在です。
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名脇役
目立たない。
しかし利益率は高い。
注文率も安定している。
こういう商品が店を支えています。
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ベンチメンバー
季節商品。
限定商品。
イベント商品。
利益というより変化を作る役割。
飽きを防ぐ。
来店理由を作る。
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原価率は一品で考えない
飲食業界では原価率がよく話題になります。
しかし私は、
原価率を一品単位で見ることにあまり意味を感じていません。
見るべきなのは、
チーム全体の原価率です。
原価率45%の商品があってもいい。
20%の商品があってもいい。
大事なのは全体。
最終的に30%前後へ収束するなら成立する。
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原価率が高い店は正義なのか
ここは誤解されやすい部分です。
原価率が高い。
だから良い店。
とは限らない。
原価率が高ければ利益は減ります。
その分、集客力が必要になります。
逆に原価率が低ければ利益は残りやすい。
その代わり満足度が下がる可能性もある。
結局はバランスです。
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損益分岐点を超えるための設計
本当に重要なのは原価率ではありません。
損益分岐点です。
家賃。
人件費。
光熱費。
固定費。
これらを超えた先に利益があります。
つまり、
原価率だけ見ても意味がない。
どれだけ利益を残せるか。
どれだけ継続できるか。
そこまで含めて考える必要があります。
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メニュー作りは経営そのもの
私はメニュー作りが好きです。
しかし好きなのは料理開発ではありません。
仕組みを作ることです。
食材をどう回すか。
どう利益を残すか。
どう飽きさせないか。
どうリピートを作るか。
どうSNSで広がるか。
全部考える。
そして実際に営業して答え合わせをする。
その繰り返しです。
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最後に
お客様から見れば、メニューは料理の一覧です。
しかし店側から見ると違う。
メニューはチームです。
スタメンがいて、
控えがいて、
育成枠がいて、
引退する選手もいる。
そして毎年少しずつ入れ替わる。
強い店は、毎回奇跡の新商品を生み出しているわけではありません。
過去の経験を積み重ね、
使えるカードを増やし、
状況に応じて最適な布陣を組んでいる。
そんな地味な積み重ねの結果として、
「いつ行っても何か面白い店」
が出来上がるのだと思います。
私にとってメニュー作りとは、料理を作ることではありません。
利益を生み、お客様を楽しませ、店を継続させるためのチーム編成なのです。
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