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ファースト奇襲

 「おい!お前ら何のための野球をやってるんだ!」
ファウスト高校野球部の監督が生徒らに問いかけた。監督が夕暮れの練習終わりに数十名の部員の前で話をしている。「わかりません。」生徒が答えた。「勝つためです。」生徒が答えた。「いいか!お前ら、よく聞け。そんなチンケな気持ちでやってっからお前らのプレーにはコシもハリもねぇ~んだよ!」「ハイ!!!」生徒全員が一斉に返事をした。「いいか!勝つためにやってるぅ!?そんなつまらん魂でお前らは野球をやってたんだな。ははぁ~…野球はなぁ、荒れ果てた荒野に水路をつくり、水を渡す掛け橋なんだよ。それがわかれねぇうちは…」監督の話途中に、慌ててバッテングコーチが、暗くなり始めたグラウンドに駆け込んできた。監督に近づくと、生徒たちには聞こえない声の大きさで話始めた。「…監督。じつはですね、さっき野球協定で急遽決まったらしいんすけど、海外のベースボール事情に依るところが大きいらしいんすけど。時間短縮の観点かららしいんすけど、”ファーストがなくなる”らしいんです。打ったバッターはセカンドまでいかないと、だめらしいんす。しかも、ファーストがなくなっても、セカンドがファーストになるわけじゃないらしいんす。いつまでも、ファーストは俺らの心にあるんですね。」バッティングコーチは感傷に浸りながら、監督に話をした。「うるせぇ!ファーストがなくなる…。それじゃ、白玉を未来へ運ぶのが少しばかり長くなるってこったな。そんなことくらいで野球の真理は変わらん。どんな状況であれ、俺たちは野球を続けなければならん。未来のために。」
監督Aは生徒たちの方へ向き直り、再び、話を始めた。

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